第41話


 アルテミス女学園周辺の『街林がいりん』、『ペガサス』たちが戦う地点から大きく離れた後方に建てた通信拠点において、夜稀は三年先輩である『喜渡きわたり愛奈えな』からの連絡を受けていた。


 『Gアタッチメント』を使用すると言って、通信が途絶えてから数分後。再度、掛かってきた事で、とりあえず無事であることに安堵したが、愛奈から受ける結果は朗報と呼べるものではなかった。


 こちらが申し訳なくなるぐらい悲痛な声で何度も謝られながら語られたのは、翼竜のギアルスは打ち落とす事に成功したものの、倒すまでには至らなかったらしく時間が経てば、翼を再生して再び空へと飛んでしまうと言ったものだった。


 高度5000メートル上空を飛行する翼竜のギアルスを地上に降ろしただけでも、充分に称賛される成果である。たとえ少しの時間であれど爆撃による場荒らしを封じた事で、『ペガサス』たちの負担も危険も減った。


「──ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク!」


 だが、本音を言えば倒せなかったのは、かなり痛手であると、ストレスの度合いによって喉が渇く病を患った夜稀は2リットルペットボトルに、長いストローを差して、ひたすら中身を飲み干していく。


 できれば、再び空を飛ぶ前に翼竜のギアルスを討伐しておきたいが、どう戦力を回していいのか、夜稀には皆目見当が付かなかった。特に現状、高等部二年ペガサス勢が切羽詰まっているから余計にである。


 翼竜のギアルスの爆撃を受けた真嘉まかたち高等部二年ペガサスたちは全員が無事であった。『篠木ささき咲也さや』の〈魔眼〉である、〈蝸刹・伍らせつ〉は遙か空の上を飛んでいた翼竜のギアルスでも効果が適用された。


 それによって五秒前の感覚を追体験する事となった翼竜のギアルスは、〈蝸刹らせつ〉の効果が切れたさいに、投下地点を大きく通り過ぎて爆弾を切り離した。これによって予定されていた爆撃ポイントがズレたことが九死に一生を得る理由となった。


 しかし、状況は好転したわけではない。音もなく地中を移動して、エネルギーが溜まれば首だけを地上にだして、粒子光線を放射してくる首長竜のギアルスの存在。そしてついさっき大規模侵攻で移動してきた『プレデター』の群れが到達してしまい、『プレデター』と『ギアルス』を相手取る乱戦となってしまった。


≪──真嘉がヘビ型を倒しました、香火は順調に群れの数を減らしています、咲也が首長竜の浮上を確認……香火の周辺、咲也を標的に粒子光線を放射──完全回避、また相手の攻撃を利用して、数体の『プレデター』を消失させました、やっぱり『ギアルス』と『プレデター』は連携が出来ていないようです。真嘉がカメ型プレデターと対峙しました──≫


 高等部二年『雁水かりみずレミ』が使用する銃型専用ALIS【Achillea 0,7】では、撃つのに充電が必要で、隙だらけとなる、また本人がそこまで戦闘が得意ではない事も相まって、首長竜の標的になったら、あまりにも危険だからと通信手となってリアルタイムで起きた事を夜稀、そして、シートの上で絵を描き続けている高等部一年『縷々川るるかわ茉日瑠まひる』に知らせていた。


 群れは二日目となって、数こそ少なくなったが大型種や新たな中型種などが混じっている。それらを相手取る中で、首長竜のギアルスが浮上、粒子光線を放射してきて、高等部二年ペガサスのペースを乱しに来る。


 


 真嘉たちが欠ける事無く戦えているのは、彼女たちの純粋な実力があっての事だった。真嘉は〈魔眼〉を多用して、大型種や危険度が高い『プレデター』を優先して倒し、『篠木ささき咲也さや』は視野の広さを生かして、周りに指示を出しながら、首長竜の浮上を察知する。『穂紫ほむら香火かび』はひたすらに『プレデター』を葬っていく。


≪咲也が首長竜の首に攻撃しますが、やっぱり透過、無傷です≫


 できれば、首長竜のギアルスを真っ先に倒したいが、厄介な事に地上に出てきた“首”に攻撃を加えても全てすり抜けてしまう。そのため、倒すことができず好き勝手を許してしまっていた。


 夜稀は、首長竜のギアルスの〈固有性質スペシャル〉だと思われる力の突破口を見つけようと必死に頭を回転させる。


 〈固有性質スペシャル〉というのは、種類によっては無敵と思える能力を有しているものがある。しかし〈魔眼〉を使用するには“対象を目視しなければならない”などの条件、または活性化率が上昇などのデメリットがあるように、何かしらの“仕様”という名の“弱点”が必ず存在するというのが、夜稀の考えであった。


