第16話 作業は急激に過酷なものとなった。

 一週間して、作業は急激に過酷なものとなった。オオバコのような身体的弱者は一応の措置が取られたが、全くそれ以外の人間には何の配慮もなかった。


 作業が終わると皆ぐったりとしていた。オオバコは作業量は少ないがそれでも本当に辛そうだった。管理人達はそうやって”頑張っている”オオバコを褒めた。本当に残酷な連中だった。


 辛い労働の中で蓼は明らかに自分が間違いを犯したのだということが分かったようだった。蓼の炭だらけの顔から覗く目は淀み引きつった口は薄ら笑いを浮かべていた。


「なんで金がないだけでこんなに苦しまなければならないのかな? 君は医者で目の前で人が死にかけていても君は手を出すことができない。君が大工で目の前に潰れた家々があってもそれを直すことはできない。君が何者でもなくても君は君は隣の家で叫んでる人のために何をすることもできない。その気が起きない。君は自分自身も癒やすこともできない。そして今君は穴ぐらに吸い込まれてひたすら穴を掘って資本家のもつ数字を懸命に増やしている。病人は増え町並みは崩れて隣人が次々と気が狂ってさらに町並みを壊そうとしているのに……金のためだよ。」


「君君言わないでほしいなあ。」


 同じくぐったりとしているノビルが応えた。この数日の間で、蓼の話し相手はノビルに任せられていた。


「当たり前だよ。皆知ってること。なのにどうしてやらないのかな? 嫌になるよ。皆分かってるのにどうして止めないのさ! ああそうだよ、結局私達は家畜で、娯楽のために食いつぶされて、より安く提供されるために豚舎に閉じ込められてコンクリートと糞尿の中で一生を過ごさなきゃならない! でも私達はおんなじ人間なんだよ! 全員で立ち向かえば逃げられるのに餌を貪り続けるばかりでみんな壁に尻を向けてる……おぞましいよ! 顔なんて見えない!どこを見てもケツばかりだ! そんなに餌がほしいか! ああ私も欲しいよバイクが欲しい!でもそんなの一番大事なことじゃない!」


 蓼は全く明らかにノビルの話など聞いていなかった。


「もう私は苦しみ抜いてやる。この現状を絶対に変えてやる。そのためのチャージ期間だ。覚えてろよ資本の奴隷共! 絶対に私は美しい人々を見つけてやる!」


 蓼は突然現れた数十人の管理者達から問答無用でどこかに連れ去られてしまった。

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