第5話  欠点を補うこと

 劉備が帰還すると、陣営内は揉めに揉めていた。


蔡瑁さいぼうを殺すか殺さないか』


 要するに


『やり返すのか、やり返さないのか』


 その一点に絞られての会議が行われていた。

 ところへ劉備が帰ってきたモノだから、即座に主導権・・・もとい、決定権が彼に移った。

 そして結論は・・・


『何もしない』


 これ以上、事を荒立てるべきではないとのことであった。

 恐らく、蔡瑁の主である劉表に告げれば、もしかしたら蔡瑁を亡き者にすることが出来たかもしれない。

 しかし、・・・である。

『かもしれない運転は止めた方がいいかもしれない』との矛盾格言があるが、今回はこれがバッチシ当てはまるだろう。


 もし亡き者に出来ず、蔡瑁と争うことになれば、それは自分たちの滅亡を意味する。


『彼には勝てるかもしれない、しかし、その後どうするのか?』


 水鏡先生より学んだこと。それは『知』である。

 武で勝てても、その後どうするのか?

 それを乗り切るための知恵が彼らには不足しているのだ。

 それにだ。自身の名誉にも関わる。

 世話になっている領土で揉め事など言語道断。

 そんなことはチンだ。チン〇ンなのだ。

 故に劉備は部下たちを制して時期を待つことにしたのであった。


 その結果・・・『よし』が起きた。


 水鏡先生の紹介により、単福たんふくという男が劉備の下を訪ねて来たのである。

 早速、劉備は単福と面会し、彼に現状と今後を相談してみた。

 彼と話をすればするほど、自分たちの欠点が浮き彫りになる。


(実に素晴らしい・・・これが『知』か!!!)


 劉備は単福をいたく気に入り、紹介してくれた水鏡先生に礼の手紙を送ると、自身の軍を指揮する重要ポジションに彼を据えたのであった。


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