第10話 子供が泣いていた。
子供が泣いていた。
「動物がどこにもいないんだ……なぜみんな動物を追いかけるの?」
子供はノビルに話しかけていた。話しかけると言うよりも、それはぶちまけるという方が正しかった。ノビルにはよくこういう場面に出くわすことがあった。
「最近死んだばかりの、私の長生きな家族が言ってたよ。昔は木が話しかけてくれたって。でも今では沈黙するばかりで、こちらを見てもくれないんだって。人間だってそうだ。目を合わせようとしても、誰もこっちを向いてくれない」
子供はノビルの目をじっと見て喋っていた。
目を逸らすことすらできなかったノビルは、ゆっくりと目を閉じた。そして耳を塞いで、しゃがみこんだ。子供は羽虫のことについて喋っているようだった。
子供はいなくなっていた。
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