第424話 順調なカッサンドルフの発展
※ お久しぶりです。
6月はバチクソ忙しかったけど、なんとか落ち着いて来たので、そろそろ投稿を再開します。
再開すると言っても、当面の間は前の章で書けなかった部分の穴埋めなので、ルディは名前だけしか登場しません。
後は……本の発売で色々とアンチっぽい事を書かれたけど、どうせ反論しても叩かれるので、心の中でソイツ等を八つ裂きにするだけに留めておきます。
戦後のカッサンドルフは少しづつ発展しつつあった。
戦後と言っても被害があったのは招き猫が破壊した西門と、大規模水蒸気爆発で城壁の一部が吹き飛んだぐらい。街中の被害は城壁が飛んだ瓦礫が数件の民家の屋根に穴を開けただけで、被害はそれほどなかった。
そう考えると、カッサンドルフの被害は味方からの損害だけなのだが、戦争というのは勝った方が何でも言える。これらの被害は全てローランドが悪いとされていた。
ローランド国のバイバルス王がこれを聞いたら、おそらくキレただろう。
元のカッサンドルフは農業が主力で、商業と工業はそれほど発展していなかった。
何故なら、ローランド国の食料事情を賄っていたというのがある。
それに、東はハルビニア国があり、関税が高くて商人の行き来はそれほどない。西は険しい山地があって峠を越えるのが一苦労。南は100kmほどは農業地だが、そこから先は砂漠になっており、大きな街は一つもなかった。
ローランド国時代のカッサンドルフの商人が儲けるとしたら、北にある都市だけ。当時のバイバルスは西側に力を注いでいたので、カッサンドルフの発展は後回しにされていた。
という事で、カッサンドルフはまだまだ発展の余地があった。
今のカッサンドルフの強みは何かというと、ルディが晩餐会の料理を作って手に入れた銀行業と保険業の許可。
カッサンドルフ行政官長に就任したアルセニオは、銀行業と保険業を市民が有効活用できるように頑張った。
まず、ギルドが独自にしていた融資を銀行に移した。
今まではギルドが許可した者だけに、高い金利で金を貸していた。そこで、銀行はギルドよりも安い金利で金を貸し始めた。
勿論、誰にでも貸す訳ではない。金を借りるには、ギルドまたは連帯保証人が必要。銀行もきちんと調査して、問題がない者だけが金を借りれた。
これで、商売を始めたい、店を増やしたいなど、資金が足りずにできなかった人たちが、安全に安く資本金を手にする事ができた。
銀行だから、当然ながら貯金もできる。
最初の利息は1%。だが、領地経営の銀行なので、毎年のカッサンドルフの業績で変動する予定だった。
一応、定期貯金も作って、そちらはちょっとだけ利息を高くした固定金利にしている。
領地経営の銀行の強みは、街が発展すればするほど利息が高くなる。
つまり、カッサンドルフの市民が頑張って働けば街が発展して、預けていた金が勝手に増えていった。
まあ、借りた場合は利息が高くなるので諸刃の剣だが、景気が良ければ全て良しである。
その事を知った市民は、今までのタンス貯金を止めて、金を銀行に預けるようになった。そのおかげで、窃盗の被害が減ったのは副効果。
どこぞの国みたいに、預けても0.1%以下などにはしない。低金利はただの延命処置に過ぎない。
アルセニオは銀行業と同時に、保険業も開始した。
保険は健康保険のみにして、死亡保険はなし。保険は強制ではなく任意で加入、引き落としは銀行から。保険加入者は怪我や病気になったら、領地が六割負担する制度だった。
最初は健康な状態でも毎月金を支払う事に、多くの市民が保険に入るのを躊躇っていた。だが、病弱な家族を持つ家庭からは歓迎された。
この惑星では、まだ医療技術が未発達。病気を治すためには治療魔法を掛けてもらう必要があったが、大金を支払う必要があった。
その支払額を領地が六割も負担してくれる。それで多くの病人が救われた。