 ──物体を透過して地中を潜っているのは確かなのだろう。音や振動が発生していないのがその証拠になる。であるならば攻撃がすり抜けるのも同じ〈固有性質スペシャル〉であると考えるのが道理であり、地上に伸びる八メートル級の“首”も立体映像の類いではなく実体であると思われる。『Gアタッチメント』をテストして分かった事がある、粒子光線となる生成される粒子状の高エネルギーは専用の機構がなければ撃つ事すらままならないものだ。物体を消失させる光る粒子を生成ができたとしても、それを維持および兵器転換をするためには、それ相応の巨大な装置が必要となる事を意味する。なので『ギアルス』は、強力な砲弾を撃ち出すのに長太い砲塔を使い、そしてその砲塔を運用するために戦車や戦艦が行なう様な本体を巨大化させた姿である可能性は低くないというのが自分の考えだった。であるならば地中に存在すると思われる胴体が必要なエネルギーを生成と蓄積をするための部位だとして、地中に出てくる“首”は粒子光線を長時間放射するためのものだ。これから考えるに、もしもこれが映像であって、ちんけな細長い骨みたいなものであるならば、あれほどの量を放出できるものになり得るかという疑問が生まれる。そもそも先輩たちの話によればどの方向から攻撃してもすり抜けたとの事だ。映像であるならば攻撃を透過させる理由は無いし、攻撃が当たらないほど細長いワイヤーのような頭であるというのは粒子光線の放射量からして無いだろう。これらの推論を元に逆算的に答えを導くならば、目に見えている“首”は実体であるし、地中を潜る能力と攻撃のすり抜けは同じ〈固有性質スペシャル〉であるため、何かしらの方法で〈固有性質スペシャル〉の効果を突破すれば首長竜のギアルスにダメージを与える事ができる、ここまではいい、じゃあどうやって攻撃を当てることが出来るのか、倒せるのかが全くもって思い浮かばない。


 夜稀は、持ち前の技術者としての知識を元に、首長竜のギアルスの“首”が幻ではなく、完全な実体であり、〈固有性質スペシャル〉によって物体が通過しているものだと“正解”までは行けたが、解決策の発案までにはどうしても至ることができないでいた。


 ──情報が、情報が足りなさすぎる。


 夜稀は技術者であるが、決して賢人と呼ばれるような人間ではない。自分が得ている知識を超える事象には、とことん無力となる。完成図も無ければ、八割以上のピースが見えないジグゾーパズルを完成させる能力が彼女には無かった。


 ──こんな事になるなら、やっぱり映像関連の機器を無理にでも作っておくべきだった。


 簡単に言ってしまえば生音声とは違って生の映像を、遠くで見られるようにするには、それ相応の機材と設備が必要であった。しかし、どうしてもスケジュールや人手、その他の事情から用意できなかったのを、夜稀は今になって酷く後悔する。


 ──あの日と一緒だ。どうしてこんなに被るの?


 夜稀はあの日を思い出す。中等部の最後の冬。もう少しで進学という時に現われたダチョウ型の独立種によって茉日瑠と自分以外のグループ内の『ペガサス』全員が“卒業”してしまった、縷々川グループ最後にして最悪の戦い。夜稀は現場の映像が後方でも見られたのならば、何かが変わっていたかもしれない戦いであったと、ずっと思っていた。


 ──あの時も、今のように後方にいて、そして何もできずに終わってしまった。分かっている。自分の役割は準備をする事で、アスクヒドラと同じく、真似すらも簡単ではない技術者としての自分は『ペガサス』の中ではもっとも失っては成らない存在だって自覚もある。だから、連絡役として『街林』に居る事だって、周りからとても反対されたぐらいだ。


 ──それに、自分には戦う才能がとことんない。確かに人間の同年代の少女と比べて身体能力はあるが、『ペガサス』と比べてしまえば遙かに貧弱で、センスが無いに等しい。でも、もう仲間が失うのを、ただ黙って見守るだけなんてしたくない。したくないのに、何も出来ない。



 ──どうしよう、どうしよう、どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう──!!



 このままだと、冬の悲劇の再来となるという焦りが思考をループバグに陥らせる。自分が考えているようで何も考えていない状態である自覚症状こそ持っているが、ヘッドカムから耳に届く、切羽詰まった事態が夜稀の心を一層に囃し立て抜け出せない。


「ズズ、ズ──ゴホ──ゴホ、ゴホゴホゴホ!」


 飲み干しきったのに、しばらく気付かずに空気を吸い込み音を鳴らした夜稀は、喉の渇きによって咳き込み始める。苦しんでいる暇はないと、すぐに代わりの飲み物を手に取ろうとしたが、周囲に置いてあったのは既に全部飲み干してしまっていたことにようやく気づく。


「ゴホゲホ! ──ゴホゴ──」

「──どれくらい速いの?」

「ゴホ……え?」


 ──最初、息が出来なくなってきて苦しくなる中で聞こえた幻聴だと思った。最近だと毎日聞いていた声、でも、もう二度と聞こえる筈が無い“声”なのだから、でも気の所為と思うには、あまりにもハッキリと聞こえた。


