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携帯のアラーム音が鳴り響く。
その音で目が覚めた。時刻は6:45、今日は余裕で間に合う。
身体を起こして立ち上がり、リビングへ向かう。
悪い夢を見ていたせいか、少し寝起きが悪く感じた。
『おはよお兄ちゃん、今日は起きれたんだね』
テーブルに制服姿で朝食を食べているミナがいる。
今日はいつも通り部活の朝練だから7時に家を出るのだろう。
『流石に二日連続で自転車はきついしな』
眠い目を擦りながらテーブルについた。
俺の分の朝食も用意してある。
『いただきます』
昨日が昨日だっただけに、今日は早起きできただけでどこか清々しい気分だ。優雅に朝食を食べることができる。
『ねえ、お兄ちゃん』
パンに手をつけようとするとミナが下を向きながら喋ってくる。
『ん?』
返事をすると、顔を上げて申し訳なさそうな表情をしていた。
『その、昨日ちょっと言いすぎたかも、ごめん』
ああ昨日の夜のことかとすぐに察しはついた。
ただ何故謝るのかよくわからない。
『そんな気にするほどか?別に喧嘩とかはしてないだろ』
『えっとね、なんかお兄ちゃんも頑張ってるんだなって、昨日綾ちゃんとLINEしてて思ったから』
それを聞いて察しがついた。
『ああ、クラス委員になったこと聞いたのか』
『そそ、お兄ちゃんがそういうのやるの凄い久々だと思ったから』
なんだかそのくらいで関心されるのも自分が惨めに思えてくるが、ミナも割と俺のことを心配していたのだろう。少し照れくさい。
『まあ、ぼちぼち頑張って変わってくよ』
『うん、頑張ってね』
ニコッとミナは笑う。
その笑顔をみて、少しでも安心させられたことは良かったと感じた。
『そーいや、ミナは部活どうなんだ?』
ミナは今中学3年生で、最後の大会に向けて練習している。ただ今の2年生が実力を上げているからスタメンが取られそうと言っていたことをふと思い出した。
『順調かな、とりあえずスタメンはキープできそう』
『おお、良かったな』
安心した。ここ数ヶ月帰ってきても練習している姿をよく見ていたので、努力が身を結んだなら兄として嬉しい。
『うん、あのさ、お兄ちゃんは、もうバスケやらないの?』
ぼそっとした声でミナが聞いてくる。
『そうだな、もうやる気はない』
俺は小学生のころミニバスケットボールチームに入っていた。
でも、お母さんが死んでからやる気を失い、それからバスケはやっていない。
『そっか、やりたいもの見つかるといいね』
そう言うと席を立ち、食器を洗い物に運び出した。
時刻を見るともう7時になろうとしていた。
『そろそろ私行くね!のんびりしすぎて遅刻しちゃダメだよ!』
部活着が詰まったスクールバックを手に持って、ミナは玄関にむかっていった。それについて行き見送りをする。
『はいよ、いってらっしゃい』
『いってきますー!』
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