第8話 深まる謎、姉妹と警察官の捜査
俺は今、24歳の女性の霊と融合してしまい。見た目が若い女性になっている。感覚と潜在意識が女性のため、女性として振る舞う事に何も抵抗を感じないし、今の自分の体を見ても何も感じない。羞恥心も無いため、意識していないと35歳のおじさんである事を忘れてしまう。
これは少しヤバい能力かもしれない。霊に意識を乗っ取られる恐れがあるのだ。
「未央、ちょっと。」
「どうしましたか。光さん。」彼女を呼んで、今の状態を話すと、
少し、顔をしかめた彼女は、
「それはあぶない気がします。それに元に戻ってくれないと困ります。」
「私は光さんが好きなんです。」今は未央さんの方が少し背が高い。
(俺も未央さんが好きだ。その気持ちは忘れずにいよう。)
いつでも冷静な彼女は、
「男性の感情を常に持って霊に引っ張られないようになさってください。でないと…、呑まれて貴方はあなたで無くなりますよ。」と言っていた。
その事を聞いた俺は、自分が自分で無くなる。俺は今の美しい女性の姿見に恐怖を覚えた。
調査を再開した俺と紫音は、
上本さんの自宅に向かうことにした。
俺たちが、行った時に警察官の人が上本さんの自宅に来ている所だった。
「どうしよう。お姉ちゃん。」と紫音が言うので、
「事情を話して入れてもらおう。」と俺は、言った。
(ここは憑依女優の未央さんを見習って、)
「あの~。私は上本 恵令奈の妹で上本 玲奈って言います。」と言い、偽造された学生手帳を見せた。
(警察官の方は無線で情報を確認しているようだ。)
「お待たせしました。私はすぐそばの交番で勤務している滝本と言います。ご家族の方が来てくれてちょうど良かったです。」
良かったよ、信じてくれた…。
「部屋を見て異変を感じないか?を教えて欲しいのです。」
そう言われた。
(交番の警察官って事はまだ初動捜査の状態だな。それはそうだ。遺体が見つかっていないのだから、警察の対応は事件性の疑い程度だ。)
「私はずっと東京にいましたから、実はこの部屋にほとんど来たことが無いんです。お姉ちゃんの失踪を聞いて、学校に休みを申請して京都にとんで来ました。」
今はこうして、女子大生みたいに振る舞っている。
「そうなんですね。そっちの女の子は?」と紫音の事を気にする。
(さすがに警察官だな。相手の仕草をみたりして嘘の有無を確認して、少しの異変を感じた時点で質問してくる。)
「この子は京都霊能社という会社の社員、神里 紫音っていう女の子です。京都に来る際に彼女たちの協力を得ることにしました。」
ここは嘘を付かずに話す。
それを聞いた滝本さんは、
「うわさは聞いています。様々の難解な事件を解決している探偵みたいな便利屋組織があると。」
「ご理解いただけてありがとうございます。」と俺は言うと、
「お姉さんは事件に巻き込まれた可能性があると、言うことですか?」と滝本さんが聞いてくるので、
「そうで無いと願いたいから協力をお願いしました。」
滝本さんはしばらく考えたあと、
「分かりました。後程、上司にそう報告します。…では行きましょうか?」
(社長の仕事は京都の中では、有名で警察にも認知されてるんだな。)
三人で上本さんの自宅に入った。
上本さんの部屋はワンルームの一人暮らし部屋だった。
「滝本さん。パソコンを起動しても?いいですか。」
「パスワードは分かるのですか?」と滝本さんは聞いてきた。
「姉はいつもこのパスワードを使用していましたから……。」
(上本さんの霊体と融合している影響で多少の記憶の共有化は行える。あまり力を多用すると心が呑まれそうになるデメリットもあるのだが。)
「開きました。やはり昔からパスワードは変わっていないみたいです。」
スゴいな俺…知らない情報なのに、体が覚えている…。
この言葉を聞いた滝本さんは完全に俺を信用したみたいだ。
パソコンの内容を確認していく。
メールに不審な物が無いか?
デスクトップに表示されている物。
残された手がかりを探していく。
しかし、未央さんが調査していた内容とほぼ変わらず。仲よくしていた男性の気配は感じないし、そこには目新しい情報はなかった。
(今の時代はスマホのアプリでSNSや通話、メールをしているからな……。上本さんのスマートフォンが発見できれば一番いいのだが。)
あとは、
パソコンからSNSを覗く事にした。
FBやインスタなどのSNSにも女性らしいファッションやかわいいアイテム、映えスポットの写真くらいしか載っていなかった。
自分を悲観する内容のツイートも無しか…。
(ますます自殺より他殺の線が濃厚になってきた。あんな場所に呼び出され殺された?それとも誘拐されて?)
悩んでいると……。
「手慣れていますね。」滝本さんが尋ねてきた。
「20代の現役女子大生ですよ。私は。」と言うと。
「失礼しました。」と謝られた。
(これは少しでも隙を見せたら疑われるな。)と思った。
その他、部屋の中を見渡したが、不審な点はなかった。
警察は彼女の遺体が見つかった時点で指紋採取をするだろうから、紫音には手袋を付けさせて髪の毛もなるべく落とさないように指示していた。
俺は、恵令奈本人だから問題ないだろう。妹も京都に居らず、前後にアリバイがあるはずだから、疑われないし問題ない。
調査を終えて滝本さんに、
「不審な点は無いですね。」と伝えた。
「気の迷いの失踪って事でしょうか?」と滝本さんが聞いてきたので。
「分かりません。ただ、」
「ただ?」
「姉からは生活感が感じられなさ過ぎな気がしました。」
「失踪する証拠がなさ過ぎなんです。」
「なるほど……。」鋭い推理に彼は納得していた…。
「この状況では警察は動けませんね。」と滝本さんは言った。
(もし犯人がいたとすれば、それすら計算済みということか?)
「滝本さん。ありがとうございました。」と俺が言うと。
「何か分かれば、警察に連絡をお願いします。」といい滝本さんは去って行った。
「お父さん、お母さんみたいに凄かった」と紫音が言うので、
「今はお父さんではない。お姉さんだ。」と言い返す。
「そうだった。お姉ちゃん。」
(紫音に喋らせなくて良かった。演技出来ないし、バレるからな。)
「何か感じなかったか?紫音。」
「綺麗な部屋だった。」と言った。
(確かに極端なキレイ好きの人間の部屋だった。)
「事件に巻き込まれたのなら、部屋の片付けなんて出来る暇はなかったはずだからな。」
突然の出来事では無いと言うことだ。
「お姉ちゃんはなぜあんな所にいたのかなぁ。」紫音も、う~んと唸る。
(それだな。遺体を遺棄されたと見るのが普通だ。)
「その矛盾点を洗う必要があるけど、今から行くと遅くなるし、帰るか?」
もう、昼過ぎだし、夕方からあの山奥には行きたくは無い。
「紫音。おなか空いた~。」と紫音が言うので、
今日は家に直帰する事にした。
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