第16話―王国の危機―王都での戦闘―
――翌朝ヴァーレリー市街
コンコン
大智達の宿泊した宿屋の扉がノックされ大地が目を覚ますと、部屋の窓から朝日が差し込み、外からは行商人の馬車の行き交う音が聞こえてくる。
ミネルバに抱き枕のように上に乗られた状態で目が覚めた大智はミネルバの口元の涎をシーツで拭ってから自分の隣に静かに下ろすと、一日の始まりを告げるかの様なノックされたドアに向かった。
「はい。今開けますよ」
扉を開けるとそこに立っていたのはヴァーレリー冒険者ギルド長のラファエルであった。
「大智様おはようございます。昨夜の事件に関った憲兵隊長より大智様が此方に滞在されているとの事でしたので、大至急お伝えせねばならない事があり勝手ながら訪問させていただきました。お時間は取らせませんので」
ラファエルの焦った表情から何か問題が起きた事は明らかで、昨夜のリッキーの案件であれば話を聞く必要があると判断し、幸希とミネルバを起こした後ラファエルを部屋に入らせた。
部屋に備え付けのテーブルはファミリータイプの部屋というだけあって4人掛けの大きめのテーブルで大智とラファエルはそのテーブルに対面になる様に座った。
「誠に勝手ながら、此方からこのようなコンタクトを取った事をお許し下さい。至急伝えねばならない内容とは、昨日収監されたSランク冒険者リッキーについてですが、本日早朝に王城との魔報を傍受してきた者がおりその際何らかの形でメッセージを残していった物と思われます。そのメッセージはこの通りです」
ラファエルは一枚の書類を大地の前に置くと、その書類は王国の紋章が入っており機密事項と書かれていた。その書類の内容によると
王国各位へ警告
我々は昨日収監したリッキーの無罪放免を要求する。
王国が我々の要求に従わない場合、今世紀最大の厄災が王国
全土に襲い掛かり王国を滅亡に導くであろう。
期限は本日正午。正午になっても解放され無き場合、我々に
戦線布告したものとみなし、これを受けて立つこととする。
と書いてあり、何かのいたずらの様な感じもするがラファエルの話しでは、
王国内の魔報は特殊な魔法を幾つも重ね掛けされており、その通信網に侵入するには魔術士が5人以上か莫大な魔力を持つ宮廷魔術師の力が必要で、易々と出来る事ではないようだ。
この魔報に侵入できたとしてもそれが明るみに出た場合、王国より厳罰が与えられ、最悪の場合死罪に相当し、今回のメッセージの内容は王国転覆の要素が含まれる為、極刑の死罪に相当する。
只の悪戯程度でそこまで危険を冒すことは考えにくいので、王国は朝から大騒ぎになっている。
「ラファエル。この発信元の特定は不可能なのか?」
「発信元の特定は宮廷魔術士たちが10人掛かりでやっていますが、見事に隠蔽されているらしく、現在特定には至ってないのです」
「で?この要求は呑む方向で考えているのか?」
「いえ……現在、王城内で対策会議が開かれていますが、今の所何も報告書が上がってきておりません」
幸希とミネルバもいつの間にか話しに加わっており、自体は深刻と判断した戦神顔になった幸希が
「こんなクズ共現れた時点で粉々に粉砕してくれるわ! ラファエル!貴様は即刻ギルドに戻り、緊急クエストとして他の冒険者達を招集せよ!」
大智はここヴァーレリーにジークとユーリアナが居る事を思い出し『捜索』を使って探すと3件隣の宿屋にまだ二人とも居る事を確認したので、そこに向かう事にした。ミネルバは一旦エクムントに戻り、村長と協議の上対策を練るようにお願いした。この時点で午前9時を回った所で、全てを可及的速やかに進める必要があるため大智、幸希、ミネルバで 『心話』を繋いだ。
大智は早速ジークたちの滞在している宿屋に向かうと受付に以前ギルドで貰ったギルドカードを見せ、緊急性がある事を伝えてジーク達の部屋に案内してもらった。このギルドカードは王国のほとんどの施設等で身分証明書として活用できるのだがランクによって制限があり、SSSランクのカードにいたってはその限りではない。
部屋をノックするとジークが出てきたので部屋に入れてもらうと二人ともチェックアウトの寸前だったらしく、荷物は纏められていていつでも出られる状態だった。
「二人とも少し座ってくれないか」
大智の言葉と表情から逸早く不穏な空気を感じ取った二人はすぐにテーブルに着き大智の発言を待つ状態になった。