「恐竜さんは、どれくらい速いの?」


 ──声色も話し方のトーンも“現在いま”のままだ。だから多分、元に戻ったわけではない。ならこれは時折見せるリーダーであったときの残留思念のようなもの。でも今日はなんだか違くて、何故だか振り向いたら消えてしまいそうで、乾きすぎた喉では喋れないと、質問をキーボードで打ち込み、高等部二年先輩たちに人工音声で伝える。


≪おう、真嘉だ! 恐竜って首長竜のギアルスについてだよな!? 正確には分からないけど、他の『プレデター』と比べると、どこかトロい気がするぜ!≫


「……あ」


 真嘉の主観による答えは、首長竜のギアルスは他と比べて全体的に動きが遅いと言ったものだった。音声だけでは分からない、尋ねてようやく分かる情報を聞いた夜稀は閃めくものがあった。


 ──そうか、そもそも物質をすり抜けられるなら、巨体だったとしても物質や空気の抵抗なんてあるはずが無い。なら首長竜のギアルスにとって地中は水の中ではなく、加速すれば幾らでも速度が乗る宇宙空間のような世界であるはずだ。だから首長竜のギアルスの動きが遅い理由は“仕様”だと考えられる。


「──物質を透過できる処理限界量があって、それ以上速く動けないんだ」


 潤していないのに、乾きが無くなった喉は声として夜稀の思考を外に出す。


「でも、なんで先輩たちの攻撃は当たらないの?」

「地中と地上での処理量の違いだよ」

「浮上する際に出るらしい黒い染みは?」

「効果範囲に入った箇所の物質が光の屈折率変化によって色が変わってるだけ」


 夜稀の漠然とした質問に、直ぐに何が聞きたいかを把握して“彼女”は答える。どんなロジックで行き着いた答えかは分からないが、夜稀は間違っていると疑うこと無く、“彼女”が語ってくれた内容を、そのまま真嘉たちへと送る。


≪──なるほど! そういうことか、ありがとな夜稀! やっぱりお前はすげぇよ!≫


 違うと、あたしじゃないと否定したかった、でもそんなのは後だ。


「あのね。伝えて欲しいの──」


 なにせ“彼女”の──茉日瑠の声はまだ聞こえているのだから、夜稀は決して後ろを振り返ることなく、茉日瑠が口にする言葉を正確に打ち込んでいく。


「……愛奈先輩?」

≪夜稀……翼竜のギアルスはこっちに任せて≫


 すると、愛奈先輩から三度目の連絡が来た。まさかまた何かあったのかと不安に思いながら出ると、その声は涙交じりで、でも、どこか喜色に染まっているように思えた。


≪──アスクの友達が来てくれるの≫


 +++


 夜稀に“二度目”の連絡を終えた愛奈は、自分が仕留め損った翼竜のギアルスをどうするかを必死に考えていた。しかし【ルピナス】を失い、全身の至るところに力が入らない今、頭の中では、もう自分にできる事はないと分かっていながらも、なんとかしなければという気持ちで動こうとする。動かなければアスクが動いてしまうから。


 ──光の矢が外れた原因が、アスクである事は分かっていた。矢を放つ瞬間、【ルピナス】に罅が入った事に驚いて支える力が緩んだのを感じていた。でも運が悪かっただけだ。それに原因であって、理由じゃない。もしも責任があるというなら、それを負うべきは射手である私だけだ。


「アスク……」


 ──だけど、優しくて責任感が強く、私たちを大切にしてくれるアスクが、自分の所為だと思っているようで、責任を感じて翼竜のギアルスを倒しに行こうと考えていたのを、直ぐに読み取れた。だから咄嗟にアスクが動かないように自分の命を以て脅迫した。それでも時間が経てば彼は走り出してしまうだろう。


「……え?」


 どうすればいいの。そんな風に悩みながらアスクの顔を見ると、先程とは真逆に明るい雰囲気を感じられた。理由がわからず戸惑っている愛奈に、アスクは手の平を見せる。何かを伝えようとしているのはわかったが、あまりにも脈絡がないため答えに行き着かず、思考を回転させながら手の平を見ている最中、アスクは親指を閉じた。


「……時間?」


 ──躊躇いがちに答えを口にすると、正解だとアスクは頷いた。


「……何かがあるの?」


 アスクは頷く。


「……私たちじゃない何かが、誰かが来てくれるの?」


 アスクは頷く。


「その人は……ううん、『プレデター』はアスクの友達?」


 アスクは気持ち深く頷いた。


「──任せていいの?」


 いちばん深々と頷いたアスクは人差し指を閉じた。愛奈は、すぐに“三度目”の報告をするために夜稀に繋げた。


 +++


 ──ずっと前から準備はすでに終わっていた。しかし彼は悩んだ。どんな進化をすれば、いちばん役に立てるだろうか。


 相談しようにも卵の状態では書き込むこともできず。動いても上手く意思を伝えられず。やきもきしながらみんなの会話を聞いて考えていたが、ちっともコレだというものが思いつかなかった。


