第3話 2人きりの‥
これだけ書けば、俺が1人で沙理の身体を求めていたように取られるかもしれない。だが、それは違う。彼女は俺の写し鏡のような存在で、同じだった。女性だったため、直接的な言葉は言わないし、受け身だったが、俺の全てを受け入れ、そして同じように俺を求めていた。それは実際に愛し合っていた俺だからこそ、言えることだと思う。
そんな関係が1年ほど続き、俺たちは大学2年の夏休みから同棲をすることにした。いくら安いラブホテルを使っているとはいえ、月に3回以上使っているのだ。ラブホテル代もバカにならない。そのお金があるなら、同棲した方がいいと判断した。それに同棲すれば、これまでは週末にしか会えなかったが、毎日一緒にいられる。それは、毎晩抱き合えるということだ。
平日は夜に抱き合い、週末は1日中時間も忘れて抱き合った。だが冬になる頃には、賞味期限が切れたかのように愛が冷めていった。沙理を抱こうと思えなくなったのだ。いつもそこにある肉体。触れなくても、見なくても、どんな形だったかを言えるぐらいに、見慣れてしまった。そしてそれは、沙理も同じ。初めはあんなに情熱的な目で俺を見ていたのに、今はもう空気を見るような目で俺を見ている。いてもいなくてもどちらでもいい、そんな風に思われているのではないかと感じるような目だ。
ただ、これについては、沙理と話をしたわけではないので、全部俺が感じたことに過ぎない。沙理とは、何も話さなくても、全部通じ合える人だと思っていたからだ。気持ちが冷めたのも、きっとお互い同じタイミングのはずだ。
「沙理……別れよう」
「……わかった」
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