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帰り道、俺は佐伯と共に帰りの電車に乗りこむ。
電車は空いており、席があったので佐伯と横並びで座った。
『今日はお疲れ様、蓮くん』
座った瞬間佐伯が口を開いた。
『全くだ…久々に一日中歩き回った…』
『学校の行事だと午前中で終わっちゃうもんね』
学校でも奉仕でゴミ拾いはあったが、せいぜい2時間から3時間で終わるようなものだった。
今回みたいに7時間も歩いたのは流石にきつい。
しばしの沈黙をした後、俺は佐伯に聞きたくなったことを思い出す。
先程解散間際の話、その延長で。
『なあ、佐伯』
『ん、どうしたの?』
俺が呼びかけると笑顔でこちらの方を向いてくる。
『なんで佐伯は、そんなに一生懸命になれるんだ?』
俺が聞きたかったこと、佐伯がなぜこの奉仕活動を楽しみ、一生懸命に取り組めるのかということ。
今、自分が求めてる何かに取り組むための力を佐伯は持っているのかと期待していた。
『うーん、それはね』
少し佐伯は考え込んだ後、話し出した。
『私ね、誰かのためになれるってことに生き甲斐を感じるんだ、だからボランティア活動とか大好き』
生き甲斐、とまで言い切るその姿勢。
ボランティアなどすることをしてこなかった俺には到底辿り着かなそうな考えに、素直に感心する。
『そうなのか、意外に真面目なんだな』
『あーまた意外とか言う〜、そんなに私不真面目に見える?』
俺は佐伯藍那という存在を一年前から知っていた。
でもそれは意識してたとかそういう訳でもない。単にうちの学校の規模なら少しだけ目立つ彼女の存在は誰の目にも入ってくるから。それまでは彼女のことを少し騒がしいような女生徒としか思っていなかった。
でもこうして話していると、新しい一面が見えた。俺が思ってたイメージとは違う、佐伯は尊敬できるような考えを持った人だった。
『悪いな、前はそう見えた』
『本当に正直だね桐谷くんは…でもそういうとこ嫌いじゃないよ』
ふふっと笑いながらそう答えた。
すると続けて口を開く。
『私ね、将来消防士になりたいんだ』
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