「単刀直入に言うと、王国全体が何者かによって危機に陥れられている。
その犯人も、危機の内容もまだ把握できてない状態だが、分かっているのは昨夜のSランク冒険者リッキーが絡んでいるという事だ」
大智は王国の魔報の件やこれからの行動について細かく端的に説明し、ジークとユーリアナの力が必要不可欠である事を告げた。
「現在、ミネルバはエクムント。幸希はここヴァーレリーでラファエルと他の冒険者を集めている。そこで君たちは俺と一緒に王都に向かい、王城の対策会議に騎士修道会の士長として参加して欲しい」
「分かりました!王国の危機とあらば喜んでこの身を捧げます!」
ジークとユーリアナは荷物の中から装備一式を取り出すと二人はすぐに着替え出した。
「えっと……ちょっと待て!まだ脱ぐなよ。俺は一旦部屋から出るから……
って、おい待てって!」
「王国の危機です!神に裸を見られる事などなんとも思いません!」
既に二人とも全裸になっており大智が部屋から出るには必ず視界に入ってしまうためここで壁を見つめてやり過ごすしかなくなってしまった。
衣擦れなどの音が止むと
「用意できました。王都へはどのように?」
その姿は先程の村娘の様な格好からは想像のつかないほど凛とした騎士と魔道士の出で立ちで、すぐにでも戦闘可能状態になった。
残りの荷物は大智がポーチの中に保管し、移動のために3人手を繋ぐ必要があった。個別に転送可能なのだがその場合大智が最後になってしまい、転送先に誰かいた場合面倒な事になりかねないためである。
「大智様!転移魔法なのですか?転移魔法なのですか?」
と転移する時にユーリアナが興奮状態になったので理由を聞くと、現在は魔法による転移を行使出来る人間は存在せず、転移は転移魔具という恐ろしいほどの魔力を消費する物によって出来るようになるらしい。
ユーリアナも基本的に転移は転移魔具を使用するが、魔力を大量消費してしまう為自分一人を転移させただけで行った先でMPが枯渇状態になり、当分動けなくなるそうだ。
早速大智の『転移』で王城の応接間に転移すると、そこには王女ナターリエを筆頭に新任の宮廷騎士団長、宮廷魔道士、王城の兵士たちが会議をしている最中だったらしく、突然現れた3人に驚き兵士が剣を構えたので、大智が
「驚かせてしまったようだな。王女と話しがしたいだけだ剣を下ろせ」
すると剣を構えた兵士は大智と分かるとすぐさま剣を鞘に収め震えながら何度も深く頭を下げた。
「突然の訪問だが端的に話す。このジークとユーリも新たな修道会の士長として参戦する事となった。そして我々も同じく、この戦いに王国側で参戦する。ただし戦う主体はあくまでも王国の騎士団以下兵士たちで、我々が表立って戦うことは想定していない」
王女ナターリエは少し訝しげな表情で大智を見つめていると、疑問をもった騎士団長エルヴィンが口を開いた。
「大智様。私はジークリット団長退任後に新しく宮廷騎士団団長に任命されたエルヴィン・ヴァイスマンであります。
先程の発言は王国兵士に戦わせて大智様達はそれを傍観するというように
聞こえますが」
「違う。俺たちが表立って戦い簡単に勝利する事に意味を見出せないからだ。
王女が王国の兵士を随えてこの戦いに挑み、王国の力で戦い勝利する事によって現在の王国をより磐石な物にする為だ。俺たちが表立って勝利を得た場合、今後王国は俺たちに正面から向き合う事が出来なくなる。そのような王国に不信感を持つ国民が現れた時に再び王国転覆を企てる輩が現れない為の布石になる」
その場に居る大智以外の全員が納得したが王女のみが考え込んでいると、痺れを切らしたジークが王女の前に行き跪いて
「王女様!我々修道会騎士団長及び魔道士長は大智様の考えを支持します。
王国の騎士として宮廷騎士団を筆頭に連携を取り速やかに戦闘態勢に就かせていただくことをご了承願います」
ジークの心からの申し出により考え込んでいた王女だったが、自身の中の葛藤に決着がついたのか
「分かりました!ヴァイトリング王国王女ナターリエ・ヴァイトリングの命により得体の知れない戦線布告に対し、王国はこれを受諾し王国全土が臨戦態勢に突入する事を宣言します!宮廷騎士団ならびに修道会騎士団は速やかに連携を取り戦闘に備えるよう命じます!」
「はっ!」
王女の号令により各自の持ち場に向かった兵士達は夫々の分隊に決定事項を伝達し、戦闘準備に取り掛かる事になり王城は走り回る兵士達が声を上げて忙しそうにしだし、大智はこれからの作戦について詳細な打ち合わせの為、王女と部屋に残って地図上の位置関係などの調整を行なっていた。