 そして今、アスクヒドラとアルテミス女学園ペガサスの危機に、識別番号03は決断する。


 すると、自我とは別の『P細胞』によって生み出された『ギアルス』としてのシステムによる質問応答が行われる。


 あなたは親機として子機の管理権限を保有していますがどうしますか──


 ──要りません。あれは友達を怖がらせるものです、子機に関するシステムを全て捨ててその分のリソースを他に割り当ててください。


 この瞬間を以て、富士周辺に散開していた、いまだ万を超える識別番号03の同型機は一斉に生命活動を停止し、跡形もなく液体となって大地の一部となった。


 どういったものに成りたいですか──


 人型に、空を飛べる相手と戦えるように、また遠くの仲間を助けられるほど速くありたいです。


 富士山周辺の森林地帯に移動してもらった、卵となった識別番号03の殻に、突如として罅が入った。様子を見守っていた『ペガサス』二名と『プレデター』が、思わず目を合わせる。


 他に要望はありますか──


 ──仲間が、大切なものが、どこに居るのか分かるものが欲しいです。リソースを大きく割いても構いません。


 卵の両側面から、長い金属板のようなものが出てきて、近くで卵を凝視していた『ペガサス』二名が驚きのあまり尻餅を搗く。


 この要望は当機に適しているものではありませんが構いませんか──


 ──構いません。なるべく早くしてください。


 分かりました。これより記録を参考に要望に沿った進化を行います──。


「キーちゃん、これなんよー?」

「分かんない……なんか、戦闘機の翼に似てるっぽいけど……? って、あー! なに触ろうとしてるの!?」


 質問が全て終わり、識別番号03が急速に象られていく。


 卵から突き出た金属板──ウィングが大きくなって、形が変わると光を発し始めた。とても綺麗な光景に、見て明らかに幼い子供だと分かる『ペガサス』が触れようとしたのを、もう片方が慌てて制止する。


「え、わっ、わ!? 浮いた!? こわいんだけど!?」

「えー、すごーい!」


 罅が増えていく中で卵が地を離れて浮き出すと、目にも止まらぬ速さで遥か上空へと飛び立ち、そのまま東北方向へと飛び立ってしまう。細かくなった卵の殻が落ちていくなか、『ペガサス』二名、そして事の成り行きを少し後ろで見守っていた『プレデター』、識別番号04は、しばらくの間大きな口を開けて、空を見上げていた。


 +++


 愛奈が放った光の矢によって、片方の翼が消失し、不時着した翼竜のギアルスは地上に降りて修復に専念していた。出血は既に止まっているが、なにぶん肉体を消失したことで、再生に必要な『P細胞』が不足していた。


 じっとしている翼竜のギアルスの傍に、近くに潜んでいた『プレデター』が集まりだして、それらを翼竜のギアルスは捕食。そうすることで必要な素材成分ごと『P細胞』を補い、修復速度を上げた。


 ──キュアアアアアアアアアアアアアアアアア────!!


 片翼が完全に元に戻った翼竜のギアルスは、左右対称となった両翼を広げて、浮上発進を知らせる鳴き声を周囲に轟かせる。結局、愛奈が戦闘不能になる代わりに稼げた時間は、僅か5分ほどになった。


 しかし、されど5分は、“彼”にとって、過分なほど長い時間であった。ジェット推進機構を点火して飛び立とうとする翼竜のギアルスに、大気圏から急速に接近する飛行物体が迫る。


 ──それは、戦闘機にとても酷似していたが、まったく違うものであった。全長は戦闘機の平均全長と比べると半分ほどしかなく、真上から見たウィングの形状は“W”を象っている。人間が乗れるコックピットに当たる部分が存在せず、突き出ている頭は鳥の嘴のように鋭く尖って開閉を繰り返していた。


 戦闘機モドキと言えるものは、音速で飛行する最中、飛び立とうとしている翼竜のギアルスを“目視”すると急降下接近、嘴口内から小粒の光弾を乱射する。翼竜のギアルスに満遍なく光弾が当たるが、表面を焦がすだけに留まり、効果無しと判断した戦闘機モドキは再び上昇する。


――――――――――


16989:識別番号03

翼竜のギアルスに対して射撃兵装による攻撃を行ないましたが、明らかに効いていませんでした。


16990:アスクヒドラ

まって、いや、待たなくていいけど、さっき通り過ぎた戦闘機っぽいのって、もしかしてゼロサン!?


