第4話 黒歴史

「なぁ桟。お前に聞きたいことがある」


体育の時間、俺は秋風とペアを組んで体操をしていた。


「なんだよ改まって」


「白海ってどこか悪いのか?」


「どうしてだ?」


「いや、白海高校に入ってから体育の時間見学することが多くなってさ、ほら」


秋風の指差す方を見ると、そこにはジャージ姿で見学してるイルカの姿だった。


「どこか悪いところがあるのかなって」


「分からないよ、大体俺はイルカと小学校を卒業してから一度も会ってなかったんだから、でもイルカって中学の時バトミントン部だったんだよな?」


「あぁ、中学では敵無しで県大会で優勝とかしてたな」


そうだったのか、初めて知った。

イルカには、そんな特技があったのか。


「まぁ余り詮索してやるな、イルカにはイルカの事情があることだし」


「それもそうだな」


そして俺たちは体操を終えトラックを走り出した。


でも確かに気になる、なんでイルカは休んでんだろ。


どこか悪いところでもあるの?


昼休み、弁当を食べようと机を片付けていると、俺を呼ぶ声が聞こえた。


「しーーろーーちゃん!」


俺のことをそう呼ぶのは一人しかいない。


クジラだ。


「どうしたの?」


「一緒にお弁当食べよー!!」


「いいよ」


周りはクジラのファンであろう有象無象の殺気で満ち満ちていた。


周囲の殺気を無視して俺はクジラに着いて行った。


着いたところは、美術室だった。


なんでこんなところに?


入るとそこには巨大な絵が置いてあった。


真っ白なクジラが描かれた俺の背丈程ある巨大な絵。


「ねぇこの絵なに?」


「あぁぁこれね、私が描いたんだよ」


「えぇ?」


「中学から描いてたんだ」


綺麗な絵だな。


絵に見惚らているとクジラがおもむろに弁当箱を取り出した


ゴトンッ!!


「さぁしろちゃん食べよー」


「あぁぁ・・・・・!?」


クジラが出して来たのは大きさが明らかに

バグっている弁当箱だった。


俺の弁当の2、3倍はあるぞ!


「ねぇクジラさんや、もしかして弁当ってそれ?」


「?そうだよ」


「なんかデカくない?」


「そんなことないよ、いつもこの大きさだよ!」


いつも!?


その栄養はどこにいってんだ!?


あ、胸か


勝手に自己完結しているとクジラが卵焼きを箸で掴んで俺に向けて来た。


「しろちゃん、あーーーーん」


「え、え、あ、あーーーん」


なんなんだ、この新婚プレイは!?


恥ずかしく死にそう。


「どぉ?美味しい?」


「と、とても美味しいれす」


「やった!!しろちゃんのために朝から頑張った甲斐があったよ!」


「クジラが作ってるの?」


「そうだよ!ルカちゃんのもね!」


イルカの弁当もクジラが作ってるのか、少し羨ましいな。


ふとクジラを見ると、弁当の中身を飲み物のように口に運んでいた。


そして頬をリスみたいに膨らませて美味しそうに食べていた。


「美味しそうだね」


「○◇□◎△(美味しいよー)」


「飲み込んでから喋ろうか」


ゴクンと口の中を飲み込み屈託のない笑顔を向けて来くる。


可愛いと思った自分がいた。


「そうだしろちゃん、東京どうだった?」


クジラは目を輝かせながら聞いてきた。


「思ってたところと180°違かったよ、できればもう二度と行きたくないなー」


「えぇ!?そうなの?前は東京に住んでみたいって言ってたのに?」


「まぁ色々あったんだよ」


「そうなんだ」


そういうとクジラは弁当の中身を平らげた。


教室に戻るとイルカが俺の席に座ってた。


なんだか不機嫌だ。また俺イルカになんかしたかな?


「どこ行ってたの?」


「美術室」


「なんで?」


なんか尋問されてる!?


「クジラと昼飯」


「・・・・・僕も誘おうとしたのに」


「悪かったよ・・・・??」


ふと思った、なんでこんなやり取りしてんだ?


これじゃ、まるで浮気を疑ってる彼女みたいじゃねーか!


なんだ?イルカの考えてることが分からん。


「明日は一緒に食べようぜ」


するとイルカはふてくされながらコクンッと頷いた。


なんか許されたっぽい。


学校が終わり帰ろうとすると、秋風から遊びに誘われた。


「ハンバーガーでも食いに行こうぜ!」とのことだった。


久しぶりにいいかもなそう思い、俺は秋風とハンバーガーを食べることにした。


「さぁ座ろうぜ!」


「あぁ」


席に着くと秋風はウマ〜と言いながらハンバーガーにかぶり付く。イケメンがハンバーガーを食べるとこうも絵になるのか?


「そうだ、今度桟の家に遊びに行ってもいいか?」


「なんでだ?」


「遊びに行くのに何か理由が必要なのか?」

 

「いや、そうゆうことじゃねーけどさ、俺うち妹がいるんだけど、、、」


「へえ~桟って妹いるんだ!」


「その妹が極度の人見知りなんだ」


「あ~なるほどそういうことね、桟っていい兄貴なんだな!」


「どうしてそうなるんだ?」


「だって、友達と遊ぶより妹のことを優先させるんだろ?そんなのいい兄貴だろ」


そいうと、秋風はニッと笑った。


「俺っていつから秋風の友達になったんだ?」


「なんだそれwwこうして放課後一緒にハンバーガーを食べてるんだから、もう友達だろ?」


「そゆうもんかね?」

 

すげ~これがイケメンが考えてることなんだな、イケメンで性格もいいとそりゃ 

そりゃモテない方がおかしいがおかしいか。 


「でもなんで俺なんだ?なんで俺と友達になってくれるんだ?」


「中学の時、白海からお前の事を聞かされたんだよ、面白い幼馴染が居るってな」


「えっ?そうなのか!?」


「ああ白海のやつ水を得た魚のようにいきいきとお前の事をはなすんだぜ」


驚いた、イルカが俺をそんな風に話していたのか。


「白海のやつ中学入りたての時、誰とも話さなっかったんだよ。なんか彼女に振られたような面しててさ」


「なんだそれ、イルカって彼女いたのか?」


「そこまでは知らないな、むしろ桟のほうがしてると思ったんだけど」


「俺は知らないな」


そんな話、イルカからは聞いてない。


「ちなみにイルカはどんな事を話てたんだ?」


「大人数にイジメられたてるところを1人で助けてくれたとか、賞状を貰う時に声が裏返ってみんなを笑わせたり、あとは自転車で思いっきり田んぼに突っ込んだことそれから・・・」


「分かった、もういい、もう辞めてくれ!」


なんでそんな事を話すんだよイルカァァァ!


人の黒歴史をよくもまぁいきいきと語ってくれたなオイ!お陰で笑われ者じゃねーか!!


「まぁだから気になったんだよ、白海がそこまで褒めてて、面白いやつのことをwww」


「笑うなや!!」


「まぁこうして話てみると面白いやつだったしな」


「余り嬉しくねーな」


「まぁこれからよろしくな桟!」


「あ、ぁぁ、よろしくな」


そうして俺はどこかやるせない気持ちでポテトを食べた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る