第9話―猫人族アンジェラ

 辺境伯に手配してもらった宿に向かい、2部屋用意されていたので部屋割りは、大智、幸希、ミネルバと隣の部屋に御者のエルフに分かれた。

 辺境伯の計らいで宿の近くの料理屋が用意されていたので4人でそこに行く。


 料理屋は町で言う繁華街の様な所にあり、人出も多く夜でも活気があった

 店に入ると店内はお客さんが多く雰囲気は居酒屋といったところ。長めの木製のテーブルで両側に木製の長椅子が置いてある。席順は大智と幸希の間にミネルバが座り対面に御者のエルフで座ったとたんに大ジョッキ位の木製の樽の様なコップにエールの様な物が入った飲み物が3つ、もう1つ明らかにジユースと豪勢な料理が運ばれて来たので店員を呼び止めてどうなっているのか聞くともう代金はお支払い済みとの事だった。

 一応全ての料理と飲み物を鑑定したのだが全て無害だった。


「また…… またミネルバはジュースなのです!」


 子供扱いを嫌うミネルバは少し膨れていたが幸希が取り替えると喜んで飲んでいた。

 幸希は牢屋の中でミネルバと色々話をした時に年齢の事も聞いていたようで何の躊躇いも無く交換していた。

 この世界のエールを始めて飲んだのだがラガービールにはない豊かな味わいと林檎のフルーティーさがありとても新鮮だ。あえて言うなら常温なのが残念な感じ。

 飲んで少し経った頃違和感を感じたがそれは酔いが回らない事だった。

 料理はホータウロスのステーキや新鮮な魚介類で作ったスープと少し大きめのねぎ間にサラダというメニューで特に美味しいと思ったのはねぎ間。

 これはには幸希も「ん!おいしい!」と言っていた。

 このねぎ間の肉はコーチュンと言う食用の鶏らしいのだが、これが凄くコクがあり柔らかくとてもジョーシーで一口噛むと口の中にコクのある出汁がジュワっと広がる。元々コーチュンはエクムントの特産品だったが件の取引停止後に養鶏農家がやめてしまって、今では中々手に入らないらしく、周辺の地域で稀に市場に少量だが出て来る所謂高級品だ。

 大智はこの養鶏事業は必ず復活するべきと考え、村に帰って早速準備をする事を決意した。要するにこの肉で作ったから揚げが食べたいのだ。


 エールも飲んでミネルバもお腹いっぱい食べた所で宿に戻る事にし、店を出て宿屋に向かっていると暗がりに人が倒れているようだった。


 一方その頃、辺境伯の邸宅では辺境伯とエーベルトが今後のエクムントについて話し合っていた。

 元々エクムントの弱体化は町の商人、エーベルト本人が引き起こした事で、

 エクムントの出荷量は弱体化の前に比べると落ち込んではいるがそれでも出荷される野菜、果物、畜産物は全体の15%を占めている。

 それを今までただ同然で仕入れて高値で販売してきた利益は莫大なのである。

 差額分の1億ジールを支払ったとしても計算上ほんの一部にしか過ぎない。


「辺境伯。私はね、これまで莫大な利益をエクムントのおかげで得てきました。先程アポロン様に色々と言われて目が覚めた気分です。

 私はこの莫大な利益の上にいつの間にか胡坐をかいていたようです」


 エーベルトもまた一人の商人であり、裸一貫からこの町で叩き上げヴァーレリー最大の商会を築き上げたのだ。

 辺境伯は何か考える様子で黙り込みエーベルトの話しを聞いている。


「エクムントの今後についてですが、私は私財を投げ打ってでも元のエクムントに……いや、国内最大の生産地になるまで支援して行こうと思っております」


 すると辺境伯は立ち上がり


「わかった。ならばヴァーレリーの領主としてエーベルト君を全力でバックアップしよう! それがアポロン様のお怒りを買ってしまった、私達の罪滅ぼしだ!」


 辺境伯とエーベルトは互いに手を取り合い硬く握手をしたのだった。


 一方大智達は倒れている人に駆け寄り様子を伺って見ると、フードつきのローブを身に纏った女性で見た所外傷は無く行き倒れているようだった。


「この人すごく衰弱しているなのです。大智様ヒールなのです」


 大智は言われるがままにその女性にヒールを掛けると、顔色も良くなり気がついた様で起き上がりキョトンとして大智達をキョロキョロと見ていた。


「大丈夫ですか? お怪我とかないですか?」


 心配そうに幸希が尋ねると立ち上がり幸希の手を取った。

 おそらく身長はミネルバと同じくらい低く140センチくらいで顔は可愛いのだが違和感のある瞳でローブから少し見える体は低身長の割りにグラマーで上はチューブトップ、下は少し際どいホットパンツで編み上げのブーツにしましまのニーハイ姿でダークブラウン系のフード付きローブを纏っている。


