第5話 団欒

秋風と遊んだ日から俺達はよく話すようになった。


「なぁ四葉、悪いけどシャーペンと消しゴム貸してくれね?筆箱忘れちゃってさ」


「はぁ、なんでだよ?猫屋敷さんに貸して貰えばいいだろ」


「いやマヤのやつに貸してって言ったら『何度忘れれば気が済むの!!いい加減自分で持ってこい!』って、鉛筆やら消しゴム投げて来たんだぜ!」


「それはお前が悪いな」


「なんで!?忘れるのは悪いけど物投げるのはおかしいだろ!!」


「で、何回忘れたんだ?」


「・・・・12回」


「お前が悪い」


「あぁぁぁぁ頼むぅぅぅ貸してくれ!!」


「分かった、分かった今日だけだからな!」


「ありがとう、神様仏様四葉様!!」


秋風は時々、いやしょっちゅう忘れ物をして、こうして周りに借りたりしている。


当初俺は秋風をモテそうなやつだと思っていた。だがそれは俺の勝手な妄想で実際の秋風は残念なイケメンだ。だから彼女居ないのかーとどこかで納得している自分がいる。


ちなみに猫屋敷さんは彼女じゃないらしい。


割とお似合いだと思うんだけど。


少し日が経ち、テストが行われた。


さほど難しくは無かった、平均は超えててほしところだ。


「なぁイルカ、テストどうだった?」


「手応えはあったよ」


「まぁイルカは昔から頭良かったしな」


「そんなこと無いよ」


「なぁなぁ四葉!テストの点数勝負しようぜ!」


イルカと雑談をしていると秋風が突然、勝負を仕掛けてきた。


「なんだよ突然、お前勝てる自信あるんのか?」


「おう!そうりゃもう、今回のテストは簡単だったしな!負けた方は何か奢る」


「やめときなー桟君、緑じゃ勝負にならないから」


「そうだよ、秋風と四葉じゃ勝負にならないよ!」


「秋風ってそんなに頭いいんだ」


それからまた数日、テストの結果が戻って来る日となった。


出席番号順でテストが返却されて行く。


最初に秋風のテストが返って来た。


「四葉がテスト返ってきたらせーので見せ合おうぜ」


「まぁいいけど」


そうして俺のテストが返って来た。


「よーし!じゃぁ行くぞ、せーの!」


バッ!!


「・・・・・・これは・・・」


桟四葉83点 秋風緑33点


「ちくしょー負けたぁぁぁぁぁぁ」


「お前よく勝負しようと思ったな!!その自信は一体どこから湧いたんだよ!?そんでもって赤点ギリギリじゃねーか!!」


「ほらーだから言ったじゃん勝負にならないって」


イルカと猫屋敷さんが呆れたと言わんばかりの表情をしていた。


「勝負にならないってそゆうことなの!?」


本当何がしたかったんだ!?もしかして俺が頭悪いと思ってやがったのか!?