「今リッキーの身柄はヴァーレリーにあるの?」
「ええ、ヴァーレリーで拘束されたものは裁判まで現地の留置所に置く事になっているの」
「では、王都と、ヴァーレリーの2箇所に危機が迫っていると考えるべきだな。まあ、高確率でヴァーレリーが先に狙われるだろうな。そこで提案だが、ジークとユーリをヴァーレリーに配置して俺と幸希がここで待機するようにしたいのだがどうだろう?」
ジークとユーリをヴァーレリーに置く事にしたのは現地に赴任する二人の所謂見せ場を作る目的がある事ともう1つは騎士団総勢50人を2つに分けて配置する事は王城のリスクが格段に上がってしまうからである。そしてヴァーレリーでは冒険者ギルドが緊急クエストを発行し、冒険者200名程度が集結しているのでジークとユーリをそこの指揮官として投入する事により戦力的な面と統率的な問題がなくなる事が一番の理由なのだ。
「では、その作戦で行きましょう!」
「ああ!1時間以内に決着をつけよう」
大智はジークとユーリを部屋に呼び、作戦の内容を告げた後、『転移』でジークとユーリをヴァーレリーに送り届けた後王城に戻った大智と幸希は
『心話』を使ってミネルバに連絡を取り、エクムントに作戦を伝える為大智のみエクムントに転移した。
エクムントでは、既に戦いに備えて準備が行なわれており、村長とエーベルトにここが狙われる確立は低く王都やヴァーレリーでの戦闘になる事を告げると村長と、エーベルトは安堵の表情を浮かべたが、万が一の為住民の避難と物資の確認に取り掛かった。
その様子を見届けた後大智はエクムント全体を覆う強力な結界魔法を張り終えた後、幸希から連絡が入りヴァーレリーの西側15km地点と王都の南側20km地点の上空にワイバーンの大軍勢を発見した事を報告してきたので、ミネルバと急いでヴァーレリーに転移、ジークとユーリを冒険者ギルド前で発見したのでそこに向かった。
ユーリは冒険者たちに作戦と配置、ギルドからの物資の確認などをしていたのでジークに
「ジーク!王都からの報告で西側15km地点の上空にワイバーンの大軍勢を発見したそうだ!街の西側に注意してくれ」
「わかりました! 冒険者諸君!西側上空にワイバーンの軍勢が出現した!
我々は西側に移動しそこで迎え撃つ!憲兵隊は3人以上の隊列を組み町中に拡散後陽動等に備えて常にギルドと連絡を取り異常を確認次第騎士団に報告を!兵士の半分は街中の警備に当たり異常を発見次第対処! これより本作戦を実行する!」
ジークの号令と共にオー!という大勢の雄叫びが上がり移動が始まった。
大智はミネルバにここを頼みたいと伝えると、
「ミネルバが居れば百人力なのです!誰も死なせないなのです!」
と言うとトコトコとジークの後を追って行った。
大智はそれを見届けた後王都に戻り幸希と合流した。
王城の情報によるとワイバーンの軍勢合わせておよそ5000。
王都の軍勢に一匹だけ巨大なワイバーンロードの存在を確認したらしい
ワイバーンロードがこれまで実験による練精以外で存在を確認された事は無く、人的にワイバーンを練精しない限り出現する事は考えられない。これにより今回は人的要素が多分に含まれている事が明らかになった。
王都の城壁では王女と幸希、各士長と兵数人が並んでおり城壁の下の広場に騎士団、兵士総勢1000人が隊列を組んで王女に注目していて大智も幸希の隣に並ぶと王女が一歩前に出て宣言を始めた。
「我々ヴァイトリング王国はこれより南西に出現したワイバーンを迎え撃つ!兵士達よ、その身を王国に捧げ戦い王国に勝利を齎す事を命ずる!」
雄叫びが上がり兵士達の熱気が城壁の上まで上がってくる。幸希と大智は妙な興奮を覚え、自分達の体が武者震いしているのがわかる。
大智は両手を大きく広げ、『エクスヒール』に魔法防御、物理防御、身体能力向上を付与して兵士全てに付与した後、創造により作成した『オートヒール&リレイズ』同じように全体に付与した。
この『オートヒール&リレイズ』は戦闘中にHPが50%以下になると発動し、自動的に回復すると同時に戦闘中の死亡時には自動で蘇生でき全回復、回数は無制限というチート魔法である。
正午まで1分を切ったところでヴァーレリーのミネルバから連絡が入った。
「「今ヴァーレリー西側の上空で戦闘中なのです!
