第4話

 (※ロバート視点)


「ジーナ……、そろそろ来る頃か……」


 現在おれは、待ち合わせ場所でジーナを待っている。

 今日は、彼女とのデートである。


 一応外では、おれたちはベタベタとはしない。

 ただの友人のように振る舞う。

 おれは世間体を気にしているからその方が都合がいいし、ジーナもおれに合わせてくれている。


 あぁ……、おれの人生は、なんて順調なんだ……。


 まさか、ジーナとこの町で再会できるとは思わなかった。

 彼女は何年も前に遠くの街へ行ってしまっていたから、もう一生会えないかと思っていた。

 別に付き合っていたわけではなかったが、彼女ともう会えないと悟った時は、ショックだった。

 そんな時に出会ったのが、クレアだった。


 彼女とは急速に仲が発展して、気付けば婚約をしていた。

 あの頃のおれは確かに、クレアのことを愛していたと思う。

 しかしそれは、もうジーナとは一生会うことはないと思っていたからだ。

 もしまた彼女と会えると分かっていたら、クレアと婚約なんてしなかっただろう。


 ジーナに比べれば、ほかの女なんて、どんなに美しくても霞んでしまう。

 

 それくらい、ジーナの美しさは絶対的だった。

 彼女の美しさは、ほかとは比べ物にならない。

 そんなジーナがこの町に帰って来た時、おれたちは偶然再会した。


 その時は彼女は素っ気なかったが、いろいろと話すうちに打ち解けて、彼女と体を重ねるようになった。

 彼女は、おれにクレアという婚約者がいると知っていたのに、迫ってきた。

 それだけおれのことを、本気で愛してくれているというわけだ。


「おまたせ」


 ジーナが笑顔でやってきた。

 あぁ、今日もなんて美しいんだ……。


「それじゃあ、早速行くか……」


 今日は、二人で買い物をする予定だ。

 彼女と会う時は、買い物をする機会が多い。

 支払いは、もちろんおれだ。

 そうすれば、彼女が嬉しそうな顔をして、喜んでくれるから。


 服やバッグを彼女が選んで、おれが支払う。

 そして、彼女がそれらのものを次のデートで身につけてきてくれると、おれは心から喜んでいた。

 わざわざそれらを選んできてくれる彼女の気遣いや優しさが、本当に嬉しかった。


「えっとね……、私が欲しいのはこれと、あとこれと……」


 店内に入って、彼女が商品を選び始めた。

 おれはそれらを手に取る。

 最終的にすべて会計することになるので、値札を見てみると、ゼロが多いのではないかと思うことも何度かあった。


 しかし、そんなことは些末なことだ。

 これらをすべて買えば、彼女は喜んでくれる。

 そしてそのことが、おれも嬉しい。


 そういえば、再会したばかりの時はそっけなかった彼女の態度が、いつ変わったのか、そのきっかけはなんだったのだろうと、ふと思った。

 確か、おれがクレアと婚約していると聞いた時から、彼女は急に俺に迫ってきて、体を重ねることになったのだ。


 えっと……、ということは、つまり……、なかなか素直になれずツンツンしていたが、婚約者がいると分かったおれにジェラシーを感じて、積極的になったというわけだな。


 なかなか可愛いところがあるじゃないか……。

 おれは一人納得して、どんどん商品を選んでいる彼女を眺めて微笑んでいた。

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