同棲、始めました

 元カノ?と同棲、始めます。

 

 パンを食べているとき、蒼に同棲することを伝えると、まあ別にいいけど、といいつつ、机の下で小さくガッツポーズをしたのを見たのは秘密だ。


 昨日から入っていなかった風呂に入る。マンションだから俺の家の風呂より少し小さいが、それでもマンションの中では、結構でかい方だと思われる。


 ふ~ん、ふんふ~んとシャワーから勢いよく出る水流の音に負けないぐらいの、鼻歌を歌う。


 なんかお風呂って、開放感あるから歌いたくなるよな?

 それで、俺ちょっと上手くね?って思う錯覚に陥ってしまう。


 風呂から出ると、2日目の服を着て外出の準備をする。

 蒼はもう支度が済んでいたようで、布団に身を投じながら漫画を読んでいた。

「翔くん、もう終わった?」


「おう、終わったぞ。」


「ガスよし、電気消した、カギ閉める……よしオッケーだ、さあ行くぞ!」


「行きますかぁ。」

 

 一つあくびをして、蒼とともに大阪の街へ繰り出した。休日の昼頃であるためか、少し人が多いな。


 カラッと晴れた青空には雲一つなく、いい天気だ。


 ふと口に出す、「夏だなぁ。」


「なんで?まだ春だよ?」


「いやいや、もう夏だね。」


 朝の柔らかな日差しと打って変わって、夏のように感じられる日差し。


 後々幸せと思えるのはこんな日なんだろうなと思うと、少しにやけてしまう。


 なぜニヤニヤしてるのか分からず、不思議そうな顔をしている蒼を背に、まずユミクロに足を運ぶ……


 数時間後……

 

「ちょっと!どれだけ買ってるの!?こんなの私の家に置けないよ?」


 どうやら見境なく買った結果、結構な量になってしまたらしい。

 いつのまにか、俺はパンパンに膨らんだ袋を両手でつかんでいる。


 ちょっと持ったげると蒼が言ってくれたので、軽いほうの袋を渡す。


「どうする、じゃあ……引っ越すか。」


「引っ越す!?」


 俺は一応、社長の息子だ。相当な小遣いを両親からもらっているため、使いどころに迷っていたが、今使う時ではないだろうか。


「お前のためだったら、マンションの一つや二つ持ってきてやるよ。」


「いっ、いやいやいや、あかんあかんあかん。」


 一瞬照れて、手をブンブン振りながら必死にやめさせようとする蒼がやっぱり可愛い。


 「冗談だよ、さぁ帰るぞ~」


 「は~い、帰ったらこれの置き場探さなきゃだな~」


 夕日が照らし、ロマンチックになっている橋を歩く。


 手、つなぎてえぇぇぇ~。なに?めっちゃいい雰囲気じゃん、

 これ手つないでいいよね、いいよね?


 あまりのロマンティックさに悶えていると、


「つっっっ///!!!」


 突然、俺の右手が温かく感じる。

 蒼を見ると、耳が少し朱を帯びていた。


 俺はもうまともにしゃべれず、ただただ手をつなぎ、二人で歩く。


 やばい、は、話すことねぇ~、学校どう?とか聞けねぇしな。

 普通に4年ぶりぐらいの再会だし、聞けることはたくさんあるが、なにしろ聞きにくい状況だ。


 誰か、助けて~。


 俺がしばらく会話に困っていると、チリンチリンとベルを鳴らし、自転車が蒼の方に来たので、自然に俺と蒼は近寄る形になった。

 

 「ねぇ。」


 「は、はい。何でしょうか?」


 「本当に私と同棲したいの?」


 蒼が急に俺の目を見てきたので、俺は少し慌ててのけぞる。橋の上で、こんなことをやっているから、逆壁ドンみたいなことになってしまっている。


「お、おう。そうだけど……」


「それじゃあ、私のことまだ好き?」


 どうやら、ていのいい住居乗っ取りだと思われているらしい。

 乗っ取りさせる機会を与えたのはもっとも蒼だが……

 しかし、この質問には自信を持って答えられる。


「うん、好きだ。向こう見ずで、意地っ張りだけど、優しくて、料理も普通に旨かったし、部屋もきれいに整頓されていて……」


「もういい、わかった!」


「え?もういいの?これからが本番なのに。」


「も、もう、わかったから!」


 蒼は怒ったふりをしているが、顔は笑顔で、少し、握る手が強くなる。


「ほら、行くよ!」


 はいはい 

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