ミネルバがみんなを守っているからこっちは大丈夫なのです」」
「「先走りかよ!ミネルバ気をつけるんだよ!」」
大智は、王女にもうすぐ此方に攻め込んでくるので戦闘に備えるように伝え、目を凝らしていると転移してきたと思われるワイバーンおよそ3000の軍勢が王都を出てすぐの広い原っぱの上空に出現した。
「来たな……あの奥のほうのでかいヤツがロードだな。ナターリエ号令だ!」
すると王女ナターリエは微かに身震いしている体で深く深呼吸をした後
「ヴァイトリング王国に勝利を!皆の者かかれーー!」
その号令は力強く響き渡り、それを聞いた兵士達の雄叫びで戦闘の火蓋が切って落とされ戦場となる王都の外は熱気に包まれた。
だが、始まってみると、ワイバーンは上空で炎のブレスを吐き出し地上をを攻撃。
そのたびに何人かの兵士が吹っ飛ばされ、オートヒールと蘇生。魔術士達が魔法攻撃で上手く羽根を攻撃するとワイバーンが落下してくるので何十人もの兵士が寄って集ってフルボッコというお粗末な展開が繰り返されていた。
その様子を見守っていた大智と幸希は自分たちが想像していた戦いとのギャップに違和感を感じ、顔を見合わせたと同時に不謹慎だが噴出してしまった。
「ハハハハッ。あれはないわ!ヒーッもうだめ笑っちゃいけないんだけど我慢できない……アハハハ!」
「笑ってないで……ヒーッ……何かっアッハハハ……か、考えないとっヒー……。よしっ飛ぶのやめさせようっハハハハッ……」
ナターリエも拳を握って笑う所ではないのだけど我慢して後ろを向いているが、肩が揺れていてププッと言って、隣のエルヴィンに至っては真っ赤な表情で自分の太ももを抓って我慢しているのだがンググっと噴出す寸前。護衛の兵士に至っては耐え切れずに少し離れた所に逃げ向こうを向いて肩を震わせている。
大智は両手で両方の頬をパンパンと2回叩いた後
『剥奪!飛行』
と唱えた。
すると上空を飛んでいたワイバーン達は一斉に地面に叩きつけられ、それだけでかなりのダメージを負っているようで兵士達の討伐スピードが格段に上がり討伐数も夥しい数になって行った。
「まあ、俺たちのミスだな。地対空なら圧倒的に空からの方が有利だからな。ナタリー……ここにいる全員笑ってしまったから今戦っている兵士達にこの戦いが終わったら褒美は弾んであげないとな」
王女は物凄く申し訳なさそうに
「分かっています……休暇と報奨金を多く与えます」
その時、戦闘中の中央近くからワイバーンロードが兵士達を蹴散らしながら此方に突進してくるのが目に入りエルヴィンと兵士が武器を構え
「ロードが此方に向かって来ています!」
「王女!お下がり下さい!」
と叫んだ。
大智は幸希に兵士を王女の護衛に残してエルヴィンを連れ、3人でワイバーンに向かって行って幸希が手加減をしてギリギリまでHPを削った後、エルヴィンに止めを刺させる作戦で行くことを告げると
「うん!それでいこう!」
と大智とエルヴィンの手を握った。
「君はそこで王女のガードをおねがい!俺たちはエルヴィンとアイツ倒してくるから!」
大智が『転移』でワイバーンロードの目前まで3人を連れて行き、幸希に初手の攻撃を示唆。エルヴィンに物理攻撃無効と魔法攻撃無効を付与して臨戦態勢に入った。
「エルヴィン!幸希が先制攻撃するからその後、とどめを刺すんだ!」
「貴様は我の後ろに就き剣に魔力を注ぎ、時が着たら奴を切り伏せよ!」
幸希がそういい終わると同時にそこから瞬時に移動しワイバーンロード目掛けて剣を振り下ろすとワイバーンロードの右側半分位が見事にそぎ落とされた。
それを見たエルヴィンが自身の魔力を最大限込め魔力の炎を纏った剣を構えると同時に超級スキル
『紅蓮の鎮魂歌』
を放った。
