第10話 カーリー寺院 インド カルカッタ

 カルカッタにはヒンドゥー教の有名な寺院、カーリー寺院がある。そこでは毎日、何十頭もの山羊が生け贄に捧げられる。

 太鼓の音が寺院の境内でなり響く。3、4メートル四方の柵に人が集まる。

 二本の木の板が立っている。隙間は10~20センチほど。

 山羊が悲鳴を上げる。山羊は前足を背中で固定され、首を木の板の間に据えられる。係りの者がその首の上を金具で固定し、鉈のようなものを振り下ろし、一瞬で山羊の頭と胴を切り離す。あまり血は飛ばない。山羊の胴体は排水口の近くへ放り投げられ、そこで赤い血をどくどくと流す。犬がそれをなめ、人がその血を額に塗る。

 しばらく放置された山羊は係りの者につかまれ、首のないそれはバタバタと暴れながら持ち去られていく。その先は解体所。

 そこでは山羊の内臓を取り出し、皮を剥ぎ、肉を適当な大きさに切り分ける。

 濁った緑色をした内臓(肝臓?)や肌色をした腸がだらりと人の手から下がるのを見た私は、吐き気を抑えながらその光景を眺めた。これしきで吐き気を催すとは我ながら軟弱である。

 山羊の血がその周りにとび、不要部分が犬に放られ、犬がそれを食す。近くまで行けば、その臭いをかぐこともできただろうが、吐く可能性があるのでやめた。

 親にこれを見せられたインド人の子供は、泣きながらこれに近づくことを拒否していた。同感だった。

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