第38話 恥辱
翌日、僕らは装備を整えて『ラッキースケベの洞窟』を再訪した。
地下二階。昨日は謎の粘液でツルツル滑る足場に苦戦を強いられたが、今日は『スパイクの付いた靴』がある。
「おおっ! スパイクのおかげで全然滑らないぞ!」
「そうね! これなら昨日みたいな無様はさらさないわ!」
「ヨーシ! ガンバります!」
靴の効果に、三人ともテンションが上がっていると、さっそく敵が現れた。ピンクスライムにワーム、それに大ナメクジ。奇しくも昨日遭遇した群れと同じ顔ぶれだった。まさにリベンジマッチ。
「よく現れてくれたわ……。ピンクスライムは私ひとりで倒すから、ワームと大ナメクジはルクスとメアのふたりでお願い! メア、『幻惑』でナメクジを足止めして! ルクスは魔剣でワームを速攻、メアに合流してナメクジも倒しなさい! イケルわね?」
「オーケー!」
「まかせてください!」
僕とメアに指示を出したティアナは、さっそくスライムのもとへと駆けていく。メアも落ち着いて距離をとりつつ、大ナメクジを足止めしてくれているみたいだ。僕も負けてられないぞ。さっそく魔剣を発動だ!
「よっ……! ……アレ?」
頭の中に、昨日のティアナとメアのエロい姿を思い浮かべて下半身を興奮状態に導く。それに呼応して魔剣が伸び……ない?
「おかしいな……。よっ! ハッ!」
色々試すも魔剣はうんともすんとも言わない。何故だ。原理は昨夜、完璧に解明したはずなのに。……昨夜……あれ? そういえば寝る前に僕、何か変なこと考えてたな……。
『なにかカッコいい合言葉を言うことで、間をもたせつつ、同時にカッコつけることもできるぞ。まさに一石二鳥じゃないか』
『僕自身が『勃つ』のと、魔剣が『立つ』のを引っかけて、『勃ち上がれ、ディザイア!』はどうかな?』
カアァァァ!
何言っちゃってんの恥ずかしい! そんな恥ずかしいこと言えるわけないじゃん! ……でも待てよ、まさか本当に合言葉を言わないと発動しない設定になっちゃったんじゃないだろうな?
『新たな魔剣解放コード、取得。コードの変更は、持ち主が変わるまで受け付けられません』
僕の疑念に答えるかのように、魔剣に光る文字が浮かび上がる。えーマジですかー?
「と、とにかく、発動してくれないと困るんだよなあ……。せめて小声じゃダメかな?(た、勃ち上がれ、ディザイア……)」
ボソッとつぶやくも、反応なし。
「た、勃ち上がれ、ディザイアー」
普通の話し声で言っても、反応なし。
「あーもう、わかったよ! 言えばいいんでしょ、言えば! 『勃ち上がれ! ディザイア!!!!』」
僕がヤケクソになって叫ぶと、その瞬間、魔剣は黒い光となってワーム本体を刺し貫いた。その後、大ナメクジも袈裟懸けで両断。あっという間の決着となった。
「毎回、発動させる度にこれを言わなきゃいけないのか……」
僕が呆然としていると、背後から肩を叩かれる。
「やったわね! 何よ、『立ち上がれ、ディザイア!』って。魔剣発動の呪文かなにか? いいじゃない」
「『立ち上がれ、ディザイア!』って、カッコいいです、ルクス様!」
ティアナとメアが口々に誉めてくれるのが、返って恥ずかしさを助長させる。
ゴメン、夜中の妙なテンションで考えた、実に下世話な駄洒落呪文なんです!
僕はこのことを、墓の下まで持って行こうと密かに心に誓ったのだった。
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