炒めてみよう
とりあえず、舞茸にナスを選んだ。
白菜とエリンギとぶなしめじはスープにすることにして、脇によけた。
フライパンにバターを大量投入。
私にとっての大量は20g程度。
10gの倍なのだ。大量だと思う。
200gの長方形のバターを目分量で切り、フライパンに入れて溶けるのを待つ。
とりあえず舞茸。
触るのがためらわれたので、パックを開けて茶色い液体は先に捨てた。煮込んでもいないのにしなっとしていた。
半分フライパンに放り込む。放り込んで菜箸でほぐす。洗っていないことを思い出し、残りは水で洗って放り込む。
すでに嫌な予感しかしなかった。
否、バターは最強、醤油は大発明。これで美味しくならないはずがない。
舞茸がばらされ、フライパンに広がる様子を見て、バターが足りない気がしたので、もう少し切って入れた。おそらく15g程度。私にとって超大量。しかしバターは旨いので私はそれで良い。
弱火にして、それからナスを刻む。
ナスの丸い形を厚さ1㎝くらいに切る。長ナスなので、小さい丸がたくさんできた。白いはずのナスの内側が黒っぽくなっていた。ヤバそうな気はしたが白い部分が多いので、とりあえず刻む。
そして刻みながら、祖母が作ってくれたナスとベーコンの炒め物を思い出した。大好物なのだが、その再現ができない。ナスとベーコンだけのシンプルな作りのはずなのに、食べた瞬間にナスからジューシーな液体が口の中に広がる。その炒め物がどうしても作れない。
そのナスと同じ形にしてみた。内側の黒は見ないことにした。
ただ、その形を見た時、ナスとベーコンの炒め物ができはしないかという、ほのかな希望が過ってしまった。
もしかしてという気持ちを持ちながら、丸いナスをフライパンに放り込む。
舞茸よりもナスの方が多くなった。
油分が足りない気がして、オリーブオイルを入れることにした。
オリーブオイルは健康にいいらしい。
これも目分量。
蓋を開けたオリーブオイルの瓶をフライパンの上に持って行き、細くオイルを出して食材の上を1周させ、なんとなくもう1周させた。
なんとなくである。
煮込む。野菜をしっとりさせたい。
しっとりというか、野菜のしゃきしゃき感がなくなって、キノコと野菜に含まれている水分を外に出してクリーミーな感じにしたい。
自分がここまで野菜を煮込むのは、なんかもうクリーミーというか、野菜が抵抗する気を失わせるくらいにくにゃんとさせたいだけなんじゃないか。『食べられたくなどない』と食材が訴えているかのような硬さを、『どうにでもしてください』と言わんばかりの柔らかさにするために煮込む。
噛んだ瞬間、うまみが口の中に広がる幸福感を味わうため、ただそれだけのために加熱し続けるのではないかと、そんな自分の残酷さを感じながら弱火で煮込み続ける。蓋をして煮込む。
焦がしてはいけない。
さらさらではない、クリーミーな液体を作りつつ、それを蒸発させてはいけない。早く水分がなくなると十分なクリーミーさが失われるため、蓋をして弱火で煮込む。
しかし、そこでついつい欲が出た。
ナスとベーコンの炒め物のナスにするには、肉が入ればいいのではないか。
もう一回冷蔵庫を開け、ベーコンを探すがない。でも焼き豚のスライスが見つかった。
―— 豚だからいいか
と放り込む。
ついでにみつけた地元の手作り餃子屋さんの餃子の皮の切れ端を数枚入れてみた。餃子の切れ端は最近のお気に入りで、これだけを油をしいたフライパンで焼いて食べるのが気に入っている。
軽く揚げた餃子の切れ端を添えて食べるのもいいと思ったが、残念ながらフライパンは使用していたので生のまま加えて加熱することにした。
一皿で炭水化物・タンパク質・野菜が取れるなかなかバランスの良い食事になった気がする。
そして蓋をして、しばらく煮込み、市販のめんつゆを入れ、さらに少し煮込む。
ひたひたを目指していたが、クリーミーな汁がからむところで火を止めた。
クリームなフィットチーネのような外見になった。
、お気に入りの深皿によそうと、なかなか美味しそうな物ができた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます