第4話
会議室が騒がしい。
騒がしいというか、、楽しそうというか、、
その声達の中に聞き馴染みが。。
会議室を覗くようにゆっくり近づくと
「あっ!◯◯さん!お疲れ様です!」
その聞き馴染みのある声の主は、普段とは比べものにならないくらいハキハキとした爽やかな声で私の顔を見るなり、言いながら近づいてきた。
皆を背にして、彼は私の前に立った。
私は、声が出せなかった…出してしまったら泣いてしまいそうだった。
「◯◯さん、、、」
私にしか聞こえないくらいの小さな声で彼は私の名前を呼んだ。
グッと涙腺の扉に力を入れ、私は見上げた。
彼は、、なんとも言えない顔をして私を見ていた。切ないような、、辛いような、、
「 」
彼が何か発しようと口を動かしたのと同時に、ご満悦のお偉い様が彼に話しかけてきた。
彼の肩を叩きながら、満面の笑み。
“あぁ、、やはりそうゆうことか、、”
その後は“私がちゃんと引き継ぎせずに申し訳ありません”と彼からの謝罪から始まり、滞りなく、終始穏やかに終了した。
玄関口まで見送りされると、彼は誰かに呼び止められたので、私は“よかった”と心の中で呟き「私はこれで失礼致します」と頭を下げて、会社を後にした。
駅に向かい歩き始めると電話が鳴った。
「お疲れ様!どうだった、プレゼンは⁈」
「あぁ、、その、、」
上司からの電話に何と答えたらいいか言葉を濁していると、
「“お守り”忘れたんだって?どーしても持ってなきゃダメなものを忘れるなんて、、相変わらずだなぁ〜もっと落ち着いてな!」
なるほど、、そんな強引なウソで来たのか、、
まぁ、今は電子で何でもクリック一つで手元にくるわけで、“物”の忘れ物で、届けるくらいすぐに必要になるものなんて難しい。
“お守り”と言われた上司も分かった上で許可してくれたんだろうな、、
“すみません、慌ててしまって”
と普段の明るい調子で話を合わせ、“今日はお疲れ様。もう終わり‼︎早く休みな〜”と言われ、優しい上司や会社に転職したな、、と顔が綻んだが、電話を切り二歩三歩と歩き始めると虚しさ、情けなさ、、自分に期待していたわけではないが、、
底なし沼に沈みたい気分だった。
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