領地が医療費を負担するからには、医者が勝手に金額を決めさせない。
あくどく医療費を吊り上げる医者を取り締まり、医療額を一定にさせるという効果もあった。
最初は加入者が少なかった保険も、少しずつ加入者が増えていた。
始まった銀行と保険制に市民からの反発も多くあったが、アルセニオと彼の部下は辛抱強く説得した。
始まってから詐欺を働く者もいた。彼らは見せしめに容赦なく首を落とした。
これは詐欺を働くと重い刑が待っていると、市民に知らしめる必要があるからだった。人権がそれほどない世界ならではの罰則とも云える。
こうしてカッサンドルフは、アルセニオと彼と一緒に来た行政官の力で少しづつ発展していた。
「順調でなによりでございます」
「これもダイアナ殿のおかげです」
ルディが派遣したアンドロイドのダイアナに、アルセニオが笑みを浮かべる。
ダイアナはカッサンドルフの顧問として就任していた。
彼女からは何も提案しない。ただ、アルセニオから相談された時だけ、アドバイスする立場だった。
これはルディの方針。街の発展は人類の文化の発展に繋がる。自分たちが暮らす街ぐらいは、自分で考えて経験を積め。ある意味、放任しているが、未来を考えたやり方だった。
アルセニオと彼の部下は、この方針に喜んだ。
ただ命令に従うだけでは働き甲斐がない。だが、自分たちが考えて苦労してた結果、街が発展する。大変だけど、苦労した分だけ喜びも大きかった。
「そろそろ次の段階に移ろうと思いますが、ダイアナ殿はどう思いますか?」
「次の段階と言いますと、学業の発展でございますね?」
「そうです。銀行の経営が順調なので資金が増えました。その資金で児童の学校を作ろうと思っています」
アルセニオの相談に、ダイアナが暫し考えてから口を開いた。
「それも必要ですが、私なら先に娯楽施設を作る方を優先します」
「娯楽施設ですか?」
思わぬ提案にアルセニオが首を傾げる。
「はい。働きづめでは疲れます。時には息抜きも必要でございます」
ダイアナはそう言うと、毎日夜遅くまで働いているアルセニオを見て微笑んだ。
彼もそれは自覚しており、恥ずかしそうにこめかみを掻いた。
「休日の息抜きに娯楽施設へ行けば、市民はより働く事ができるでしょう」
「うーん。それは学校よりも優先ですか?」
学業の方が優先だと考えたアルセニオが、ダイアナの意見に首を傾げる。
「どちらも必要なのは、ご理解していますか?」
「それは理解しています」
「私が考えているのは優先順位の問題でございます。現在、カッサンドルフの就職率は50.1%。半分は日雇い労働者でございます。そこで娯楽施設を作って雇用を増やし、少しでも就職率を増やしたいのが私の考えでございます」
娯楽施設を作れば市民の息抜きになるが、同時に係員、警備員、経理など、運営に必要な多くの雇用が増える。
ダイアナが目に付けたのはそこだった。
「なるほど、確かにその通りかも……」
ダイアナの考えにアルセニオも考えを改めた。
「ところで、娯楽施設と言っても、何がありますかな?」
アルセニオが思い付く娯楽施設は、サーカスか闘技場ぐらい。
そこでダイアナに質問すると、思わぬ返答が返ってきた。
「スポーツ観戦などが宜しいかと」
「スポーツ観戦?」
「はい。オススメはサッカーでございます」
サッカーを知らないアルセニオが首を傾げる。
「サッカーとは何ですか?」
「簡潔に言うと、玉蹴りでございます」
「はあ?」
玉蹴りを見せるだけで、何が楽しいのか?
益々分からいアルセニオが顔をしかめた。
ダイアナの話を聞いた後、アルセニオはこの話を持ち帰って彼の部下と相談する。
そして、試しに一度やって、駄目だったら学校を先に作ろうと決めた。
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