第34話 生理用品を作成する
翌朝、ふたりは早く起きた。再び葉を採集するためである。
実は商店に卸していたものも好評だったらしく、昨日の三倍の量の注文が携帯電話に入っていた。
ところが、アイナの様子がどこかおかしい。
「ごめんやけど、今日はちょっとカンベンして欲しいねん」
と何やら訳ありの事情だ。そして、ダイモンのところに赴き、
「なあ、今日も市場に行くんやろ? もしよかったらウチも連れて行ってくれへん?」
と頼むのだった。
「ああ、別に構わねぇが……」
「じゃあオイラも行くよ。ちょうど調味料が無くなったから買いに行きたいんだ」
アイナとチェルシーがダイモンについてくるという。これにはダイモンは困り果てた。鳥車は多くて三人までしか乗れない。ということは必然的にホームにはティリオンとレッジーナが残ることになる。
ダイモンがレッジーナに恋慕していることは公然の秘密だ。残留組の組み合わせが妙齢の男女となると、間違いが起こっても不思議ではない。ダイモンは慌てた。
「ダメだダメだ。そんなには連れていけねぇ」
と頭を振った。
「ええ、どうしてだよう? 前はオイラとレッジーナも一緒に行ったじゃないか?」
その矛盾にダイモンは口の中をもごもごさせた。
「いや、その、あの、じゃあアイナの代わりにレッジーナを連れて行こう。な、そうしよう」
当然、アイナが不平を言う。
「さっきはええでって言うてくれたやん。なんで急にアカンくなるのよ?」
「それはだな……」
何かもっともらしい理由を言おうとしたが、なかなかいいアイデアが浮かばない。そこへレッジーナが現れ、
「アイナ、何か欲しいものがあるんでしょ? 私が買ってきてあげるから、何でも好きなものを言って」
「ホンマ? 実はな、昨日あたりから胸が張ってきてな……」
と何やらふたりでごにょごにょとやり始めた。
「なるほど、そういうことね。だったら私に任せて」
レッジーナが自身の胸にそっと手を当てた。
「じゃあ頼んだで」
アイナの代わりにレッジーナが出かけることでこの話は決着した。しかし、このことが予想外な展開を生むことになる。
◇
ダイモンたちが出かけたあと、ティリオンとアイナはダイニングでお茶を飲んでいた。モーニングタイムである。
ひと息ついたとき、アイナは唐突にあるものをテーブルの上に置いた。
「なあおじさん。これが何かわかる?」
それはボロボロになった使い古しの布であった。
「雑巾か何かか?」
「違うねん……これがこの世界の生理用ナプキンの代わりやねん」
それはあまりに粗末な布切れだった。アイナは唇を震わせながら喋った。
「ウチは昨日から怒ってんねん。お尻拭くものに羊の毛を使ってんのに、生理用のナプキンはこれやで? ちょっと女をバカにしてへん?」
ティリオンにはアイナの怒りがひしひしと伝わってきた。男尊女卑の思惑は、歴史上においてどこにでも存在するのだろう。それに対してアイナは怒っているのだ。
「こっちに来て荷物なくしたやろ? 当然ナプキンないからレッジーナに頼んだんやけど、もうちょっとええ品質のやつないの、って言うてん」
アイナはさらに続ける。
「でな、なんか知らんけどナプキンの知識がウチの頭の中にめっちゃあって、昔の人はこういった布も使ってたんやけど、紙に水分をよく吸い取る『
アイナの言うナプキンの知識は、昨夜の夢の中で
「この世界には
「そうやねん。だからこんなボロ切れを使ってんのよ。んなわけで、ウチは使い捨ての生理用ナプキンを大量生産するで!」
「どうやって?」
「さっきも言うたようにめちゃくちゃ水分を吸うミズゴケってやつをしっかり干して、それを紙でひとつひとつ包み込む。それを大量生産する!」
「それだとかなり手間だな」
「手の空いているレッジーナにも手伝ってもらおうと思って」
「なるほどな」
湿布薬と生理用ナプキン。これを大量に生産できれば、旅に必要な資金に困ることはない。そんな青写真を頭に浮かべたときだった。客室の方から獣のような叫び声が聞こえてきた。
「ウオオオオオオオオオオオオッ!」
最初に飛び上がったのはアイナだった。
「なに今の叫び声?」
ティリオン嫌な予感がした。叫び声は客室の方からだ。以前ダイモンから聞いた話が頭の中を過ぎる。
『一定の
「アイナ、念のために武器を持って行け!」
アイナは
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