元カノ???

    つっっっっっっっっ///!?


 目を開けた瞬間のことは今でも思い出す、俺はナニか、またはナニモノかに抱きしめられていた。

 

 まだ覚めきっていない俺の目に飛び込んできたのは、豊満な……失礼、良いモノだった。

 

 しかしそのモノを顔に押し付けられ、体を動かそうにも、俺の足がヤツの足で羽交い締めにされているため、うかつに動きにくい。


これからどうしたものだろうか?


 5分後……

 よっこいっしょ、んっとしょ

くっそ、抜けない、どう頑張っても抜けない。アリジゴクとタコを合体させたような強さで俺の足を抑えている。


 チッチッチッチッチ、目覚まし時計の秒針が何周したか、わからなくなった頃……

できたできた、ようやく抜けた。悪戦苦闘の末、ようやく足を引き抜いた。


 足が抜け自由になったので姿勢を直す。


 ヤツ、もとい、この女性は誰だ。

そうだ、昨日の人だ……いや待て、昨日は公園で寝たはずでは?

なぜ、ここに俺はいるんだ?


 たしかに昨夜、無意識ながらに、引きづられる感覚はあったが、まさかここまでつれてこせられるとは……


 しかし、蒼に本当にそっくりだな、本人か?


 と、ちょうどその時、横にあった目覚まし時計が爆音でなったので、びっくりして体をのけぞらせてしまい、その誘拐犯に当たる。


 やっべ、起こしてしまった。


 目を何度もこすりながら、ぐ〜っと一伸びすると、昨日の愉快犯は、こちらを向く。


「ん〜、んしょ、翔くん起きたんだ」


「あ、はい」


「朝ごはん今作るからね、ちょっと待ってて〜」


 いや大丈夫ですの声も聞かず、キッチンの方へ行ってしまった。

ここで俺は、大きな疑問にぶち当たることになる。


        翔くん!?


 驚いたのもそのはず、昨夜俺は名前すら言っていなかったはずだし、翔くんと呼んだ人は一人だけなんだ。


 ここで、聡明な読者諸君はもうお気づきだろう、なにを隠そう、

俺の元カノである 出好 蒼にほかならない。


 ということは、こいつはあ、あ、あおいぃぃぃぃ!?(ちなみにこの答えに行き着くまで0.5秒だった)


 そうだと勝手に決めつけてから、俺の心臓はドックン、ドックンと、とてつもなく激しく高鳴るばかりだ。


 蒼(仮)が料理をしに、少し遠くに(といっても数mだが)ペチペチ歩いていってから2、3分経ち、俺もキッチンと壁を挟んで反対側にある白色のテーブルに移動する。


 その間が気まずかったため、そばにあったリモコンを取りテレビをつける。


 ちょうどニュースの時間のようで、NNKは昨日あった下着泥棒のニュースを流していた。


「物騒な世の中だねぇ〜」

物騒なのは知らない男を家に上げるお前だよ。


 蒼はいい感じに焼いてあるパンと、俺の好きな半熟目玉焼き、さらにはコーヒー牛乳までを食卓に並べる。


 蒼が座ると必然的に差し向かいになり、少し気まずくなる。


 沈黙を破ったのは、蒼ではなく俺だった。


「蒼ってどこの大学行ってんの?」

この質問には、ものすごいほどの(それほどでもないが)裏がある。


 まずひとつは、前に座っているこの女性が、本当に蒼か知りたかったということ。


 もうひとつは、もし蒼なら、普通にどこの大学に行っているのか知りたかったということだ。


 すると、直前まで蒼(?)はコーヒーを飲んでいたが、俺の唐突な言動にびっくりしたのか咳き込んだ。


「ゲ、ゲホッ、ゲホッ、な、何急に。

わ、私がアオイだということをなんで。」


咳き込む顔に親近感を覚え、にやけてしまいそうだが、俺は澄ました顔、というより意地悪な顔で、


「別にぃ?ただ気になったから、

なんで俺の名前を、翔くんって呼ぶんだろうな〜?って。」


「い、いいじゃない、なんだって!」


クールそうな顔はどこへやら、一気に耳まで赤くなっていく。


どうやら、これから面白くなりそうだ。

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