第34話 前日





まゆと暮らし始めてから早くも半月ほどが経過しようとしていた。ホテルに行った日からも毎日まゆと幸せに過ごして休みの時間はあっという間に過ぎ去り、いよいよ明日からは僕とまゆの初出勤の日だ。


「りゅうちゃん、スーツあそこに掛けといたからね」

「え、出しといてくれたの?わざわざありがとう」


まゆも自分の準備で忙しいはずなのに僕のことにまで気を遣ってくれる。このまゆの優しさが大好きだ。


「まゆ、明日朝早いでしょ。早く寝なよ。あ、明日の朝ゴミ出しは僕がやるね」

「ありがとう。じゃあ、任せた。りゅうちゃんも明日朝早いんだから…早く…寝よ?」


まゆに甘え声でそう言われて拒否できるわけがない。少しだけゲームしてから寝ようかな。って思ったけどしらん。寝る。まゆと寝る。


「えへへ。今日もりゅうちゃんと一緒だ〜」


僕が布団に入るとまゆが僕に抱きついて嬉しそうに言う。めちゃくちゃかわいい。まゆを抱きしめ返しておやすみ。と言うとまゆもおやすみ。と言ってくれた。まゆと毎日おやすみ。と言える関係になれたことをすごく幸せに感じる。


「りゅうちゃんまだ起きてる?」


まゆとおやすみ。と言い合ってから数十分くらいしてからまゆが小さな声で僕に尋ねる。


「起きてるよ。どうしたの?」

「なんか寝れなくて…明日からのお仕事…楽しみだけどちゃんとできるか不安で…」

「わかる…」


僕もまゆと同じように不安を抱えているから。明日から本当に自分が働いている姿を想像することすらできない。すごく不安な気持ちもある。


「失敗したらどうしよう。とかいろいろ考えて寝れなくて…あ、ごめんね…暗いこと話しちゃって…」

「いいよ。僕も、まゆと同じだからさ。でもさ、僕は頑張る。って決めてるんだ。最初は失敗するかもしれないけど少しずつ一人前になっていけるように頑張る。これからもまゆと一緒にいられるようにするためならどれだけ辛くてもどれだけ不安でも頑張ろう。って思える」


ちょっと照れ臭いけど、僕が思っていることをまゆに伝えるとまゆが僕を抱きしめる力が少しだけ増した。


「まゆも…頑張る。まゆもりゅうちゃんとずっと一緒にいたい。だから、頑張れる」

「ありがとう」


そう言ってまゆをぎゅっと少し強く抱きしめる。まゆにお互い頑張ろうね。と言われてやる気が出た。


「よし、明日頑張るために早く寝よう。明日から頑張ろうね。りゅうちゃん、おやすみ」

「うん。おやすみ」


改めておやすみ。を言った数分後にまゆはぐっすり眠った。そんなまゆの頭を優しく撫でながら僕も眠っていた。





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