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『完成〜』


キッチンの方を見ると綺麗なオムライスが出来ていた。ミナはオムライスが得意料理…ではなくすぐ作れるからよく作っている。


『またオムライスか、好きだな』


『まあ私一人の時は楽だし。あ、お兄ちゃんコーヒー飲む?』


ソファに寝転がってる俺に対しての提案。

いつもミナは一人で夕食を食べる時、寂しいのかコーヒーやらなんやらいれて俺や親父をテーブルに座らせようとする。


『じゃあ貰うわ』


『はーい』


そう返事をすると手際よくコーヒーを淹れてゆく。ほどなくして、ホットコーヒーがテーブルに運ばれた。


『サンキュー』


ソファからテーブルに移動して、仲良く着席。

二人でいただきますと言って、俺は淹れたてのホットコーヒーに手をかけ、口にした。


その時ふと前を見ると、ミナは食事をしながら俺の顔をまじまじと見ていた。


『なんだよ』


『いやさ、お兄ちゃん、なんかあった?』


ビクッと体が震えた。

平静を装ってたつもりだったのだが、いつもと違うように見えたのだろうか。


『なんでそう思った』


『いやさ、なんかいつもよりぼーっとしているというか、なんかわからないけど』


なるほど。

言われてみればぼーっとしていたのかもしれない。


『すごいな、流石妹だな』


『で、なにがあったの?教えてよ!』


ニコニコしながら俺に言ってくる。こうなると教えてくれるまで聞き続けてくる。

まあ別に教えるのはなんともないのだが、綾に情報が回るのは避けたいところである。


『綾に言わないって約束するなら教えてやるよ。』


『言わない!言わないです!』


目をギラッギラさせて俺の方を見つめてくる。

まあ釘は刺したし、相談に乗ってもらうとするか。


『なんか、同じクラスの女子に好きって言われたかもしれない』


そういうとミナの顔が一瞬キョトンとしたが、すぐに驚きの表情に変わった。


『ええ?えええ?本当に?お兄ちゃんが?』


声を荒げる。まあ驚くのも無理はない。俺は色恋沙汰をしてこなかったのだから。


『まあ間違いかもしれないけど』


『なんて言われたの?ねえ?』


『好きかもって』


『それからそれから?』


畳み掛けるように次々と質問を投げてくるが、残念だがこれ以上の話はない。


『いやそれだけ』


ミナの表情が再びキョトンとしたものに戻る。


『…え?それだけ?』


『ああ、それだけだな』


『好き"かも"なの?』


『ああ』


うーん…考えた素振りをした後、

困惑したような顔で俺を見てきた。


『えっと…その人とはいつからの知り合いなの?』


『今日初めて喋った。』


そう言うとはあ…と大きなため息をつかれた。


『お兄ちゃんが一目惚れされるわけないでしょ、からかわれてるか、なにかの間違いだと思うよ』


『あ、やっぱり?俺も間違いだといいと思ってるんだけど』


そう俺が言うとさらに大きいため息をつかれた。


『間違いだといいって…お兄ちゃん本当に恋愛興味無さすぎ!』


同意しただけでなぜか怒られた。どう言うことなんだ。


『なんで怒るんだ?てゆかしょうがないだろ、興味持てないんだし』


『そんなこと言ってるといつまで経っても彼女できないよ!お兄ちゃん無気力すぎる!』


そう言われて、胸にちくっと何か刺さる感覚に襲われた。俺が一番治さなきゃいけないと思ってる問題を見事に突かれた。


『まあ、そのうちな…』


『お兄ちゃん、本当にそろそろ変わらないとダメだよ。』


ぼそっと俺が呟いたら心配そうに返して来た。変わりたいとは…一番俺が思っている。


『ご馳走様でした、私部屋で勉強するから食器洗いはよろしくね』


そういうとミナは洗い場に食器を置いてすぐ、自室に戻っていった。

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