文化の差
「クリスマスパーティー……楽しそう!」
学校へ向かう道中、偶然シャルローゼさんと会った。色々と話す中で、例のクリスマスパーティーの話になった。
「アストロフォールではクリスマスパーティーって開くの?」
と紗也が尋ねる。
「そうですね……。一応、ヨーロッパですし、クリスマスを盛大に祝う家庭もあります。けど、アストロフォールに深く根付く家系だと、祝わない家庭が多いですね。我々アストロフォール家も祝わないですし」
「え、そうなんだ」「それは一体何故?」
宗教的な話はあまり深く聞くべきではないか? でも、含みのあるような言い方をされてはどうしても気になってしまう。
「建前上は『他の宗教を信仰する人と争わないため、一つの宗教に固執しないようにしている』とされていますが……。本当は『魔女狩りを行う教会勢力は
「「なるほど。凄い納得」」
身近な所にその原因があった。なるほど、アストロフォールの歴史を語るうえで、魔法使いは無くてはならない存在。そんな大事な存在を弾圧した教会やその他の人々は、アストロフォール国民の敵という訳か。
もちろん、どんな文化にも暗くてドロドロした歴史は存在する訳で、教会が悪い物とは思わない。逆に、教会を悪とみなす、アストロフォールが悪いとも思わない。あくまで俺達は中立であるべきだ。
「じゃあ、この時期、あちこちでクリスマスイベントをしているのを見ると、嫌な気分になる?」
「それは無いですかね。日本では宗教は関係なく、イベントを楽しんでいます。慣習なんかのドロドロした部分を取り除いて、『楽しもうぜ!』って部分だけを抽出。良いと思います。そして、その国民性は凄いと思います」
「なるほど、それなら良かった」
「そう考えると、日本って不思議な国よね。クリスマスを祝ったその一週間後には神社へ初詣してる訳だし」
「そうですよね! そっか、クリスマスパーティーですか……せっかく日本にいるんだし、『宗教関係なく祝うクリスマス』って言うのを味わってみようかな」
「いいんじゃない? きっと面白いよ!」
「そうだな。あ、それなら俺達の家で開くパーティーに一緒に参加しない? 魔法使いのクリスマスパーティー的な?」
「あ、それ面白いですね! 是非参加したいです!」
◆
「うーむ……」
家に帰った俺は、リビングで唸っていた。とそこへ姉さん帰ってきた。
「何を悩んでいるのだ、和也?」
「魔法使いらしいクリスマスパーティーってどんなだと思う?」
「はあ?」
姉さんに、シャルローゼさんもクリスマスパーティーに招待した事、魔法使いらしいクリスマスパーティーにしたい事を説明する。
「難しいな……。霊魂珠が沢山あれば、魔法で動くデコレーションとか作れそうだけどなあ」
「だよなあ。魔法を使ったゲームで遊ぶとか?」
今まで魔法を使った遊びと言えば、「海で水合戦」や「祖父ちゃんの家の庭で的を狙って撃つ」といった屋外でする物ばかりだった。この機会に、屋内ゲームを考案したら面白いかもしれない。といった事を姉さんに説明する。
「なるほどなあ。屋内となれば、どれだけ精密に魔法をコントロールできるかを勝負する感じになるだろうか?」
「ああ、そんなイメージ。何かアイデア無い?」
「そう言われてもなあ……。水球を操作するイライラ棒とか?」
「単純だけど面白いかもな。水が当ったら反応するようなシステムって簡単に作れるのか?」
「出来る出来る。早速作って遊んでみようか」
針金を薄い紙で覆ったものを二つ用意した姉さん。二本をよじって、一つの某が出来た。
「なるほど。水が付いたら紙が湿って金属棒の間に電気が流れるって仕組みか」
「正解」
「でも、水ってほとんど電気を通さないよな? 検出できる物なのか?」
食塩水は水を通すが、真水はほとんど電気を通さない……と俺は習った。文系だから詳しくはないが。
「ああ、大丈夫。電気信号を増幅する素子を使うから。『トランジスタ』って言うんだけど、聞いたこと無いか?」
「うーん……? そういえば、トランジスタラジオって聞いたことあるかも?」
「ラジオか。トランジスタラジオは、受信したラジオ電波をトランジスタを使って増幅するラジオだ」
「なるほどな。ちなみに、紙に塩を含ませるってのはダメなのか? 水が触れたら食塩水が出来て電気が流れる……とか」
「問題はないが、食塩水に電気を流すのはちょっと避けたいかな」
「どうして?」
「電極が錆びるじゃん」
「納得。確かにそうだな」
「という訳で、私は回路を組んでくるから、その間に針金を曲げていい感じのイライラ棒を作っておいてくれ」
「らじゃー!」
針金を思い通りに曲げるのはなかなか大変だ。ペンチなどの工具を使って慎重に曲げる必要がある。だが、あいにく俺にはそんな技術が無いので……
「うまくいけよ……『変形』」
変形の魔法。魔法でイメージした通りに物を物理的に変形させることができる。便利そうに聞こえるかもしれないが、日常生活において物を変形させたいような場面ってペットボトルを捨てるときくらいなので、実はそんなに役には立っていない。
イメージ通りに針金が変形する。コイル状に曲げてトンネルを作ってみたり、狭い輪っかを作ってみたり。遊ぶことをイメージしながら、俺は丁寧にコースを組み立てる。
「お待たせ……おお! なかなか綺麗に組み立てれるじゃないか!」
「変形の魔法を使ったからな」
「なるほどな。じゃあ早速、回路と繋ごうか! ……なあ、和也」
「何?」
「今更だけどさ。変形の魔法を使ってガラス細工製作とかで、十分楽しいんじゃないか?」
「「……」」
「まあ、せっかくだしイライラ棒で遊ぼうぜ!」
「……だな!」
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