第3話 夕食ハプニング
ち、近い…近すぎるよ………
自分の心臓がドクンドクンと凄まじいスピードで鼓動を刻んでいることが自分でもよくわかるくらい僕は緊張していた。
僕の真横に座るまゆの横顔をチラッと見ると心臓の鼓動は更に激しさを増していく。きっと僕の顔は今頃真っ赤に染まっているだろう。きっと、僕の隣に座っているまゆの頬と同じくらい真っ赤に染まっているのだろうな…
目の前にあるまゆが作ってくれた夜ご飯にお互い手をつけることなくさっきからお互い黙り込んでしまっている。さっきからドクンドクン。と聞こえてくる心臓の鼓動は僕のものなのかまゆのものなのか判別もつかない。それくらいお互いの頬は真っ赤に染まってしまっている。
少しでもまゆの座っている方向に体を動かしたらまゆと当たってしまうくらいの至近距離でお互い顔を真っ赤にして座っている。付き合ってすぐの頃に戻ってしまったと思えるくらい僕もまゆもドキドキしていた。
「た、食べようよ…さ、冷めたら…えっと……その……あれだから……」
完全に語彙力を失ってしまったような口調で真っ直ぐ壁を見つめながらまゆが言う。いつもは僕の方を見て素敵な笑顔で話してくれるまゆだが、ドキドキしている所為か僕の方を見てくれない。
「う、うん。そうだね。美味しそう。い、いただきます」
「う、うん。いただきます……」
僕が震える手を合わせていただきます。と言うのに続いてまゆも震える手を合わせた。上手く箸を掴めないが頑張って箸を持とうとするとまゆがチラチラと僕の方を見てくることに気づいた。僕がまゆの方を見るとまゆと目が合い、お互いすぐに目を逸らす。
「は、早く食べて感想聞かせてよ……」
照れ隠しをするようにまゆは上擦った声で僕に言う。そんなまゆをかわいい。と思いながらまゆが作ってくれた料理を口に運ぶ。めっちゃ美味しい。めちゃくちゃ美味しい。緊張していてもわかるくらいめちゃくちゃ美味しい。すぐに美味しい。と言おうとするが、ドキドキしすぎていて何と言えばいいかわからなくなっていた。
「お、美味しくなかった……?」
まゆがめちゃくちゃ不安そうな表情をするのを見て不甲斐なさでいっぱいになる。まゆにこんな表情して欲しくないし、させてしまった自分をぶん殴りたい気持ちでいっぱいになる。
慌てて美味しいよ。とまゆに伝えるがまゆの不安そうな表情は消えてくれない。大好きなまゆにこんな表情をさせてしまった罪悪感でいっぱいになる。
こんなに美味しい料理を作ってくれたのに悲しそうな表情をしているまゆを見て申し訳なさでいっぱいになり、僕は箸を置いてまゆを抱きしめる。
ごめんね。本当に美味しいよ。ありがとう。そう言った感情をまゆに伝えようとしたのだが、勢いあまってまゆを抱きしめてそのまま、まゆを押し倒す形で僕とまゆは倒れ込んだ。
まゆにごめん。と謝ろうとするとまゆの顔が目の前にあり、まゆと目が合う。きっと、僕も今のまゆみたいにさっきとは比べ物にならないくらい頬を真っ赤に染めているような気がした。
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