立ち上がる唄

生きていて一番惨めだったあの日

沢山の目から逃げたくて

でも逃げられなくて

30分も眺めていた渡り廊下の錆びた手摺

未だに鮮明に覚えている


あの日身に付けられなかった青

あの日捨てた11ケタの数字

あの日しまい込んだ紺色の本

あの日破った色紙

どうして未だに忘れられないんだろう


生きていて一番泣いたあの日

自分から逃げたくて

でも逃げられなくて

さっさと前を向いた改札の向こうは

怖くて見られなかった


あの日身に付けられなかった自信

あの日捨てたダサい制服

あの日しまい込んだ自分の好み

あの日破った約束

どうして未だに未練があるんだろう


生きていて一番苦しかったあの日

拒絶されたあの人から逃げたくて

でも逃げられなくて

孤独に悶えた深い夜の出来事

どうして未だに辛いんだろう


手放すくらいならいっそ

最初から放っておいてくれ

こんなに温かいものを与えておいて

そこから被る水は何よりも冷たくて痛かった

ああそうか

ボクは誰かに、貴方に愛されたかったんだ


空いた穴に継ぎ当てを

ほつれた袖に糸を

渇いた心に水を

冷えた体に毛布を

ボクがボクであることに祝福を


生きていて一番嬉しいと言いたい

貴方に愛を伝えたい

逃げ場ならもうある

手当てならもう出来る

大丈夫、ボクにはボクがいる


あの日身に付けたかった青

あの日大事にしたかった番号

あの日見せびらかしたかった文集

あの日飾りたかった色紙

今から集めに行こうか


生きていて良かったと泣いたあの日

常に満ちている水瓶

凍えない土地

ひとつずつ取り返しながら

これから傷も夢も見るんだ

どうしてこんなに穏やかなんだろう


ねぇ遊ぼうよボク


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