第9話 インド カルカッタの地下鉄

 日本とインドは違う。わかっていたことだった。

 カルカッタにはインド初という地下鉄がある。まぁ、きれいで冷房も効いている。だが、そこにはエスカレーターがある。インド人はそこで詰まるのだ。

 インド人はあまりエスカレーターに慣れていない。

 エスカレーターに乗るとき、その手前で停止し、何度か動くプレートを見送った後に、えいと飛び乗る。早く乗れよ! と私はインド人の後ろで思った。

 降りるときもそれっと飛び降りる。

 これはまぁ、余談。インド人でもスマートにエスカレーターに乗る者もいる。

 私は地下鉄に乗り、エスプラネード駅で降りようとした。ドアが開く。横の奴が動く。降りるのかと思って、ついて行くも、道を封鎖するのみ。

「降りるんだ!」

 私が叫びながら、インド人をかき分けながらドアへ近づく。目の前でドアが閉まりはじめる。

 挟まれば開く。瞬間、そう思った。右手とミネラルウォーターを持った左手をドアへさしのべた。

 ドアは閉まった。

 閉まったままだった。我が右腕とミネラルウォーターをはさんだまま。

 開かないのだ。

 挟まっても。

 私は力を込めて右手と水を引き抜いた。マジですか?

 次の駅で降り、折り返しの電車を待ち、エスプラネードで降りた。

 日本とインドは違う。わかっていたことだった。インドは甘くない。

 カルカッタの地下鉄は挟まれても開きません。気をつけてください。

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