第11話 再びの敵と
ロボットたちはいつも通りトウモロコシ畑を荒らしていた。巨人兵士の姿は見えない。まだ遠いのか、それとも……。
その時、突然ロボットたちが動き出した。まるで統率された軍隊のように、一斉にこちらに向かってくる。
まずいな。俺は念動力で先頭の農薬散布機を破壊した。農薬散布機はその名前のままの用途で作られている。自分で敵を判断して毒ガスを撒くロボットの恐ろしさを、旧時代の人間は知らなかったのだろうか。
巨人兵士が姿を見せた。俺には見向きもしない。
やはりか。
俺は巨人の頭部を目掛けて先ほど壊した農薬散布機を投げつけた。
「これでもくらえ! 」
見事に命中したが、巨人兵士は倒れなかった。クソッ、やっぱりダメなのか。
俺は巨人兵士の背中に飛び乗ると、その首筋から金属片を突き立てた。巨人兵士は暴れたが必死で食らいつく。プログラムさえいかれさせればいいんだ。俺の企みは成功した。巨人が動かなくなったことを確認してから俺は地面に降りた。そして倒れたまま動かない巨人を見つめる。感慨も何もなかった。少しだけ安心した。
これで終わりだといいのだが。まだ班員を一人も見つけていない。
俺は森の中に入っていった。ロボットどもはしつこく追いかけてくる。かなりの数を倒したが、右腕を折られてしまった。俺が生きている限り、何度だって立ち上がってやる。しばらく進むと、木陰でうずくまっている少年を見つけた。俺は急いで駆け寄って声をかけたが、すでに死んでいた。一六だった。
悲しんでいる暇はない。俺は先を急いだ。かなり奥まできたところで、俺は奇妙な光景を見た。ロボットの残骸が転がっているのだ。それも一体ではない。十体以上はある。どういうことだ。まさか、班員がやったというのか。俺は班員を探すことにした。こんなに元気ならまだ生きているかもしれない。
俺は希望を持って進んだ。しかし、班員を見つけることはできなかった。俺は針葉樹の林を抜けて、班員を探し回った。すると岩陰で倒れている人影を発見した。俺は慌てて近づいた。三人死んでいる。あと六人、レーイチの死体はまだない。頼む、生きていてくれ。
俺は班員を探して走った。生きている班員もレーイチも見つからなかった。
「レーイチ! どこだ! 」
叫んでも届かないことはわかっている。テレパス、テレパスが使えたら。その時、背後に気配を感じた。
振り向くと、そこには巨人兵士がいた。俺は咄嵯に構えたが、その前に吹き飛ばされた。地面を鞠のように転がり、大木に当たって止まる。俺は意識を失いかけた。
「や、ば」
すでに折れた右腕の痛みが今さら俺を苦しめる。駄目だ……このままじゃ、また……。頭の中で警告が鳴り響く。まだだ。まだ終わらない。……こんな事を続けてたら、俺は本当に壊れちまう。決着をつけなきゃいけない。
俺は死にたくない。
力を振り絞ったが、大木に押し付けられ、身動きがとれない。
「やめろ! は、離せっ! 」
目の前のデカブツを押し退けようともがくが、胴体を強く掴まれ、振りほどく事は出来なかった。悔しさに、唇が歪む。抵抗を続ける俺を頭部のないロボットが押さえつけていた。すぐにでも殺せるだろうに、そうはしないらしい。舐めやがって。なんでそんなことできるんだ。こっちは、こっちは、こんなに辛い思いをしているっていうのに。
半分は八つ当たりでロボットを叩いてみたが、ロボットは軽々と俺を持ち上げ、どこかへと持ち去ろうとする。あぁ、もういいよ。どうせ死ぬんだろ? 諦めて目を閉じた時、俺は気がついた。そうだ、思い出したぞ。
初めて俺と二二の間でテレパスができた時も、こういうピンチの時だった。今だって、もしかしたら……。ダメでもともと、俺はレーイチに話しかける。
『レーイチ、生きてる? 』
しばらくして、目蓋の裏に空が映った。レーイチの見ている景色だ。テレパスはある程度の身体感覚を共有する。
『レーイチ』
足が痛い。レーイチは足を怪我しているのか。今どこにいる?
『レーイチ! 』
『……ニコ? 』
『レーイチ!! 』
レーイチは、生きていた。
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