16991:識別番号03

はい、そうです。

こちらでもアスクと思わしき人型プレデターと、エナちゃんと思わしき『ペガサス』を視認しました。

はじめまして、ようやく会えました。


16992:アスクヒドラ

あ、どーも、初めまして、アスクヒドラです……。

でも、そっかー、やっぱりそうなんだー、理解追いつかねー。


16993:識別番号02

説明→識別番号03は進化に成功して救援に駆けつけてくれた。


16994:アスクヒドラ

それは分かるけど、卵から孵って戦闘機になって助けに来てくれたっていう字面が凄いんよ。


16995:識別番号03

字面がヤバイですか?


16996:アスクヒドラ

いいえ、凄いんです……俺たちのために、そんな風に進化してくれたんだよね。


16997:識別番号03

はい。空を飛べる相手に戦えるように、すぐに助けに行けるようにと願ったら、この姿になりました。


16998:アスクヒドラ

おおう、素直さの光度が高いぜ。ごめん、じゃないや。本当にありがとう、エナちゃんも、来てくれてありがとうだって。

……任せていいか? ゼロサン。


16999:識別番号03

任せてください。

ですが、ちょっとピンチです。


17000:アスクヒドラ

やっぱりそうだよね!? なんかすごい追われてるし、お空が爆発してるけど、どうなってんの!?


17001:識別番号03

翼から切り離された、時間が経つと爆発する羽に追われています。


17002:識別番号02

質問→識別番号03と羽との機動差はどうなってる?

 

17003:識別番号03

自身のほうが上です。しかし、反撃するほどの余裕はありません。

有効と思える攻撃を行うとなれば追いつかれてしまいます。

ですが、このままでは倒せません。とりあえずやってみたいと思います。


17004:識別番号02

制止→まてまてまてまてまてまてまてまてまて。


17005:識別番号04

止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ。


17006:アスクヒドラ

タイムタイムタイムタイムタイムタイムタイム! なんでそう自分から危ないことしようとしてんの!?

あの、ゼロサンさん? その、富士山のアレの時でも思ったけど、君ちょっと行動力溢れまくってるよね?


17007:識別番号02

断言→識別番号03はその場の勢いで動きすぎる癖を改めたほうがいい。


17008:識別番号03

考えるのは得意じゃないので、それなら動いたほうがいいかと。


17009:アスクヒドラ

脳筋かな?


17010:識別番号04

行動に移行する前に、もう少し熟考しろ。

何故、自分を置いていった? 即座に飛び立ってしまったからムツミとキーが巣立ってもう帰ってこないのかと不安がっている。


17011:識別番号03

すいません。少しでも早く到着したかったので。

必ず帰りますのでムツミちゃんとキーちゃんをよろしくお願いします。


17012:識別番号02

適切→識別番号04を運んでの移動と成れば重量や配慮によって到着時間が遅くなったと思われる。


17013:アスクヒドラ

あー、抗議は俺のほうでよろしく!


17014:識別番号04

──質問してくる両名の対応が困難であるため、なるべく早い帰還を望む。

どちらにしろムツミとキーを、ここに放置した場合問題が生じた可能性があったため適切であったと判断する。


17015:識別番号03

ありがとうございます。

翼竜のギアルス、飛びます。


17016:アスクヒドラ

こっちも見えた!


17017:識別番号02

質問→これから自身との応答をしながらの戦闘行為は可能か。


17018:識別番号03

やってみます。


――――――――――



 ギアルスの翼に張られている皮膜のようなものは、“孔雀の飾り羽に似た金属物”が平ら状に重ねられ結合されているものであった。下から本体を離れては押し出し式で新しいものが生えてくるを繰り返しており、切り離された金属物は上空を飛行中の識別番号03へと向かう。


 亜音速で自立して飛ぶ、羽のような金属物は触れた場合、あるいは一定時間が経過した場合爆発する、いわば爆弾羽と呼べるものであった。誘爆を意識してか、間隔を広く開け、あらゆる方向から識別番号03へと飛来する。


 音速の領域にて飛行する識別番号03は、超機動にて爆弾羽を回避する。異常な加速と減速を繰り返した直角的な動きは、もしも戦闘機が同じ事をできたとしても、中の人間がもたないであろう。


 識別番号03は自身が望んで実装した高性能の索敵能力を頼りに、爆弾羽の位置を把握して迫り来る、あるいは一定時間で爆発するのを躱していく、そうしているうちに翼竜のギアルスが、同じ高度5000メートル上空の世界へと戻ってくる。


 巨体に見合うだけの推進装置を搭載している翼竜のギアルスであるが、その巨体さ故に空気抵抗などの理由から、本体が識別番号03に追いつくのは不可能なほどの速度の差がある。元より本体は爆撃機ゆえか識別番号03を追おうとはせずに、つかず離れず対空兵装である爆弾羽による攻撃を行ない続ける。


