第175話 ルイジアナ、空を飛ぶ
ルイジアナは何処に向かっているか分からずルディの後を追っていたが、街を出て人気のない草原まで来ると不安になって話し掛けた。
「ルー君、どこに向かっているのか教えて欲しいんだけど」
「もう到着したです」
そう言ってルディは足を止める。ルイジアナが周囲を見回しても何もなく首を傾げていると、ルディが振り向いて口を開いた。
「ルイちゃん。1つ約束して欲しい事があるのです」
「何かしら」
「僕、エルフの秘密をししょー以外の誰にも言わねーから、ルイちゃんも僕の秘密、誰にも言わねーで欲しいです」
ちなみに、ルディの考えでは人類にAIは含まれていない。
「ルー君の秘密?」
「そーです。約束しやがるですか?」
もし、ルイジアナが浅はかな人間だったら、ただの口約束だと思って直ぐに破ったかもしれない。だけど、この惑星のエルフは昔から、どんな約束事でも破れば自分に嘘を吐く行為だと戒めとして教えられており、決して破る事がなかった。
「分かりました。エルフの名誉に誓って約束します」
ルイジアナは真剣な表情で頷くと、ルディも彼女の目が本当だと信じて頷いた。
「じゃあ、光学迷彩解除です」
「……はい?」
光学迷彩の意味が分からずルイジアナが困惑していると、突然目の前に輸送機が姿を現した。
「えっ! ……鉄の…家?」
輸送機を知らないルイジアナが輸送機を見て、鉄で出来た家と勘違いする。
「家、ちゃうです。これで空飛んでししょーの家に行くですよ。という事で、とっとと乗りやがれです」
ルディは輸送機の開いたハッチに足を掛けて説明すると中に入り、ルイジアナもルディを信じて恐る恐る輸送機に乗り込んだ。
ルイジアナが見た事のない内装に首を傾げながら、ルディの後を追ってコックピットに入る。
「そっちに座ってシートベルト…は分からないですね。座ったら教えるです」
ルディに言われてルイジアナが助手席に座ると、彼は「ちょいと失礼です」とシートベルトを伸ばして、彼女を席に体を固定した。
「ルー君、これは一体?」
そろそろこれが何なのか話して欲しいとルイジアナが質問すると、ルディは自分のシートベルトを締めてから話し始めた。
「ルイちゃん。一緒に旅をしたとき、僕がどこからともなく荷物を持ってきたの覚えてやがるですか?」
「ええ、もちろんよ。あの魔法のおかげで旅が楽になったわ」
そして何処にでも多くの荷物を運べる魔法に、危険も感じていた。
「あれ、魔法じゃねーです。僕、魔法使えねえし、ししょーもそんな魔法できねーです」
「じゃあ一体、どうやって?」
「それを今から見せてやるです」
ルディはそう言うと輸送機のエンジンを起動した。
「えっ? わっわっ!」
家だと思っていた輸送機が揺れだして驚いていると、その輸送機が宙に浮かび始めてさらに驚いた。
「ルー君、これってもしかして空を飛んでるの?」
キャノピーから見える風景が上に上がっている様子から、ルイジアナが質問するとルディが頷いた。
「正解です。僕、魔法使わねーで、これで荷物運んでいたです」
確かに空を飛べたのならば、危険な森など通らずナオミの家から直ぐに荷物を届けられるだろうと納得するが、これが魔法でなければ何なのか。
その答えを聞きたかったが、今は空を飛んだという衝撃に、ルイジアナは興奮してその事を頭から消え去った。
「それじゃ、ししょーの家に行くですよ」
「キャー凄い!」
初めて空を飛ぶルイジアナは、歳を忘れて空の光景に歓声を上げた。
草原と森を抜け、僅か1時間で輸送機がナオミの家まで飛行すると、家の前で着地した。
「到着しやがったです。シートベルトは外せるですか?」
「えっと……外せたわ」
シートベルトを外してルイジアナが立ち上がろうとするが、初めての飛行で興奮して、足元がよろけて転びそうになった。
「おっと、気を付けやがれです」
「ごめんね」
咄嗟にルディが腕を掴んで支えてルイジアナが謝る。
「気にするなです」
ルディはルイジアナの腕を離すと先に彼女を外へ出して、後から外に出る。
すると、外で待っていたルイジアナが話し掛けてきた。
「凄かった。空を飛ぶのは初めてだったけど、一生の思い出になるわ」
「エルフの里に行くときも、これで飛んで行くですよ」
「どのぐらい掛かるのかしら?」
「計算だと10時間ぐらいです」
「たったの10時間⁉」
ルディの見積もった時間を聞いて、ルイジアナが目を大きく開いた。
半年掛かる道中が1日も掛からず着くと聞けば、誰だって驚く。
ルディの話にルイジアナが驚いていると、家からナオミが姿を現した。
「なんだルディ。ルイジアナにも秘密をバラしたのか?」
「ししょー、ただいまです。ルイちゃんが言うには、エルフの里まで半年掛かるらしいですけど、僕、我慢できねーです」
「まあ、お前がそうしたいなら私は別に構わないよ。ルイジアナ、久しぶりだな」
「えっと、はい。奈落様、お久しぶりです」
2人の会話に戸惑っていたルイジアナは、ナオミから話し掛けられて頭を下げる。
「そんな堅苦しくしなくていいよ。私の事はナオミと呼びな。私もお前の事をそうだな……」
そう言ってナオミがルディに視線を向けると、笑みを浮かべてもう一度口を開いた。
「ルイとでも呼ぼう」
「…は、はい」
エルフのルイジアナよりもナオミの方が年下だが、貫禄で負けている彼女は断る事が出来ず頷いた。
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