第4話 味と食感の感想を小説風に……

 食パンを作るための材料を混ぜてオーブンで焼くと、米が原料だというのに、生地が焼けていくにつれて、パンのような香ばしい香りが漂ってくる。


 チンッという、オーブンの合図で扉を開けると、型からきつね色の頭を出した食パンが姿を現した。


 型からはみ出しているオーブン用シートを上に引っ張って、熱々の生地を取り出し、用意しておいた網の上に載せて粗熱を取る。これで湿気が溜まらくてすむ。


 網の上に移したあと、焼けた生地の側面部分にぴったりと張り付いた、オーブン用シートをゆっくりはがす。すると、薄っすらときつね色に焼けた姿が、湯気の間から垣間見える。


 出来立てはパン切包丁で切るのが難しいので、焼けた生地の角に料理用ハサミで切り込みを入れ、素手で割る。すると中から熱々の湯気とともに、香ばしい香りが顔にふわっと流れて来た。パンのような、しかしそれとは似て非なる、少しきめの粗い真っ白い生地が姿を現す。


 熱々のそれは手で持ち続けるのが難しい。そのためまるでダンスを踊るかのように、右手、左手と交互に行き来する。熱さが少し落ち着いたところで、ぱくりと口に放り込む。


 外はカリッ、中はふわもち、という新食感。しっとり感は米粉よりも強いだろうか。だが、塩の加減が中々に絶妙である。


 噛んでいくうちに、米の優しい甘みが広がり、ふわもちとした部分は少しずつ解けるように口の中から消えていった――。



 ということで、今回の生米パン作りは「多分」大成功である。

「多分」というのは、筆者が本物の生米パンを食べたことがないので、「多分」としか言いようがないのだが、ふっくらふんわり膨らみ、きれいな焼き色がついている生地を見る限り、生米パンは成功したのだと思う。いや、そう思いたい。


 味はおいしかった。お米に塩をかけておにぎりにするとおいしいのと同じである。それから食感だが、筆者が近いと思ったのは「バゲット」である。本場のものはよく分からないが、日本で買うことができる「バゲット」に似て、表面が固く、中は結構ふわっとしている。生米パンの場合、その中身にさらに「しっとり」と「もっちり」が追加された感じと言ったらいいだろうか。


 筆者としてはこれはこれでちゃんとしたパンだと思うのだが、人によってはパンとは思えないらしい。


 出来上がったものを数人に試食してもらったのだが、内一人から「これはパンではない」と言われてしまった。味はおいしかったそうなのだが、しっとり感ともちもち感が強いためにパンとは思えなかったらしい。パンに近いけれど、パンではない何か……。米粉パンはどこか小麦のパンの延長線上にある感じがするが、生米パンはまた違ったカテゴリーなのかもしれない。


 そのため、正直言うと小麦粉のパンが好きな人を振り向かせるには、ちょっと難しいのかな、と感じた結果だった。



*後日、近況ノートに生米で作ったミニ食パンの写真を掲載する予定です。準備が出来るまで、暫しお待ちください。

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