第302話 ゴブリン一郎の奮闘
ルディが色々とやっている頃。
ゴブリン一郎も出会った仲間の為に、色々と行動をしていた。
ゴブリン一郎が今居るのは、出会った3人のゴブリンが暮らす集落。
そこには、3人のゴブリンを含めて、11人のゴブリンが生活していた。
「一郎! この肉、どこに干したろか?」
穴を掘っているゴブリン一郎に、捌いた肉を持った雌のゴブリンが話し掛けてきた。
「ああん? 適当にぶら下げとけや」
「それを早よ言えや!」
雌のゴブリンはそう言い残して、ゴブリン一郎の元を去った。質問に答えただけなのに理不尽だと思う。
ゴブリン一郎がそう思っていると、別のゴブリンが話し掛けてきた。
「おい、一郎! テメェさっきから何しとんじゃ、ワレ」
「あ? 見て分からんか? 穴掘りじゃ!」
「なるほど、誰を埋めるんだ? 手伝うぞ」
「誰も埋めねえよ。テメエ等の便所を作ってんじゃ」
「便所? それは食い物か?」
「クソ食わすぞ、クソ野郎!」
一郎の言い返しに、話し掛けたゴブリンが笑って立ち去った。
乱暴な会話が飛び交っているが、これがゴブリンの日常会話だった。
3匹のゴブリンと出会ったゴブリン一郎は、その翌日に彼らが暮らしている集落へ招待されて赴いた。
そこで見たゴブリンの集落は、集落と呼べる物ではなかった。
まず、家がない。彼らは食料を求めて移動したり、強い敵から逃げるため、住まいを定着するという概念がなかった。
次に、食料を長期保存させる方法を知らなかった。彼らは仕留めた獲物を焼いて食べるが、干し肉にする方法を知らなかった。なので、冬の間は腐った肉を焼いて食べていたので、食中毒による死亡率が高かった。
最後に臭い。一郎もそうだったが、ゴブリンは風呂に入らない。なので狩に出かけても、直ぐに匂いで見つかって逃げられる。なかなか獲物を仕留める事ができなかった。
これらの問題を解決するために、ゴブリン一郎は奮闘する。
最初は突然現れた余所者に、ゴブリンたちは警戒していた。だが、ゴブリン一郎に助けられた3人のゴブリンが、ゴブリン一郎の強さを自慢する。すると、強者に従うゴブリンたちは、同族であるゴブリン一郎を歓迎した。
なお、アンドロイドのアイリンは、容姿の異なる自分が行けば警戒するだろうと集落には行かず、監視衛星からゴブリン一郎を見守っていた。
ゴブリン一郎は、まず最初に肉の長期保存を教えた。
保存方法は至って単純。風通しの良い場所に物干し竿を作り、そこに肉を干すだけ。
そうする事で肉の水分を飛ばし、微生物の繁殖を抑える事ができた。
だけど本当は、ナオミの家から塩を持ち出して、塩漬け肉を作りたかった。でも、それはアイリンに止められた。
止めた理由は、ゴブリン一郎が居なくなっても、彼らが教えられたことを続けられるようにしたかったからだった。
そうアイリンから説明されて、ゴブリン一郎も納得する。
ナオミの家にある物は便利だけど、それに頼っていたら、ゴブリンたちは何時まで経っても自立できない。
ゴブリン一郎は、まず最初に生き残る方法だけを教えようと決めた。
次にゴブリン一郎は、湖の近くにある粘土から、土器の作り方を教えた。
ゴブリンたちの食べ物の中には、ドングリや椎の実などもあった。だが、それを入れる物がないので、地面の上に葉っぱを敷いて、その上に木の実を置いていた。それだと雨が降ったらしけって腐る。
そこで、雨が降っても湿気ないように土器を作り、食料を入れて保管させた。
食料保存の仕方を教えながら、ゴブリン一郎は狩猟方法の改善を行った。
今までの彼らは、獲物を見つけると取り囲んで、こん棒か石斧で狩をしていた。だが、それでは獲物が反撃してきたら逆に怪我をする。
ゴブリン一郎は弓の使い方を教えようとしたけど、弦の素材である麻が手に入らなかった。
それに、森では草木が視界を邪魔をするため、遠距離の武器はそこまで有効ではない。
そこで、ゴブリン一郎はアイリンに武器について相談する。すると、彼女からジャベリンならどうかと提案された。
ゴブリンたちは集団で狩を行う。
遠距離から投げ攻撃が出来て、接近されても離れて攻撃出来るジャベリンなら怪我をしにくい。
アイリンの提案にゴブリン一郎も納得。それにすると頷いた。
彼女から
アトラトルは棒状の器具で、ジャベリンを引っかけて遠くへ飛ばす。
射程距離は最大100mほど。原始時代は、大型生物の狩猟に使われていた。だが、氷河期が終わると大型の哺乳類が絶滅し、その頃になると、さらに遠くへ飛ばせる弓や投石器が発明された。
そのため、ヨーロッパ、アジアでは使われなくなったのだが、南米のジャングルでは、アトラトルを使い続けていた。
それは前にも述べた通り、密林だと遠距離はそれほど重視していない。それに南米で弓が広まったのが、かなり後期なのも理由だった。
ゴブリンたちは森の中で暮らしている。
アトラトルを使った投槍は、ジャングルと生活環境が類似しているゴブリンに相応しい武器だった。
ジャベリンとアトラトルを作ったゴブリン一郎は、まずは自分が試そうと、ジャベリンをアトラトルにセットする。
そして、ナオミが作った的に向かって、思いっきりぶん投げた。
斜めにピョーン!
「ぐぎゃ?(あれ?)」
見当違いの場所に飛んだジャベリンに、ゴブリン一郎が首を傾げる。
それを見ていた、ルディとナオミが面白そうに笑っていた。
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