なんか癪だ。


「ちなみイルカの点数どんくらい?」


「僕?」


スッとテスト用紙を渡して来た。


《97点》


「・・・・・・・・・・・」


「イルカ君本当にすごいね」


そこには、天と地の差があった。


「やっぱりイルカすげーのな」


「まぁ今回は簡単だったし.....」


そう言うイルカの頬は少し赤くなっていた。


褒められたことが嬉しいのだろう。


昔からイルカは褒められると顔を真っ赤にして喜んでした。


変わらないものもあるんだな、俺は心のなかでそう思った。


「どうしたのイルカくん、顔真っ赤だよ!?熱でのあるんじゃないの?」


「だ、大丈夫だよ、ありがとう猫屋敷さん」


「大丈夫ならいいんだけど」


「なあ〜〜四葉〜〜ここ教えてくれ〜〜」


その後ろでは秋風が必死にテスト直しをしていた。


「お前よく今までテスト乗り越えられたな」


俺は呆れてため息を着いた。


「そういえば、負けた方はなにか奢るんだったか?」


 俺がそう言うと秋風は早口で喋り始めた。


「え、え〜っとそれはほら冗談だよ冗談!!四葉だって勝負に乗ったなんて言ってなっかた訳だしさあ、今回はなしにしようぜ!な!」


「うわ〜〜緑ダッサ、自分が負けたら奢らないはダサいよ、イルカくんもそう思うでしょ?」


「そうだね、秋風は自分から勝負を挑んだんだし、負けちゃったんだからちゃんと自分が言ったとおりにしないと」


「そ、そんな〜〜」


諭すようにイルカが言うと秋風は撃沈した。


何を奢ってくれるのか楽しみにしとくか。



「ねえ四葉、今日僕の家でご飯食べてかない?」


帰りの用意をしているとイルカから晩御飯の誘いを受けた。


「特に用事もないし、せっかくだしお邪魔させて貰うよ」


「分かった、お姉ちゃんにも伝えとくね!」


「ああ」


こっちに戻ってきてからは初めてか。


小学生の頃は毎日のように遊びに行ってたっけ、少し緊張するな。


そうしてイルカの家に着くと何やらいい匂いがしてきた。


少し嗅いでみるとそれはカレーの匂いだった。


「さ、上がってよ」


「お邪魔します」


見慣れた玄関、だが家具の配置やものが少し変わっていた。


「しろちゃんいらっしゃ〜い!!」


奥からエプロン姿のクジラが玄関に向かってきた。


学校の奴らには拝むことのできない姿、背徳感が凄い。


数秒見ていると隣からイルカのなんとも言えない圧を感じたのでさっと目をそらした。


「今日はね〜私の手作りカレーだよ!期待しといてね!」


「うん楽しみにしとくよ」


「四葉、カレーができるまで僕の部屋で待ってようよ」


「そうするか」


そう言うと俺たちは階段を上がってイルカの部屋に向かった。


「適当にくつろいでよ」


「ああ、それにしても久しぶりだなーイルカの部屋、昔は毎日のようにここ遊んだっけ」


「懐かしいね、四葉覚えてる?四葉がベットで飛び跳ねて盛大に落ちたこと」


「覚えてる、覚えてるあのときは痛かったなー」


「四葉って昔はやんちゃっだたよねー僕いろんなこと覚えてるよ」


「そうだ、イルカ秋風に俺のこと言ったろ」


するとイルカは「あ」と声に出して顔をそらした。


「おい!なんで言ちゃうんだよ!」


「ごめんて、あまりにも面白いことが多すぎたから」


「まあもういいけど」


「二人共〜降りておいで〜」


話していると下からクジラの声がした。


「そろそろ行こうか」


「そうだな」


下に降りるとそこには半熟卵と唐揚げが乗ったこれぞ「私が考えたさいきょうのカレー」と言わんばかりのものが食卓に並んでいた。


「うまそ〜〜!!」


「自信作だよ!!」


「それじゃ食べようか」


「「「いただきます!!」」」


一口入れただけで分かる。これ止まらなくなるやつだ。


「ウメェ〜〜〜」


「本当!?よかった嬉しい」


クジラは嬉しそうに皿のカレーを口に運んだ。相変わらず食ってる量は凄いな〜


ふとイルカの方を見ると皿のカレーが既になくなっていた。


「あれ、イルカ食うの早くね!?」


「そうかな?普通じゃない?」


「ルカちゃん中学生になってから少しずつ食べる量増やしてったんだよ」


「まあ元々少食だったしね、少し食べる量が増えてもおかしくは無いでしょ」


「それもそうか」


納得した俺は再びカレーを口に運んだ。


カレーを食べ終わり食器洗いの手伝いをしていると、ふとクジラが声をかけてきた。


「ねぇしろちゃん琴葉ちゃんは今何してるの?」


その問いに俺は数秒間固まってしまった。聞かれれるとは思っていたけどいざ聞かれると固まってしまった。


くじらと琴葉は昔、姉妹のように仲が良かった。学校に来ていないことを心配してくれたのだろう。


「東京でちょっと嫌なことがあってね、琴葉は今家にいるんだ」


「そうだったんだね、、、今度琴葉ちゃんも一緒に来てよ一杯美味しいもの作るからさ」


「ありがとうくじらちゃん」


琴葉もくじらと会えば少しは元気になるだろうか。


そうならば連れてくるのもいいかもしれないな。


そう思いながら俺は皿洗いを再開した。


「二人共今日はありがとう」


「気にしないで、僕も今日は楽しかったよ」


「今度は琴葉ちゃんも連れてきてね〜」


「分かったよ、じゃね」


手を振る二人を尻目に俺は家に帰った。








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