第11話 少年はひとり、彼女の風呂上がりを待つ。
しばらくして、風呂場の方からお湯の流れる音が聞こえてきた。
きっと、さっき見たロープみたいなのからお湯を出して、身体に浴びているのだろう。
身体。
えーっと、カラダ。
服を着て風呂に入る人間はいない。となると、きっと脱衣所で服を脱いだんだろうな。
今日、ティアナが着ていた服は、彼女のツインテールにまとめられたワインレッド色の美しい髪が映える、清楚な白いシャツ。首もとには、家紋のブローチがあしらわれた赤いロープタイ。下はミニスカートにニーソックスという、俗に言う絶対領域発生仕様だった。
それらをすべて脱ぎ捨てて、今はまさに‘’
で、もしかしたらもうじき、妄想のままの姿の彼女を、直に見ることができるかもしれないんだよな……。
ゴロン! ゴロン!
じっとしていられず、無意識のうちにベッドの上を転げ回ってしまう。
『いかんいかん、落ち着け、僕!』
『落ち着けるわけねーダロ! これからあんな美少女と×××するかもしれないんダゾ?
『ええい、だからこそがっついたところを見せたくないって言ってんだ! クールだ、クールになれ、ルクス・ヴァーンズ!』
頭の中では天使と悪魔の
このままじゃダメだ。ティアナにも約束しちゃったし、とりあえず部屋の中を探って脱出のための情報収集をしよう。それで結果、「やっぱり×××するしか方法はないみたいだよ、ハハハハー!」ってことになれば、大手を振って×××できるってもんダシナ。だまれ悪魔。人のモノローグに勝手に割り込んでくるな。
◆
とりあえず、例のドアのプレートから調べてみるか。
ここは『×××しないと出られない部屋』です。
縺ェ縺溘↑繧医�縺ッ縺イ縺ェ繧�d縺ッ諱千クョ驍」隕�クゅ↓縺セ縺ェ……
――ん? おや? さっき読んだ文の後ろに、何か書いてあるぞ。
でもおかしいな、ふつうの文字で書かれているはずなのに『読めない』。正確には、『読んでも、頭の中で言葉が意味を結ばない』という感じか。
なんか気持ち悪いな。認識
こういう仕掛けは、なんらかの条件を満たすか、一定のレベルにまで上がるかすると、『解除』されて読めるようになるものだって、なんかの本に書いてあったな。
気になるけど、今はそっとしておくしかないか。
この部屋にも、他の部屋と同じく、ソファの向かいの棚に『謎の黒い板』が立っていた。これはいったい何なんだろう。
黒い板を眺めながら、ソファに腰かけてみる。目の前にはガラスのテーブルが置かれており、その上に、手のひらくらいの大きさの、細長くて薄い黒い板が乗っていた。その板にはたくさんの突起が付いている。
何の気なしに、僕はその中の赤い色の突起を押してみた。
その瞬間。
『あーー!!! アッ、アッ、アッ! イクイクイクイクーー!!!!』
突如、女の絶叫が室内に響き渡った。今までただの黒い板だったものに、裸の男女がくんずぼぐれつしている、とんでもない様子が映し出される。
あまりに予想外な出来事に、僕はソファから飛び上がってそのまま落下し、床に尻餅をついた。
「な? な? な……?」
『奥さん、どうなんですか? 旦那さんのより、僕のがいいんですか? 正直に言ってくださいよ、ほらほら!』
『サブちゃん! やめてサブちゃん!』
なんだこれ! ただの黒い板かと思ったら、
どこかでまぐわっている男女を、ここでこうして覗き見していた奴がいた、ということなんだろうか。――それにしても。
『ほらほら奥さん、ご注文は? ご注文はありませんか?』
『アッ、アッ、アッ! じゃ…じゃあ、ビール一箱お願いしますぅ!!!』
『毎度! ほらほら毎度毎度ぉぉ!』
激しい、激しすぎるよ! 声! 声抑えて! いくらドアがあるからって、風呂場にいるティアナにまで聞こえちゃ
「――ルクスー? 部屋に誰かいるの? ひょっとしてドア開いたのー?」
僕は大慌てで赤い突起を押す。運良く黒い板は沈黙した。部屋は静寂を取り戻す。
「違うから! 僕がひとりで騒いでただけだから! 『奥さん! 奥さん!』 ほら、僕だから!」
「何よ、まぎらわしいわね! それと、その口調気持ち悪いから、今後一生やめなさいよね!!!!」
ティアナの怒鳴り声が去った後、僕は床にへたりこんだまま、大きなため息をついた。
元凶である、突起の付いた小さな黒い板は、枕の下に隠しておくことにした。
やれやれ……。
★★★ 次回 ★★★
『第12話 魔剣『ディザイア』』
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