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『あ、湊くんだ。』
佐伯は笑顔で小さく手を振る仕草をした。
そういえば一年の頃この二人は同じクラスだった。
『佐伯ご無沙汰。あれてか、蓮と佐伯さんって絡みあんの?知らなかったわ。』
『あれ?蓮くん私がクラス委員なの言ってなかったんだ。』
『えっ?マジ?佐伯クラス委員なの?』
簡単に佐伯はクラス委員のことを話してしまった。まあいずれ分かることなので別にいいんだが、今日弄られそうだから実に面倒くさい。
『なんだよー俺てっきり相方は栄田だと思ってたわ〜どーせ蓮のことだから隠してるだろうと思って、後で弄ってやろうと思ったのに』
俺の想像を遥かに超えためんどくさい計画が露わになった気がするが、ここは平常心を保つことに集中だ。
『んなわけねーだろ、あいつ忙しいし。』
『あーそうだよね。私もてっきり栄田さんがやると思ってたんだよね。コソコソ話してるの見えたし。』
俺の席って目立たないと思っていたが、案外目立つんだなと思い直した。
『てかさ、佐伯クラス委員とか意外すぎるわ。なに?蓮のこと好きなの?』
はい出ましたと言わんばかりの、いつもの調子乗った茶化しが始まってしまった。このモードにはいると湊はとにかく面倒だ。こいつ連れてさっさと席に戻ろう。
『うーん。好きかも。』
………へ?何を言ってんだこの人は?
『えっ?あれ?まじ?』
湊もあれ?間違えた?みたいな、ポカンとした顔をしている。
場が一瞬で沈黙と化した。よく見ると佐伯もちょっと顔が赤くなっていた。
『あはは。私席もどるね。』
そう言うとそそくさと佐伯は自分の友達のいる席に戻っていった。
というかあの反応、まさかだと思うが本気で俺なんかが好きなのか?
『蓮、ごめん。聞かなかったことにするわ。いやマジで完全に間違えたわ。』
湊が申し訳なさそうな顔で俺に謝る。こいつは調子者だが、根は真面目だ。こういう風になると罪悪感を感じて謝ってくる。
『まあ、なんかの間違えだろ流石に。』
『いやあ…あの感じ間違えじゃないような…』
湊が気まずそうにそう言った。
まあ俺にもそういう風には見えたが。
明日からどうやって佐伯に顔を合わせればいいんだと少し不安になりながら、優斗と竜也が待つ席へ戻った。
席に戻ると湊はこのことを言わずに、いつも通りの話をしながら時が過ぎた。暫くして退店時間が来たので俺たちは店を出た。
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