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『お疲れ様、ほんとに助かったよ』


時刻は17時

無事清掃を終えて5つ先の駅に着いた俺はクタクタになっていた。


『疲れましたよ…ほんとに』


『ははは、君はどうやら運動不足のようだね、早い段階で疲れていただろう』


中島先輩が笑いながらそう言う。

体力に自信がない俺はこう言う一日中歩くようなことは苦手だと改めて思う。


『それにしても佐伯くん、君がいて本当に助かったよ』


これだけ歩いても疲れた表情すらしていない佐伯の方を、中島先輩が笑顔で見る。

それだけ佐伯の手慣れてる感はすごかった。


『いえいえ、そんなことないですよ』


『謙遜しなくていいさ、もし君が良かったらまたこうやって参加してくれないか?』


『私でよければ全然いいですよ!』


佐伯はそう言うと俺の方を向いた。


『蓮くんも、また一緒にね』


『勘弁してくれ…俺はもう懲り懲りだ…』


今回は佐伯に押されて勢いのまま参加してしまったが、もう二度と参加することはないと心に誓った。

全くもって俺向きの活動ではない。


『えー、楽しかったでしょ今日』


やり甲斐があったとかなら分かるが、ゴミ拾いが楽しいとはどういうことなんだ


『俺には楽しいは理解できないな』


本音を佐伯に言うと、ムーっとした表情でこちらを見てくる。


『蓮くんは分かってないなー、中島先輩も楽しそうにしてたのに』


『いや佐伯くん、私も楽しいとは思っていないぞ』


中島先輩も冷静にそう言う。

すると一年生の二人もうんうんと同意するかのように頷いた。


『え、あ、そうなんですね、あれ?わたしだけ?』


戸惑ったような素振りを佐伯はしているが、どう考えても佐伯は少数派だと誰もが思うのではないか。

すると中島先輩は少し考えた素振りを見せて、口を開いた。


『どうやら君は誰かのために働くことが好きなんだね』


『そうなんです!よくわかりましたね』


なるほど、そう言うことなのかと俺は感心した。

そう言う面でこの活動を楽しいと思えるのは素直に尊敬できる。


『君の一生懸命な姿を見てればすぐに分かるさ、その姿勢は憧れるよ』


『あ、ありがとうございます』


少し照れたような感じで佐伯はお礼を言う。

鼻からこの活動をつまらない・面倒と思っていた自分が少しだけ愚かに思えてしまった。

佐伯のように、何かにやり甲斐を見つけて本気で楽しいと思えるのは、俺にとってはとても羨ましいことだ。

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