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『佐伯さん、今日ゴミ拾いだけど大丈夫?その格好』


先輩が苦笑いしながらそう言う。


『あ、大丈夫ですよ、割としっかり虫刺され対策とかしてるんで』


そう言うと虫除けスプレーとムヒを取り出して見せてくる。

…虫刺され対策するならそんな格好しなくていいのではないか。


『ま、むしろ動きやすそうだしいっか、とりあえず行きましょう』


そう言うと先輩は歩き出し、俺たちもついて行く。

今日は気温が高く随分とハードワークになりそうだ。


『おはよ、蓮くん』


佐伯が俺の隣にきて挨拶をしてくる。


『おう、おはよ、随分と涼しそうな格好だな』


皮肉めいてそう言う。


『今日暑いからね、涼しい方がいいでしょ〜』


『そうか、まあ変な虫に刺されないといいな』


『心配してくれてありがとう、でも大丈夫慣れてるから』


本当に慣れてるのか疑いたくなる格好なのが物凄い違和感を醸し出す。

そうこう話をしてると河原に着いた。ここがスタート地点で川を下っていくコースとなる。

立ち止まって先輩がゴミ袋とトングをリュックから取り出した。


『じゃあ配るから、ここからゴミ拾いスタートね』


参加メンバーがそれぞれ自分の分を受取り、ゴミ拾いをスタートした。


『去年これやったよね〜懐かしい』


佐伯がトングをガチャガチャさせながらそう言った。

去年授業の一環で近くにある山のゴミ拾いをした時のことを思い出しているんだろう。


『ほら喋ってないで拾おうぜ』


はしゃぐ佐伯を尻目に俺はその辺に落ちているゴミを拾い出した。すると佐伯はじーっと俺の方を見てきた。


『なんだよ』


『蓮くん、意外に乗り気?』


笑いながら佐伯が言う。

誰かさんに無理矢理に近い形で連れてこられたものに乗り気なわけないだろうと心の中で思う。


『あほか、来たからには普通にやるんだよ』


『オッケー!拾おう〜』


佐伯は腕を捲り、草などを器用に払いながら細かいゴミを拾い始めた。

…なんというか、動きがとてもいい。


『…手際いいな』


『へへー!だから言ってるじゃん〜よくこういうのしてるって!』


笑顔でこちらを見ながらも拾うのをやめていない。

なるほど、奉仕によく参加するのは本当の話なんだな。

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