第282話 炎上条件
「ししょーなら、そう言うと思ったです。魔法は頭の中の上位マナニューロンで指向性を形成して体内のマナで発動するです。でも、この動画を見ていると、ローランドの銃は人間の使う魔法とは、すこし違う気がするんです」
「……魔法は幻。そして、マナは電気と性質が似ている……つまり、本当だったら魔法は絶縁体に対して無効になるはず? だが、魔法の炎で木は燃えるぞ」
ナオミの話に、ルディはその通りだと頷いた。
「そーなのです。何故、電気質の魔法で絶縁体の木が燃えるのか? それこそマナニューロンの力だと、考えたのです」
「……ほう?」
「人間の思考は単純に見えているけど、実は多くの物事を考えて答えを導いているです。だから、マナニューロンを経由した魔法は同じ炎でも、思考次第で中身が異なるです」
ルディはそう言うと、もう一度人差し指に炎を灯らせて、メモ用紙を燃やそうと近づける。
しかし、今度のメモ用紙は燃えずに、原型を留めていた。
「……と、この様に燃やすなと命令した炎の魔法は、可燃物を近づけても燃えねーです」
「うむ」
「炎に見えているのは、マナニューロンで作ったただのイメージ。だけど、そのイメージが大事です。例えば、炎じゃなくて水を作って燃やせと命じても、メモ用紙は燃えねーです」
今度は指先に水球を作ってメモ用紙を近づけ、メモ用紙をひらひらさせた。
「これは、水で紙が燃えないという常識があるからです。魔法の限界と言えるですね」
「でも私の中では、炎で紙は燃えるという常識があるぞ」
「んー? ししょー、前に魔族の集団虐殺したとき、木を燃やさない指向性持たせていたですよ?」
「アレは木だからだ。木は乾燥していなかったら簡単には燃えないと強く考えて、魔法を構築した」
「なるほどです。僕の場合、人類が発明した中に燃えない紙があるのを知っているから、紙が燃えねーかったです」
「なるほど。つまり、人間が作る魔法は常識の範囲内であれば、絶縁体が対象でも関係なしに効果があると?」
「理論分からねーけど、そのとーりです」
ナオミの結論にルディが頷いた。
「そこで、銃の話に戻るです。ぶっ放した魔石から魔法が発動する? ただの石に指向性なんてねーです」
「だったら、銃はどうやって魔法の指向性を与えている?」
「仕組み分からねーけど、銃を撃つ時、指向性を与えてる可能性あるです。でも、ただの石に人間と同じ複雑な指向性、与える事できねーと思うのです」
「つまり、ただ燃やせ程度の単純な指向性しか持っていないと言いたいんだな」
「そーです。おそらく、対象物を何か1つに絞ってるです。そして、魔法は幻。それならば、絶縁体の木は燃えねーはずなのに、この動画では的の木燃えているです……何故ですか?」
ルディの質問にナオミが考え、そして導きだした答えは……。
「……そうか! 銃が魔石に与えている対象物は空気か!」
「ブッブーハズレー。だけど、惜しいです」
外したナオミに、ルディが腕を交差してバッテンを作った。
「クソー外したか」
「ヒント必要ですか?」
「いや、必要ない。今ので何となく分かった、答えはマナウィルスだな」
ルディが拍手をする。
「正解です! 実際にはマナウィルスの熱運動エネルギーを変化させるが正解です。魔法の炎は幻です。だから絶縁体の木は燃えねー。ならどうやって燃やすか? 最初に酸素を考えたですが、酸素は助燃性あるけど酸素自体は燃えねーです。となると、残るはマナウィルスしかなくなったです」
「着弾先の場所のマナウィルスを燃やす? まて、それだとマナウィルスは電気質だから、絶縁体に対して無効だという矛盾がでるぞ」
ナオミが矛盾点を指摘すると、ルディは頭を左右に振った。
「マナウィルスを燃やしてる少し違うです。僕の考えでは、マナウィルスの熱運動エネルギーを上げてるです。つまり、動画の木の的は自然発火で燃えているです」
「……自然発火だと?」
「酸素、可燃物、そして着火エネルギー。この3つがそろって、物は燃えるです。おそらく、魔石の着弾先の温度、最低でも460度に達してるです」
ルディの話に、ナオミはその様な燃やし方があるのかと驚いていた。
「ハル、今の仮説で検証実験のスケジュールを組むです」
『イエス、マスター』
「もし、今の仮説が正しければ、マナウィルスの熱運動エネルギーを低下させることで、ローランドの銃は無効化できるです」
「つまり、空気の温度を下げるんだな」
ナオミの確認に、ルディが頷く。
「そのとーりです。酸素、可燃物はどうしよーもねーですが、着火エネルギーを失くせば、魔石の弾丸はただの石ころです」
「なら、私はそれを魔法で何とか出来るように考えてみよう」
「……そーですね。もし、この技術が発展したら、下手したらこの惑星、滅ぶかもしれねーです」
「そうなのか?」
「そーなのです。とっても危険だから、出来れば封印してーぐらいです」
そう言うと、ルディは目を瞑り頭を左右に振った。
熱運動エネルギーの拡大。
ルディはその技術が進化する先を知っていた。
それは、人類を発展すると同時に、滅亡へと導く核兵器に繋がる技術だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます