第5話

 (※ロバート視点)


 おれたちは店を出て、次の店へ向かっていた。


 先ほどの店の会計は、当然ながらおれが支払った。

 もちろん、それらの荷物を持つのは、おれの仕事だ。

 彼女にこんなたくさんの荷物を持たせるわけにはいかない。


 クレアからもらった今月の金が、さっそく半分以上なくなっている。

 まだ買い物をするみたいだし、大丈夫なのか?

 おれは金の心配をして、少し不安になっていた。

 しかし、支払いを終えた後の彼女の笑顔を思い出すと、そんな悩みも吹き飛んだ。


「さて、それじゃあ次は、このお店よ」


 またおれたちは、店に入った。

 どうしてそんなにゼロがついているんだ、と思うような物ばかりだったが、それらを彼女が身に着けてくれることを想像すると、そんなことは気にもならなくなっていた。


「えっと……、これを試着してみようかな」


 彼女は服を手に取り、さっそく試着室へ向かった。

 おれはその間じっと待っていた。


「ロバート、どう? 似合う?」


 試着室から出てきた彼女が、満面の笑みをおれに向けながら聞いてきた。


「ああ、なんて綺麗なんだ……。本当に、よく似合っている。素敵だと思うよ」


 おれは微笑みながら答えた。

 本当はゼロがもう一つか二つ少なければさらに素敵なのだが、そんなことを口にしてはいけない。

 せっかくの楽しいデートが、台無しになってしまう。

 ただの布がどんなに高くても、そんなことを気にしてはいけない。

 ジーナが身に付ければそれだけの、いや、それ以上の価値があるのだから、むしろ安いと思うべきなのだろう。


「あとはこれと……、あ、これもいいわね……」


 さらに商品を選び続けるジーナを眺めながら、おれは頭の中で大まかな計算をしていた。

 先ほどの店ですでに、大半の金を使ってしまっている。

 今選んでいる商品を、すべて買うことができるのか?


「はい、これで全部よ。会計お願いね」


 彼女に商品を手渡され、おれは会計を始めた。

 さっきざっと値札を見た感じでは、現在の持ち金で、ぎりぎり足りるか足りないかくらいだった。


 ……もし、金が足りなかったらどうする?


 おれは、ごくりとつばを飲み込んだ。

 そんなことになれば最悪だ。

 ジーナに払わすのは論外として、彼女にバレないように、商品をこっそりと棚に戻すか?

 それとも、ツケにしてもらうか?

 いや、こういう店は、そもそもツケなんてできるのか?


 かなり緊張してきた。

 店員が次々と商品を見ながら、合計金額を計算している。

 おれはまだまだ、ジーナとのデートを楽しみたい。


 頼むから、所持金額で収まってくれ……。


「お待たせしました……」


 店員が告げた金額は、ぎりぎり所持金内に収まっていた。

 おれは安堵のため息をついた。


 しかしこのあと、とある悲劇が訪れるのだった……。

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