 そんな翼竜のギアルスに対して、識別番号03は待っていたと言わんばかりに“高度を下げ”はじめる。翼竜のギアルスは、そんな識別番号03を追おうとはせず、高度を維持しつづけ、一定の高低差まで離れると爆弾羽による攻撃を止めた。


 回避の中で、爆弾羽の切り離しを止める場面が何度もあった事に識別番号03は気付いていた。その事を識別番号03は頼れる仲間に相談したところ、地上への攻撃に使用しないこと、数秒で爆発する事から、射程距離は短いのではないかと考察。


 また翼竜のギアルスが爆撃機であるというならば、上昇する事はあっても、識別番号03を降下してまで追う可能性は低いとのことで、翼竜のギアルスが高度5000メートルに戻ってきたさいには、逆に高度を下げて、距離を離して爆弾羽の使用を停止させるという作戦が立案された。


――――――――――


17078:識別番号03

すべて言った通りになりました。流石です。


17079:識別番号02

成功→よし。


17080:アスクヒドラ

俺の時とか、ゼロヨンVS独立種の時とか、毎度の事ながら凄いとしか言いようがないんだけど、ゼロツーってほんと見えてないの?

俺、ずっと見てたけど何にも思いつきませんでしたよ?


17081:識別番号02

応答→形状の詳細は分からないが海中の中での経験と得た知識のすりあわせでこの世の原理というものがある程度把握できればそれ相応の提案は可能。

自慢→伊達に一億八千万年なにもない所で思考をしていない。


17082:識別番号04

個人の性能における違いはあると思われる。なので専門ではないだけだ。


17083:アスクヒドラ

ゼロヨンは多分、戦闘とかそっち系担当だから……それにしても羨ましい話だけどね。


17084:識別番号02

指摘→自身を○○系と表するようにアスクにも相応の役割がある事を忘れるな。

質問→識別番号03の持つ攻撃手段がどのようなものかは不明であるが、その距離からでも攻撃は可能か?


17085:識別番号03

はい、突っ込みます。


17086:識別番号02

驚愕→待て止まれおい。


17087:アスクヒドラ

脳筋だなぁ!


17088:識別番号04

結局こうなるか。


――――――――――


 五階建てのビルとほぼ同等の高さまで降りてきた時、識別番号03は進化したさいに手に入れた機能を発動させる。


 現状、戦闘機あるいは『ギアルス』と同じく翼竜に似た姿である識別番号03であるが、彼が望んだのは“人型”である。


 システムに注文した内容は、おおよそ識別番号03の兵器として元から与えられた性能から逸脱したものであった。そのため要望に応えるためには、攻撃に関するものなど他のリソースを削らなければならないだけではなく、その全てを人の形で行なうのは無理だと判断された。


 ゆえにシステムは、識別番号03の記録記憶の中から、ある機能を搭載した。それは偶然に目に入った人間が空を飛び戦うための“物”。そして何気ない仲間との語り合いで出た“情報”。


 ──識別番号03の戦闘機としての体が形を変えていく、先端の嘴のようなレーダー部位は背中に向けて折りたたまれて、中から顔が出てくる。本体となる部分が複雑な構造で折り曲げられ、回転し、また別の形で組み立て直され、手足や胴体などに変貌していく。


 地へと向いた足裏の推進口からのジェット噴射によって、急減速を行ないながら識別番号03は地面へと着地する。慣れてないからか、ここまでの動きはどこか危なかしかった。


 ──戦闘機形態から、識別番号03はアスクと比べて、一回りほどガタイのいい全長六~七メートルほどの人型形態となって地上へと降り立った。人間で言う肩甲骨辺りへと移動したウイングを開閉して具合を確認、顔に刻まれた“Ⅲ”に見えるアイラインを点滅させる。


 識別番号03のシステムが解決策として取り入れたのが、戦闘機と人型の両方の姿に自在に変えられる変形機構であった。初の人型となった識別番号03であったが、元より自身の体の使い方を熟知しており、特に詰まることなく、準備を始める。


 広げた両翼の装甲を展開、表に出た結晶部位が青白く光りだし、キュルキュルキュルとモーターが回転するような音が鳴り出す。すると腕の甲から青白く光る粒子が外へと漏れ出して凝固化、長細い結晶の手“光”剣てっこうけんとなる。


 足の裏からブレーキフックを地面へと突き刺し体を固定すると、背部のハッチを開き、小型ジェット推進装置の排気口を表に出して点火、最小限の噴流が生み出され周囲の砂埃を吹き飛ばしながら、識別番号03は遙か上空を見て、翼竜のギアルスの現在位置をしっかりと目視。己の意思を敵に向かって発する。