剣先から放たれた紅蓮の刃はその魔力故の暴虐さで一瞬の内にワイバーンロードの喉元に触れると紅蓮の業火と変貌し、スパっと首を刎ね飛ばした。
地上に転がったワイバーンロードの首は夥しいほどの魔力が放出されていたが段々と薄くなっていきそれと同時に目の精気も失われて少しして目を閉じた。
ワ イバーンロードの目が閉じると他で戦っていたワイバーン達も消えて
しまい、この王国の危機を勝利という形で膜を下ろした。
兵士達がエルヴィンのもとに駆け寄ってきて、歓声と共にエルヴィンを
抱え上げ兵士皆が称えた。
抱え上げられたエルヴィンは王国の勝利の喜びと兵士達の栄誉を称え
剣を高く上げると
「この戦いは我々の勝利で収束した!ここにいる全兵士の永光を称える!」
英雄の様なその振る舞いは共に戦い勝利の戦果を収めた兵士達にとって王国を守りきった栄誉とも言える振る舞いであり、この男のカリスマ性を高めるものとなった。
大智と幸希はそのまま何も言わずに二人でヴァーレリーに転移した。
ヴァーレリーでは、戦いを終えたジーク、ユーリが冒険者と共に凱旋してきており、それを戦いに参加出来なかった低ランク冒険者と地域の住民たちが歓喜の声で出迎えている所だった。
大智と幸希がその様子を見ているといつの間にかミネルバが隣にいて大智の手を取って手を繋いできた。
「ミネルバありがとうな。今日は美味しいものいっぱい食べような!」
「やった!なのです。ジークとユーリは強いなのです!あの二人は多分この国最強なのです!」
ミネルバは美味しい食事に喜んで肉や魚そして酒だと騒いでおり、幸希と手を取り喜びの笑みを浮かべて話していた。
大智はジークの所に行き、今みんなの前で凱旋の挨拶をするべきだと告げるとそれを聞いていたラファエルがギルドの前にジークとユーリを連れて行き入り口の一段高くなった所へ二人をを立たせた。
その様子を冒険者、地域の住民たちが静寂に包まれながら見守っている。
ジークがコホンと咳払いをして
「私はこの度ヴァーレリー及びエクムントに新設される騎士修道会、騎士団団長に任命されたジークリット・リッベントロップ並びに同会魔道士長ユリアーナ・ライヒである!ここを管轄する兵士、戦いに参加した冒険者と憲兵隊の諸君全員の力を合わせた結果、王国の危機を乗り越え勝利を収める事が出来た!今日この戦いに参加した諸君の勇敢な姿は未来永劫語り告がれ、その名誉は不滅である!」
ジークは言い終わると同時に剣を抜き高く掲げた。
ここでも王都と同じように歓声が上がったのだが、指揮官が有名なジークとユーリというだけあって、男性の冒険者達はその言葉にメロメロになってしまう者まで現れて次第にアイドルの握手会の様な展開になったが無理も無い、
ジークとユーリアナの美貌は元より知れ渡っていて、地方ではファンクラブのような者まで存在していて出先では常に男女のファンに囲まれていたようだ。
大智と幸希はミネルバと手を繋いで親子のようにその様子を見守って
「この感じなら問題なさそうだな。しかしジークとユーリはアイドルだな」
「そうね……美人って卑怯。私もあれ位美人だったらな……」
「ん?幸希はそのままで十分だよ。もしあれ位の美人だったらめぐり会ってなかったかもよ?それに今は若返ってるんだから」
幸希はその言葉に感動したのか頬に涙を零していたが、え!という感じで
「若返った?大智が若返ってるのは分かってたけど私もなの?」
「え!知らなかったのか?」
「う、うん……そういえばこっち来て鏡見てない!」
早速鏡のある宿屋に入り鏡を見た幸希は感激のあまり飛び跳ねて喜んでいてミネルバと大智はその様子に爆笑した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます