第54話 バフ効果
プワアァァ~~~~~~~ンッ!
『終~~~~~~~了~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!』
部屋の中に、謎の男性の声が響き渡った。
目の前の空間に、半透明の文字板が現れる。
『12ターム(時間)が経過して【ご宿泊】時間が終了いたしました。お忘れもののないよう、お気をつけてご退出ください』
「――行くよ、メア」
「はい!」
僕らは覚悟を決めて、部屋のドアを開いた。
◆
ドアの外はもちろん『修練のダンジョン』、戦場のど真ん中だった。
「ん~? オヤ、お早いお戻りデスね」
僕とメアは、あらかじめ取るべき行動を決めていた。それは、たとえどんな状況を目の当たりにしても、狼狽えずに行動できるようにするためだ。
しかし、たった今視界に飛び込んできた光景は、僕の頭から一瞬で理性を失わせるほど、強烈なものだった。
天井近くまで上半身を伸び上がらせたスライム娘。その膨れた半透明の体内には、ティアナが取り込まれて浮かんでいた。その瞳は閉じられ、口は力なく開かれている。そして、光の加減ではっきりとは見えないものの、衣服はほぼすべて溶かされてしまっているようだった。そのため、身体のあちこちが傷だらけなのが見て取れる。
「ティアナっ!? オマエ、よくも……っ!」
「ルクス様、ダメです! 冷静になってください!」
怒りに我を忘れそうになった僕の腕を、隣にいたメアが強く掴む。
冷静さを失ったら、僕らに残された道は敗北だけだ。そう心に刻んでいたはずなのに、あっさり頭に血が上ってしまっていた。メアのおかげで、なんとか持ち直す。
「どうです? ボロボロにされた仲魔の姿は。ジワジワ痛めつけた後、呑み込んでやったんデスよ。――ああ、気を失ってますが、まだ生きてますから安心してクダサイ? 肺に空気を送ってやってマスから、窒息もしていませんヨ。テケリ・リ! いい表情ですネ。怒ってマス?」
「おかげ様でね……っ」
「テケリ・リ! テケリ・リ! これでも私、我慢して待ってたんですヨ? あなたたちが戻ってくるのヲ。こいつをグズグズに犯してやるのは、やっぱりあなたたちの目の前でなくちゃッテ。犯して犯して犯しまくって、そのあと消化してやるところを、ジックリ見せつけてやらなくっちゃッテ!」
スライム娘はケラケラと嗤う。
僕は手のひらを、血が吹き出るほどキツく握りしめながら、それでもなんとか、計画を実行する。
「【鑑定】っ!!」
僕自身とメアのことを【鑑定】する。『ルーム』によるバフ効果の影響を確認するためだ。
ここにすべてが懸かっている。どうだ、イケるか!?
「えっ!? こ、これは――!」
「ルクス様⁉」
表示されたステータスの値に、僕は思わず目を見張った。
名前:ルクス・ヴァーンズ
性別/年齢:男/18歳
職業:『色欲』のダンジョン・『不夜城 ファイト一発🖤』マスター
レベル:8
HP:21
MP:29
BP:29→290 ←Buffer!
装備:布の服
魔剣『ディザイア』(覚醒2) ←Buffer!
『凪のトランクス』
セーブの腕輪
スキル:『ルーム』
『(斬撃1)』←Buffer!
『(斬撃2)』←Buffer!
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