 ──あなたのような存在のせいで、アスクと、アスクの大事な『ペガサス』が居なくなるような事は──


 なにもかも初めて尽くしであるが、とりあえず試してみようの精神である識別番号03は、特に躊躇うこともなく、考えていた攻撃方法を実行する。


 ──あってはならない。


 識別番号03は深く腰を落として、勢いよく上げる瞬間、翼を広げきって小型ジェットをフルスロットルにし跳躍、その勢いにてブレーキフックが地面から引き抜かれて、空へと飛び立った。


 超加速によって発生した衝撃波は地上のあらゆる物を吹き飛ばし、廃ビルの保っていた窓ガラスを割るが、すでに其処には“誰も居ない”。マッハ2.5以上にて翼竜のギアルスに急接近、射程範囲に入り込んだ飛行物体を感知した翼竜のギアルスは爆弾羽の切り離しを再開して識別番号03へと向かわせる。


 翼竜のギアルスが、ここまでの挙動に掛かった時間はたった六秒。だが超音速の世界にて六秒という時間は、あまりにも悠長で遅すぎる。


 爆弾羽が加速して襲い掛かってくるよりも前に、識別番号03は翼竜のギアルスの長い首の傍を通り過ぎた。そのさいに両腕を下斜め気味に伸ばしており、飛行中に限界まで延長した結晶の手光剣に、翼竜のギアルスの首と手翼を通過させていた。


 ──時間差で、結晶の手光剣を通した部位が切り開かれて、オイルのような血液と煙が吹き出した。


 結晶の手光剣に触れた箇所に数千度の熱を発生させる粒子が付着、元より熱によって生まれた切り傷はさらに溶けていき、再生を阻害するように傷を塞いでいく。できれば首か片翼どちらも両断してしまいたかったが、初めてという事もあって、刀身の延長できる限界と位置を見誤った。


 切られた翼はまだ繋がっている翼竜のギアルスであるが、ダメージは大きく、飛行能力が落ちたのだろう、翼竜のギアルスはゆっくりと高度を落としていく。できれば追撃を掛けたかったが、爆弾羽が迫ってきており、仕方なしに識別番号03は手光剣を分解消失させると腕の装甲を開いて銃口を出し、光弾を乱射、爆弾羽を打ち落としていく。


――――――――――


17104:識別番号03

すいません。倒しきれませんでした。

それと爆弾羽を打ち落とすのに忙しく、翼竜のギアルスに近づけません。


17105:アスクヒドラ

気にすんな! 想定通りって言ったらあれだけど落ちてくれるだけでいい!

あと、もうなんか色々と言いたい事あるけど、そういうのも全部後だな!


17106:識別番号02

質問→人型形態で爆弾羽に対応しきれるか。


17107:識別番号03

はい。戦闘機形態と比べて飛行能力は落ちていますが、人型であれば迎撃できます。人の腕ってとても便利なんですね、凄いです。


17108:アスクヒドラ

それな~。

17109:識別番号02

質問→人型にしか分からない会話はともかくアスク側はどうなっている。


17110:アスクヒドラ

こっちは準備完了済み、といっても俺の出番は運んで終了しています。

連絡来た時はびっくりしたけど、こうもドンピシャってヤバイね。


17111:識別番号02

予想→『ペガサス』のマヒルにとっても保険のつもりだったと思われる。


17112:アスクヒドラ

たまにヨキちゃんやノハナちゃんから話は聞いてたけど、やっぱり凄かったんだろうね。みんなの事も誰よりも直ぐに気付いていたし、最近チェスの相手ゼロツーばっか指名してくるし…… 


17113:識別番号02

応答→アスクが弱いから仕方がない。

 

17114:アスクヒドラ

パパ泣いちゃう。

……大丈夫かな。


17115:識別番号04

全てが終了するまで油断をするな。


17116:アスクヒドラ

うん、もう何度目か分からないけど、本当に情けなくてごめん。

うしっ、ゼロサン! こっちは準備完了だ!


17117:識別番号03

分かりました。


――――――――――



 翼が上手く再生できない翼竜のギアルスの高度が1000メートルを切ると、優先するものは自分より頭上に居る相手なのか、延々と識別番号03に向かって爆弾羽を飛ばし続けていた、そのため翼竜のギアルスは最後まで、自分に向けられていた銃口に気がつかなかった。


「──いつでもいいよ」

「ちゃ、ちゃんと当たりますように、外れませんように、あと倒せますように、──行きます! はい! 【手向けの花アキレア】!」


 バコンっと轟音、胴体に穴が空き、甲高い悲鳴音と共に翼竜のギアルスは、ついに完全に墜落する。そして周りに響く発砲の残響音。その光景を見ながら引き金を引いた『ペガサス』──レミは目を見開いて驚いた。


「──あ、当たりました? 嘘ぉ? す、凄すぎる……自動標準装置オートエイムの範囲外だったのに……愛奈先輩すごいです!」

「レミのおかげだよ」


 ──識別番号03が戦闘中、ただアスクと愛奈は見守っていたわけではなかった。茉日瑠からと言って送られてきた人工音声による指示に沿って動いており、先んじてこちらに向かっていた高等部二年ペガサスのレミと合流し、アスクの脚力によって指定の位置へと移動していた。


