第8話 チューと鳴くやつ

 夜行列車を待つために取った、デイステイの駅付近のガヤーの宿だった。

 本を読んでいると、何かが視界の色のないところで動いた。もう一度。

 よく観察してみると、そこにはチューと鳴いて非常に素早く動くものがいるではないか。

 いわくネズミ。

 チューと無邪気にないて走る。

 うげっ!

 ゴキブリはともかく、ネズミはやめようよ。どうしたものか思案しているとドアの下の隙間から出ていってくれた。

 しかし、なんども部屋を走り回る。室内にある洗面所の下の排水口のフタがはずれている。そこからネズミは出てきた。まず、そこを排水口のフタでふさぐ。

 つぎにバスルーム。バスルームの排水口はフタもなく、がら空き。これはバケツに水を入れて上に置いてふさいだ。

 問題はドアの下の隙間だった。私は考えて、靴と紙でそれをふさぎ、ゴミ箱で紙をおさえ、隙間はトイレットペーパーで塞ぐことにした。

 これでようやくチューと鳴くやつは部屋を走り回ることが無くなったのだった。

 うーむ、恐るべしインドの安宿。

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