第5話 元のカノの結婚
そんなある日、仕事を終えて家に帰ってくると、郵便ポストに結婚式の招待状が届いていた。誰からだろうと見てみると、なんと沙理からだ。
「おいおい、元カレの俺を誘うなよ。俺が元カレだってバラす可能性だってあるのに、何を考えているんだよったく」
俺は、そう思って、お断りの返事を出した。だが、その日から、何となく沙理のことが気にかかった。沙理の結婚相手は誰なんだろうか、沙理とはいつから付き合い始めたのだろうかと。別れて4年ほど過ぎているので、彼女は俺のことをもう忘れているのかもしれないとさえ思っていた。だが、結婚式の招待状を出すぐらいには、覚えていてくれたということだ。嬉しいような、嬉しくないような複雑な感情だった。
それから数日が過ぎ、大学時代の仲の良かったグループのメンバーから電話がかかってきた。そこで、沙理の結婚相手が誰なのかを聞いた。俺たちと同じ大学の陽キャだということを。しかもその男は、会社の社長の息子で、結婚式の参列者も多い。つまり、そいつも俺も、数合わせで呼ばれたものだろうということだった。それを聞いて、俺はようやく納得できた。元カレに、結婚式の招待状を出すなんて、ありえない話だと思っていたからだ。
「沙理が仲良くしていたのは、俺たちのグループだけだったもんな。それで俺も行かないとなると、彼女もみじめな思いをするかもしれないな……」
俺は、お断りの返事を出したものの、何だか悪いことをしたような気がして、数日を過ごした。そして、ある夜、何と数年ぶりに沙理から電話がかかってきた。
「優斗君、久しぶり。元気にしてた?」
「沙理!? どうして急に……」
そう言いながらも、沙理が電話をしてきた理由はわかっていた。
「優斗君からの返事が届いたから……。ねぇ、優斗君。どうしても式には来られないの?」
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