 そして、レミ、それと愛奈の『ペガサス』両名は、指示のあったビルの屋上にてレミの銃型専用ALIS【Achillea 0,7】による狙撃を行なった。


 レミの狙撃能力、というかそもそも戦闘能力は全般的に低い。なので狙撃に関しては何時も【Achillea 0,7】のアシスト頼りであるため、アシスト機能が働かないほど遠い距離となると彼女の腕では決して当たらないのは本人が認めるものであった。しかし、愛奈も“血清”の過剰摂取によって本調子ではないため、単身だと【Achillea 0,7】のアシスト機能が正常に働かなかったために、レミと共に構えて〈隙瞳げきどう〉による補助と調整を行ないながらでの狙撃となった。


「落ちてる……終わりだね」


 そんな二名一射による狙撃の結果は、墜落する翼竜のギアルスを見れば一目瞭然であろう。愛奈は本調子ではなく、〈隙瞳げきどう〉も不調、レミを主体として稼働しているアシスト機能有りきでも、僅かなズレで振るわれる鞭のようにしなる【Achillea 0,7】の弾道の情報を元に微調整を施しきった。


 ──アルテミスの化身って言われるだけあると、レミは内心でコッソリと愛奈の事を拝み倒す。


「アスク!」

「きゃっ!?」


 アスクは愛奈とレミ、そして【Achillea 0,7】を腕と蛇筒で掴み、ビルの屋上から飛び降りると、翼竜のギアルスから全速力で離れる。


「わっ!!?」


 ──この大規模侵攻において初めて『ペガサス』を“卒業”させた翼竜のギアルスは最期、地面に叩き付けられた己の尻尾の先端にあった爆弾の起爆によって、その周辺ごと木っ端微塵になった。


「う、おお……」

「レミ、平気?」

「は、はい平気です。いや、立ちくらみとか耳がキーンとなってるのであえて言えばダメージは負っていますが、全然無事です。爆風はアスクが守ってくれました。ありがとうございます」


 下ろしてもらった愛奈たちは煙があがる爆心地を見て、凄惨な光景に顔を歪めていると、識別番号03が愛奈たちに向かって降りてきた。


「こ、この方が……この方? えっとプレデターの御方が、アスクと同じ……?」

「うん。友達みたい」


 レミが識別番号03のことを測りかねてると、愛奈がハッキリと味方であると断言する。識別番号03とアスク、掲示板のような機能にて会話は重ねてきたが、初対面を果たした二体の人型プレデターは、ゆっくりと近づいていき。腕を交差させた力強い握手をした。


――――――――――


17130:アスクヒドラ

ゼロサン……! 本当に来てくれてありがとうな!

ほんとに、本当に会えて嬉しい、来てくれて嬉しかった!

てかでかいし、格好良いな!!


17131:識別番号03

会えてうれしいです。アスク!


17132:識別番号02

賛美→識別番号03を称える。


17133:識別番号04

同意する。よくやった識別番号03。


17134:識別番号03

ですが、アスクや『ペガサス』に負担を掛けたくなかったので、できれば自身だけで倒したかったです。


17135:アスクヒドラ

優しいし意識が高い。

ありがたいけど、無茶はしないでくれよ。


17136:識別番号02

注意→まだ状況は終わっていない。


17137:アスクヒドラ

ごめん。大規模侵攻はまだ続いているし、兜の緒を締めないとな。

ゼロサンはこれからどうする。 


17138:識別番号03

このまま、アスクたちを手伝いたいです。


17139:識別番号02

推奨→情報から察するに識別番号03はかなり目立つと思われるためアルテミス女学園ペガサスの指示があるまで待機するべき。


17140:アスクヒドラ

だな、まだ場所が第一防衛ライン寄りだったからよかったけど、飛ぶと目立っちゃうよね。


17141:識別番号03

分かりました



17142:識別番号04

大規模侵攻が終了したら即刻帰還せよ。ムツミとキーに対応しきれない。

終わったら即刻帰還せよ!


17143:アスクヒドラ

ゼロヨン、いまどんな目に遭ってるの?


――――――――――――


「愛奈先輩、真嘉たちが──」

「通信? ちょっとまって……月世?」


 連絡してきた相手は、月世だった。親友はルビーをどうしたのだろうか? 問い掛けたくなる気持ちをぐっと堪えて、彼女からの知らせを受ける。


「……うん、分かった…………え? いいの? ……ありがとう、それじゃあ」


 通信を切った愛奈は『ヘビの面』を取り出しながら、真剣な瞳でアスクを見た。


「──お願いアスク、私と一緒に亜寅と丑錬を……大事な後輩を探して」


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