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『ふーっ流石に暑いから疲れるね〜』


それまできびきびと動いていた佐伯は小休止に入ったのか、ゴミを拾うのをやめてこちらに歩み寄ってきた。


『そう言う割には汗もかかずに余裕そうだな』


疲れたと言う割には全然疲れていない様子なのが見て分かる。


『あはは、まあこの格好だからかな』


『なるほどな、佐伯にとって本当にそれが適した格好なんだな』


『うん、そういうこと』


ここまで佐伯は先輩も驚くような働きぶりで俺の倍はゴミを拾っていた。慣れた手つきは経験者だと言うことを物語るかのようだ。


そんな話をしていると先輩がこちらにやってきた。


『しかし驚いたよ、佐伯さんが来てくれて本当に良かった』


『いえいえ、そんなことないです、あ、えっと…失礼なんですが、先輩の名前なんでしたっけ…?』


佐伯が申し訳なさそうにそういう。

俺も同じことを聞こうと思っていたので手間が省けた。


『はは!忘れたんだな!』


『すみません…』


『桐谷くん、君は忘れてないだろう?ぜひ教えてやってくれ』


先輩が俺の方を向いて俺が1番されたくない質問をしてきた。一瞬思い出そうとするが…やはり俺も忘れてしまって思い出せない。


『すいません俺も忘れました』


『なんだお前たち失礼だな!私は中島楓だ、以後忘れないでくれよ!』


そう言われてあの時の自己紹介が急にフラッシュバックした。そうだこの先輩は中島だ。まあ教えて貰ってからそんな場面思い出しても何も意味がないんだが。


『すみません中島先輩!今後ともよろしくおねがいします!』


『おうよろしく!』


佐伯と中島先輩が改めて挨拶しあう。


『さあてと、そろそろお昼ごはんにでもするか』


時刻は13時過ぎになっていた。時計を見てなかったせいかもうこんな時間かと思う。


『おーい一年生!集合してくれー!』


中島先輩は少し遠くの方でゴミ拾いしていた一年生に声をかけると、リュックを下ろしてレジャーシートを取り出し、それを轢き始める。やけに大きいシートのため、全員がこれに座ることができるだろう。


『ほらほら、座って座って、今だけはピクニック気分でも味わおうじゃないか』


そう言われたので俺も佐伯もリュックを置いてシートの上に座った。

程なくして一年生の二人も来て五人がシートの上に座るが、広々としているお陰で窮屈な感じはしない。


俺は最寄駅で買ったコンビニ弁当を取り出して食べる準備をする。

その際に佐伯の方をチラッと見ると、お弁当箱を取り出していた。おそらく自分で弁当を作ってきたのだろう。


『お、佐伯くんは自分で作ったのかな?』


中島先輩がそう言うと、佐伯は少し恥ずかしそうに答えた。


『あ、はい、私はいつも自分で作ってるので』


『君はなかなか女子力が高いね』


そんな中島先輩はと言うとコンビニのパンが一個だけ手元に置いてあった。


『先輩、それで足りるんですか』


俺が尋ねる。

長丁場の作業でそれだけで過ごすのは俺なら絶対耐えられない。


『私はそんな食べれないんだ、まあいつもこんな感じだから気にしないでくれ』


俺はその言葉に少し引っかかったが、特に言及はせずに、自分のコンビニ弁当を食べ始めた。

先輩や一年生、佐伯と談笑しながら箸をすすめて、お昼時は過ぎて行った。

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