第10話 幽霊とラリアットと犯罪教唆
この状況を改めて整理しよう。
時はこのアパートへの特攻をする前にスマホをポケットから取り出した所に戻る。
この状況を打破できる可能性を考える。恐らく一人では無理である。ならば他の人物の協力が必要だ。けれども他の人を巻き込んでもいいかと考える。
……改めて考えると、一人だけ丁度いい人物が思い浮かぶ。
桜ノ宮撫子。
悪友であり、親友であり、何かあれば連絡してくれと言われている仲である。
そして、同じアパートの住人同士でもある。
もうあの正体不明Xがアパートまで来ているんだ。ならばすでにアパートの住人も巻き込まれていると考えていいだろう。むしろ教えてあげないのは後々問題になるかもしれない。
それにこのアパートには自分と桜ノ宮しか今は住んでいない。あと4部屋あるが誰もいない。
そう考えると、彼女に連絡をしない方が悪いという判断になった。なので、さっそくメッセージ
を送れるSNSアプリを開き、メッセージを送った。
『今から俺の部屋に今日話した正体不明Xが恐らく攻め込んでく。なんとか対処してくれ。お清め系が効果抜群の予想』
桜ノ宮に今まで依頼したことはどんなことでもNGされたことは無かった。……結果として、自分が期待していたことは達成されなかったとしても。
相手の返事を待たずにスマホをポケットにしまう。するとすぐにスマホが振動したので、返事がきたと確信する。彼女はいつも返信が早い。
人事を尽くして天命を待つ。後はしっかり自分が部屋まで誘導できるかどうかだ。
そうして、予想通り、いや予想以上に上手くおびき寄せ、見事命をつなげられたわけだ。まさか桜ノ宮が技名を叫びながらプロレス技を放ってくるとは思わなかったけど。
「それでどうするよ、アレ」
扉の外で桜ノ宮が謎のXを指さす。流石に確認しなければと思い、部屋から出て扉越しにこっそりXを見てみる事にした。
それはラリアットで吹っ飛ばされてアパートの通路に横たわっていて動かない。服装自体は昨日と同じ真っ白いコートで、よく見るととてもとても高級そうである。それ以外にも背中までありそうな綺麗な黒髪。細くすらっとしている手足。
そう、まるで普通の女の子のような幽霊だった。
……いや、うん、普通に女の子です。
「なぁ、傷害罪と犯罪教唆ってどっちが罪が重たいのかな」
桜ノ宮の言葉にさっきまでとは違う意味で体が動かなくなる。冷や汗が止まらない。
どうなっているんだ、これ。というかどうしよう、これ。
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