第4話 サイカクニン





「りゅうちゃん……え、えっと…そ、そういうこと……は……まだ……はやいよぅ………」


僕がまゆを押し倒してしまってから少しの間、永遠かと錯覚するほど長く感じる静寂の時間を経て、まゆは少し目をウルウルさせて真っ赤な顔で僕に言う。


そんなまゆを見てかわいい。と思う余裕すらなく僕は慌てて起き上がる。


「ごめんなさい…」


起き上がって速攻正座してまゆに土下座して謝る。僕がめちゃくちゃ謝るのを見て少し落ち着いたのかまゆは気にしてないから大丈夫だよ。と僕に声をかけてくれる。りゅうちゃんにそういうことする度胸とかないだろうし…悪気はないよね?大丈夫だよ。謝らないで。と慌てて僕に言うまゆ…そういうことする度胸はたしかにないけど…なんか、はっきり言われると凹む……まあ、僕が悪いからなんとも言えないけど……


そんな感じでまゆに許してもらえてからお互いなんとなく気まずい感じで夜ご飯を食べる。めちゃくちゃ美味しいのに…こんな気まずい空気を作ってしまった申し訳なさを感じてしまう。


「ご、ごちそうさまでした。まゆ、すごく美味しかったよ。ありがとう」

「う、うん…あ、食器とか片付けちゃうから運んで欲しい…」


お互い目を合わせることなく夜ご飯を食べ終えて食器を片付ける。まゆに任せっきりは申し訳ないのでまゆが食器を片付けてくれている間に机を拭いたりできることをしておいた。


「まゆ、ありがとう」


食器などを片付けてくれたまゆが部屋に戻って来たのでまゆに声をかける。まゆはうん。と短く返事をしながら僕の方に歩いてきて僕の真横に座る。ち、近い……嬉しい……けど、さっきのこともあって気まずさを感じてしまう。


「ぎゅーして」


僕が戸惑っているとまゆがいきなりそう言い出した。僕がえ?と戸惑っているとまゆは顔を下に向けながら僕の方を見てはやく。と急かしてくる。


「ぎゅーしてくれたらさっきのは許すから。はやく」


そう言われると逆らえないので僕はまゆの方を見てまゆに手を伸ばす。よく見るとまゆの耳が真っ赤になっていることがよくわかる。まゆの背中に手をそっと置いて、まゆをゆっくりと引き寄せて、ちょっとだけ手に力を入れてまゆを抱きしめる。


「許す」

「あ、ありがとう…」

「あと、まゆもごめんなさい…あの、その…緊張しちゃって……喋れなくて……その、りゅうちゃんのこと嫌いになったわけじゃないから……まゆはりゅうちゃんのこと大好きだから……誤解しないで……もうまゆといるの嫌とか…言わないで……ね……」


僕がそんなこと言うわけないのにまゆは泣きそうな表情で僕の顔を見て謝る。かわいくて優しくて一緒にいられるだけで幸せだと思う大切な彼女にこんなことを言わせてしまい自分は本当に情け無い。


「まゆ、僕の方こそごめんね。僕もまゆのこと大好き。こんな僕でよかったらずっと一緒にいてください」


そう言ってまゆをぎゅっとさらに強く抱きしめるとまゆも僕を抱きしめ返してくれた。


同棲生活初日にお互いの気持ちを改めて理解できた。これからもずっと一緒にいたい。





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