真夜中はつらいよ
「あ〜お腹いっぱい、食べた食べた〜」
「ハンバーグ、どうだった?」
すでに夕食を食べ終えソファに寝っ転がっている俺は満面の笑みを浮かべ、
「すっごく美味しかった!」
「あ、ありがとう///」蒼の頬がちょっと赤くなる。
蒼は洗い物を済ませ、水道をキュッと締めてから台所のタオルで手を拭き、こっちに向かってくる。その仕草一つ一つに愛おしさが感じられる。
くっ、抱きしめたい〜なんか、こうギュってしたい〜
いや、ん~、しかし犯罪になってしまう(ならない)
だめだだめだ、ここは我慢だ。
しかし、どんなに我慢しても、人間は欲望というものには逆らえないようで、
俺は寝っ転がっているソファの空いている部分をポンポンと叩き、
「こっち来な、ほら。」
と、できるだけできるだけ下心を出さないように言う。
「だ〜め、お風呂入ってからね」
さりげなく抱きつこうとしたつもりだったが、すんでのところで蒼の手によって阻止され、あれよあれよというまに風呂場に運ばれた。俺はしぶしぶながら服を脱いで、
ドラム式洗濯機に放り込み、風呂場の扉に手をかける。
ん?
掴んだドアノブに違和感を感じる。
よくよく見ると、扉にかかってあったナニかは、水色の(まだ履いていないと信じたかった)パンツだった。
なんでここにあるんだよ。
見なかったことにできそうにもないので、できるだけ目を背けながら(水色だけはしっかり見たが)洗濯機にそっと入れる。今度こそドアノブを握り、風呂場に入る。
体を洗い終え、勢いよくバスタブへ突っ込む。
バッシャーン
勢いがよすぎたため、噴水のように水が溢れ出す。当然のことながら顔にも水がかかったので、髪をかきあげて顔をフキフキ、そして正面の鏡を見る。
ルックスだけはいいんだよなぁ
いろいろポージングをし、そのルックスとたくましい腹筋を見てふと思う。
こういう自画自賛をしてしまうところからも、自分でも性格は良くないほうだとわかっている。
それでもモテたのは、親が社長であるということと、このイケメン俳優も顔負けのルックスがあったからである。
小学生の時から告白され続け、はや12年。
修学旅行のときには押し倒されたときもあったか。あの時はビビったな。
何しろ夜中に起きたら真横(というかMAJIでKISSする2秒前の距離)に女子がいたんだから。
そんなわけで、俺は数多の女子からの告白を断り続けてきたので、
特殊能力『女子耐性◎』がついた。そんなこんなで、俺の人生は順調そのものと言いたいところだが……
「ちょっと!!いつまで風呂に入っているつもりなの!?」
「えぇ〜もう出るのか?あと5分!」
「だめ!早く出なさい!」
「へいへい……」
シャワーで体を軽く洗い流すと、風呂場を出る。そこには髪をくくって、歯磨き中の蒼がいる。
蒼は 押す・引く とかそういうことではなく、急に何かをされたら戸惑ってしまう性格だ、それなら……
ギュッ!!
「ちょっ!
「いやだった?」
「
歯ブラシを外し、思いっきり俺を突き放す。
ゴホッ
みぞおちは押すのは反則だろ……、
「ちょ、、、そういうのは、もうちょっとあとにして!」
__________________午前2時_______________
暑い、いや厚いというべきか。
翔は今、蒼に絶賛抱きつかれ中だった。
現在の時刻は2時、もちろん 真夜中 の、だ。
風呂に入ってベッドに入ったのは12時、ということは3時間もの間ムギュ〜とされている。前言撤回にも程があるだろ……
蒼は日入体育大学に通っているため、運動神経は翔と勝るとも劣らない。
朝はジョギング、食事はカロリーが計算された食事と、性格とは真反対でしっかりと整った日常だ。
高校はバトミントン部に入っていたというから、バリバリの体育会系女子だったのだろう。
だから、力で振りほどこうにも、それより寝ている蒼のほうが強いのでまたムギュ〜ってされるのは目に見えている。
時は戻って現在、時刻は丑三つ時(午前2時)、一般的には一番妖怪や幽霊が出やすい時刻だが、この状況のままでは、たぶん数十人、いや数百人から呪い殺されること間違いなしだ。お祓いの札でも買っておこうかな。
天井を見上げながら考えを巡らす。いつの間にか、布団は蒼によって排除されていたので少し寒い。
蒼と風呂に入ってそんなに経っていないため、こんな超近距離だといい匂いがわんさか俺の鼻に
昨日もそうだが、見ての通り蒼は寝相がとっっっっても悪い。まだこの生活に慣れてなくてこれなのだから、1ヶ月もすればどうなるかはもう目に見える。
明日にでも寝相を修正させよう……
そう心に決め、抱きつく手を全力でほんの少しほどき(10分経過……)呼吸が十分できるスペースをつくって、身の安全を確保した上で、ようやく俺は眠りについたのだったZzz.
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます