第12話 魔剣『ディザイア』
突然のアクシデントをなんとかやりすごし、僕は安堵から、ソファにぐったりと沈み込んでいた。
まったくひどい目にあった。この黒い板、『遠くの出来事を映し出せる仕掛け』だったなんて……。でも、使いようによっては、なにかの役に立つかもしれないな。なにより面白そうだし。
それにしても、毎回『遠くの出来事を映し出せる仕掛け』と言うのは面倒くさいな。なにかいい呼び方はないものか。
そういえば、さっき映った女性、かなりの美女だったうえに特徴的な髪型してたな。まさに時代の先を行く最先端の髪型……、最先端……、トレンディ(流行の最先端)な……、美女、びじょ、ヴィジョ……。――そうだ! 今後は『T(トレンディな)V(ヴィジョが映った不思議な仕掛け)』ということで、『TV』と呼ぼう!
……などど、ぼんやりとした頭が勝手に妙なネーミングをするにまかせていた僕だったが、TVの置かれている棚に付いている両開きの扉が、かすかに開いているのに気づいた。あそこは、まだ調べてなかったな。
僕はおもむろに立ち上がると、扉に手をかけ全開にする。
中にはなんと、『宝箱』が入っていた。
「なんか、はじめてダンジョンらしい展開!!!!」
喜び勇んで宝箱を開けると、中からまばゆい光があふれ出た。思わず目を細める。光の波はゆっくりと引いていき、やがて消えていった。
「こ、これは……⁉」
覗き込んだ宝箱の中には、『羊皮紙のロール(巻物)』と『トランクス(下着)』、それと『一振りのナイフ』が入っていた。
「……。どういう組み合わせ!?」
僕は思わず虚空に向けてツッコンでいた。
◆
『トランクス』は、どこにでもある普通の男性用下着だった。ただ、白地に小さいピンクのハートが散りばめられた柄で、見るからに恥ずかしい代物だった。
まあ、誰のものともわからないので、万が一にも僕が履くことなんてあり得ないが。――ん? 今、なんかフラグ立った?
やはり目を引いたのは『一振りのナイフ』だった。夜の闇を集めて造ったがごとく真っ黒な、流線型の刀身。そこに、精緻な銀細工の意匠が施されている。
ナイフそれ自体が、‘’斬る‘’という強い意思の塊のようで、掴もうと手を伸ばすだけで「切り刻まれるのでは」という恐怖を見る者に与える、そんな存在感を周囲に放っていた。
さて、残るは『羊皮紙のロール(巻物)』だ。
僕は、「ナイフはもちろんなんだけど、あのトランクスについても、何か説明されていますよーに」と、かすかな願いを込めてロールを開いた。
えーっと、なになに……?
◇
この『×××しないと出られない部屋』に入り、これを読んでいることは、そなたこそ『色欲』の権能を継ぐ者であるという証拠だろう。
よくぞ来た、我が末裔よ。
此処に【魔剣『ディザイア』】と【『凪のトランクス』】を遺す。
そなたの助けとなることを願って。
『色欲』のラグニアが記す
◇
ラグニア・ヴァーンズ。名前だけは知っている。僕の曾祖父にあたる人物だ。
彼が、子孫である僕のために、これらを遺してくれたことはわかった。
このナイフは、小さいが『魔剣』なのか。魔剣は大概、普通の剣にはない恐るべき切れ味を有している。また、稀に特殊な効果を発揮したりするので、後で色々試してみたい。
下着の方は『凪のトランクス』というのか。名前の他に説明なし。まさかご先祖様のお古じゃないだろうな。
色々遺してくれるのはありがたいんだけど、説明書をつけてくれない辺りが微妙に不親切です、ご先祖様。というべきか、『×××しないと出られない部屋』について説明プリーズ!
再度、虚空に向けてツッコみを入れる僕の背後で、風呂場に通じるドアが静かに開いた。
◆現在のステータス
名前:ルクス・ヴァーンズ
性別/年齢:男/18歳
職業:『色欲』のダンジョン・『不夜城 ファイト一発🖤』マスター
レベル:5
HP:15
MP:20
BP:8
装備:布の服、魔剣『ディザイア』、『凪のトランクス』←New!
スキル:『ルーム』
★★★ 次回 ★★★
『第13話 彼女の決意』、お楽しみに!
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