第二章

第19話 本日はお足元の悪い中……

 緊張で手に持っている『水指』が僅かに震える。


 襖を一つ隔てた先にはすでにお客さんが席に着いていて、席が始まるのを今か今かと待っている。


 緊張する。本当に自分で大丈夫なのだろうか。さっき一度は彼女の声で落ち着いた気持ちが再び緊張し始めてきた。


 頭が真っ白になる。今まで練習してきた内容が飛んでしまいそうだ。悪いイメージは自分の中で加速していく。


 怖い怖い怖い……。


 緊張が頂点に達する直前だった。


 そこへ、彼女が優しくこちらの肩に手をかけた。




「大丈夫だ、相棒。Take it easy. すべて上手くいくさ、なんでか分かるか?」




 いつも変わらない彼女。だからだろう、こんなにも自分を容易く落ち着かせてくれるのは。


 そしてその目には絶対の自信があり、こっちの心を満たしてくれる。


 ああ、彼女の相棒で良かったと心から再確認した。




「私たちが最高で相思相愛の最強パートナーだからだよ!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る