第31話 やつあたり





「りゅうちゃん…ごめんね……」

「大丈夫だよ。ゆっくり休んで」


お店を出てからもう2時間くらい経過している。座席を倒して軽く休もうとしたがなかなか休まらない。りゅうちゃんに申し訳なく思う罪悪感でだんだんとまゆの気持ちは不安定になっていく。


「お店の人に頼んで車、停めさせてもらおうか。タクシーとか乗れそう?酔いとか感じたらだめかな……」


りゅうちゃんはまゆのことを本当に心配してくれていたこんなに優しいりゅうちゃんに迷惑をかけてしまい本当に申し訳ない。たぶんりゅうちゃんは気にしてない。と言ってくれるし、本当に優しいから迷惑なんて思っていないだろうけどまゆにはそう思う余裕がなかった。


「りゅうちゃんは先帰ってていいよ。まゆ、もう少し休んで体調良くなったら1人で帰るから…」

「そんなことしないよ」

「だって迷惑でしょ…いいから、先に帰ってて」


りゅうちゃんはまゆに優しくしてくれるのにまゆはりゅうちゃんに強い口調で言葉をぶつけてしまい、まゆはますますまゆのことが嫌になる。


「まゆはさ、いつも家事してくれる時僕のこと迷惑だって思ってる?まゆが1人暮らしだったらもっと楽だったのに…とか思ってる?僕はさ、家事とか苦手だからまゆに頼りっきりになってるじゃん。だからまゆが辛い時くらい側にいさせてよ。迷惑なんて思ってないから。頼ってよ。まゆに頼られたら僕、なんでも喜んでするからさ」


まゆに一方的にキツいことを言われたはずなのにりゅうちゃんは優しくそう返してくれた。あぁ…こう言うことを言ってくれるから…まゆはりゅうちゃんと一緒にいたい。って思えたんだ。りゅうちゃんのことが好きになったんだ。付き合い始めた時からずっとまゆを支えてくれていたりゅうちゃんの優しさを改めて知ってまゆは泣き出してしまう。


「まゆ、大丈夫?」

「大丈夫。嬉し泣きだから……」

「そっかならよかった」


そう言ってりゅうちゃんはまゆが泣き止むまでまゆの頭を撫でてくれる。りゅうちゃんに頭を撫でられるとまゆはすごく幸せな気持ちになれて、心が落ち着いた。


そしてまゆが泣き止んだ頃にコンコン。と車の窓がノックされた。先程カフェにいた店員さんだ。すごく優しいおばさんだったのを覚えている。りゅうちゃんが車から降りて対応してくれた。


「まゆ、ちょっとだけ歩ける?」

「え、どうして?」

「すぐ近くにビジネスホテルがあるからそっちで休んだ方がいいんじゃないか。って…運転は危ないから車はここに停めて体調良くなったら取りに来てくれればいいからそっちで休んだら?って言ってもらえたからさ…」


店員さんが現在空き部屋があるかどうかも確認して教えてくれたらしい。本当に近くの場所にあったのでご好意に甘えて車を停めさせていただいてビジネスホテルで休むことにした。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る