冷蔵庫で舞茸を見つけた
舞茸はないかと探した。
舞茸があれば、いろいろと誤魔化せる。
舞茸は殺生ができなくてお肉を食べられないお坊さんが探し求めている食材だと聞いた。あまりにも美味しいため、発見できると舞ってしまうほど喜ぶから舞茸と名前がついたらしい。
こういう逸話は後になって実は違っていましたということが多い。
ネットで調べると面倒くさいことになるから調べない。
そもそも、生き物を食べてはいけないのなら、野菜は生きてはいないのか。キノコは菌類だから良いのか。あれらも命ではないのか。
動物は他者の命を食さなければ生きてはいけない。
植物は光合成ができる。光合成は水と空気に太陽光が当たればでんぷんが作れるのだ。それをエネルギー源として成長できるのだ。
その植物を草食動物は食して成長するのだ。その草食動物を肉食動物が食するのだ。ひとは植物も動物もキノコも何でも食しているのだ。
なんと罪深い。
食べなければ死ぬということを理由に、それを言い訳に食べるのだ。
偽善ではないか。
という気持ちもないこともないけど結局は食べる。
おいしいから。
香りは松茸がよくて味はシメジがよくて、それよりも舞茸は美味しいのだと聞いたことがあるけれど、スーパーで100円で売っている舞茸は違うように思う。
もしかすると、お坊さんが舞う程おいしい舞茸は、違う舞茸なのかもしれない。
テレビを観ていると究極だのなんだのとすごく面倒くさいことを言っていることがある。
私はふつーなので、舞茸にバター醤油で満足なのである。
100円のキノコだってバターに醤油をかければ美味しくなる。
舞茸がみつかれば、全てが丸く収まるのだ。
そして見つけた舞茸は、野菜室の奥で忘れられていた舞茸だった。
発見を喜び、少し横にしたとき、透明なパックに茶色い液体が見えた。
いいや、ギリで大丈夫。
自分にそう言い聞かせた。
捨ててはいけないのだ。
食べるために手に入れた物は、お腹に入れて自分の血となり骨とせねばならないのだ。
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