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クラスに入り、自分の席に向かう。俺の席は教室入ってすぐの後ろの席。先生の目を盗んで寝ることもできる最高の席だ。
『ふう…』
一息ついて席に座り、カバンを机のフックにかける。自転車で飛ばした代償は大きく、全身に脱力感がある。
『おはよ、蓮。』
前の席の女生徒はそういうと、こちらを向く。俺のクラスメートであり幼馴染の栄田綾はこちらを呆れた様子で見つめてくる。
『なんだよその顔。』
『ミナちゃんからLINEきてたわよ。また遅刻しそうになったそうじゃない。朝ごはんまた食べてくれなかったて文句言ってたわよ』
綾は俺とは昔から家族ぐるみの仲であり、俺の妹ともかなり仲が良く、よくLINEでメッセージのやり取りをしている。もっとも、こう言う情報を流されるのは俺にとっては迷惑でしかないのだが。
『全く…情報共有はほどほどにしてくれ…』
『はいはい。ミナちゃんに言ってねそれ』
そういうと綾は前を向き直す。
時刻は8:30、そろそろ朝のホームルームが始まる。
そう思ってる矢先、教室のドアが開いた。
『ほれ、ホームルームはじめるぞー』
俺たちの担任石田信之が、クラスをなだめるようにそう口にすると、それまでまばらに散っていた生徒達が自分の席に戻っていった。10秒程度で全員が席に座る。
『えー今日の連絡事項だが、各実行委員を五限のロングホームルームで決めるから、やりたいものが決まってないやつはきめといてくれ。以上。』
俺たちの高校も例に漏れず各実行委員が存在する。体育祭や文化祭、合唱祭など、それぞれの行事の実行委員を各クラスから選出する。無論そんなものは面倒くさいからできればやりたくないのだが。
『ちょっとあんた、なんかやらないの?』
先生の話が終わると同時に綾がこちらを向いてそう言ってくる。
『決めてないよ。面倒だし。』
『とか言いつつ、いつも結局誰も手あげないようなのやるじゃない。』
綾の言っていることは正しい。中学時代からこういう実行委員決めがあると、いつも手が上がらない時間が生まれる。俺はそういう時間が嫌いだ。実行委員は忙しくなるとは言え、俺は部活にも入っていないので、仕方なく引き受けてしまう。
『ま、成り行きに任せるよ。』
『なんなのよそれ、あ、やりたいのあるなら教えなさいよ!私も同じのやるから』
『お前、今年めちゃくちゃ忙しいって聞いたが…』
綾は陸上部に入っている。既に春の都大会を勝ち上がり、関東大会へ出場を決めているほどの実力者だ。先日そのことを自慢され、めちゃくちゃ忙しいですアピールをされたものだ。
『まあそうね、でも実行委員くらいなら…』
『やめとけ。俺もやるかわからねえし。』
『なによ。わかったわよ。』
そういうと綾はプイッと顔を教壇のほうに向けた。まあ顔はそんな怒っている表情ではないから、別に不機嫌になったわけではないだろう。
少しして、教室入り口から足音が聞こえた。
そして数秒後に引き戸が空いた。
『はーい授業始めますよ〜』
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