「ありがとうございます!いつの間にか気を失ってしまいました」


 と言い終わる前にその子のお腹がグーっとなり目をウルウルさせながら幸希に縋り付いて


「お助けついでにお腹を空かせた我輩はご飯を所望しております!故郷を出てから3日間何も食べてないのであります!」


 4人は唖然とした後、お腹が空いて行き倒れていただけだと気づき大笑いした。


「アハハわかった!さっきのお店に戻ろう!」


「大智様私は少し飲みすぎたみたいなので先に宿に戻ろうとおもいます」


 一頻り笑ったあと御者のエルフは宿に戻って行き、大智達は店に戻った。


 店でローブを脱ぐと頭に猫耳が付いていたので少々驚いたが、ここからの支払いは自分たちが払う旨を店員に伝えてその子に注文させて大智達はエールを3つ頼んだ。


「俺は大智。こっちは俺の妻の幸希と子供のミネルバだ。きみは?」


「いやーかたじけない! 我輩は猫人族でアンジェラ・メイウッドと申します。冒険者になろうと思って故郷を離れたのですが、

 ここに来る途中で戦闘中に鞄を川に落としてしまって……無一文でここまで辿り着いたのですが先程の所で力尽きたようです」


「冒険者に……因みに戦術は何を?」


「格闘士ですね!我輩は素早い動きが得意なので素手かクローっていう両手に付ける武器での戦闘です。こんな風に ネコパーンチ! なんつって」


 拳闘スタイルで構えた拳は鋭く前に突き出されて本来のネコパンチとはかけ離れているが、その視線は獲物を狙う 虎 の目だった。

 最初の違和感は猫の様な瞳だったからなのであった。

 幸希がその様子を見て笑っていると料理が運ばれてきた。


「いっただっきまーす!」


 アンジェラは次から次へと料理を口に運び口いっぱいに食べ物を詰めながら


「おいしいにゃー!」


 幸希とミネルバがその様子にさらに笑って


「にゃ! にゃって言ったよこの子! かわいい!」


 無理も無いだろう子供に恵まれなかった俺たちはいつか社宅を出て新居を構えたら猫を飼いたいって話しをした事がある。

 幸希は若い時に両親を亡くしているが幼少の頃から猫を飼っていた事もあって大の猫好きでその新居を構えたら猫を飼う話しも幸希から言い出した事だった。


「よおーし! ここはお姉さん達の奢りだから好きなだけ食べていいからね! あ!店員さーん! 追加注文ありまーす!」


 幸希は店員を呼ぶとさらに色々注文した。


 アンジェラがお腹いっぱいになり会計を済ませて店を出ると、幸希は少し寂しそうな表情になった。ここは男として気持ちを汲まなくてはと思い


「アンジェラ……これからどうするんだい? 泊まる所は?」


「いえ、公園の辺りで野宿でもしようかなと……」


 その上目遣いは明らかに訴えてきているのだが。


「そっか。じゃあ俺たちの部屋に来るかい?」


「いいの?」


 すると幸希はアンジェラの手を取って


「いいに決まってんじゃん! おいで!」


 と引っ張って行き、アンジェラもまた嬉しそうに幸希の腕に纏わり付くように付いて行っている。宿に向かう途中アンジェラが


「何から何まで面目ない! このご恩一生忘れないにゃ!」


 多分幸希は語尾の「にゃ!」が可愛くて仕方が無いのだろう。アンジェラの頭を撫で回していて明らかに猫可愛がり状態になっている。


「幸希様は猫大好きなのです! アンちゃんの心もとても綺麗なのです」


「そっか……幸希のあんなに嬉しそうな顔久しぶりだな」


 そう言うとミネルバが手を差し伸べて来たので手を繋いで宿まで歩いた。


 ――翌朝

 差し込む朝日が眩しく照らし、小鳥の囀りが微かに響く。

 何か重たい感覚と共に目を覚ますと大智の上にミネルバが覆い被さるように寝て、隣を見ると幸希との間にアンジェラがこちらに背中を向けて丸くなって寝ていて幸希は子猫を守るかのようにアンジェラを抱いて寝ていた。

 アンジェラはシャツを着ているが下は肌着のみで背中とおしりの境目の辺りからモフモフな尻尾があった。思わず触ってモフモフしたい所だがグッとこらえて、ミネルバを起こすと


「ふぁー……大智様おはようなのです」


 目を瞑って寝たにも関らずまたこの世界で目ざめた事に少し戸惑いを感じてミネルバに聞いて見ると、目を閉じるだけでは行き来出来ないので行き来する時は行き先の事を考えながら寝ないといけないらしく、不安は解消されたのだが現世と異世界の時差的な事が気になったのでそれも聞いて見ると時差は毎回最適化されて両方の世界に影響が出る事は無く、

 例えば現世で目を瞑って此方で何日何ヶ月たっても現世に戻った時は目を閉じた次の朝……と言う感じに最適化されるようだ。

 それを聞いて安心していると幸希とアンジェラが目を覚ました。


「おはよー」


「良く寝れたかい?」


 まだ眠気の残る顔のアンジェラと幸希はベッドから起き上がると二人同じように伸びをして窓から外を眺めていた。

 町は既に稼動しており商店などは朝の開店準備に追われているみたいだ。


 取り敢えずこれからの事も考えていかないといけないので宿屋の一階の食堂で朝食を食べながら話す事にした。


 食堂に付くと御者のエルフは既に食べている最中で、大智達も同じテーブルに付くと食堂は朝食の時間という事もあって他の地域から来た商人や冒険者達で賑わっていた。

 朝食はパンとサラダでパンはバケットのように固く味は良いのだが顎が疲れる。この世界のパンはこのバケットが主流で他にも食パンの様な物があるが高級なため食べるのは貴族などのお金持ち位だとか。


 パンをムシャムシャ食べながらアンジェラに


「冒険者になりたいって言ってたけどどうやってなるの? 何か試験みたいな物を受けるのかい?」


 アンジェラは口の中のパンを飲み込んで


「まずは冒険者ギルドですね。そこで冒険者登録をして適性検査を受けるだけですよ……でも登録料というものがあってですね……5000ジールなのですが」


 上目遣いだ。

 猫人族の上目遣いは反則だ。あの潤んだ瞳で甘えて来られると世の男性は断ると言う選択肢が無くなってしまう。


「で、ここからが重要なんだけど、アンジェラは冒険者になって何をするの?目標みたいな物はあるの?」


「強くなって我輩の故郷を守りたい」


 アンジェラの故郷はヴァイトリング王国の隣国、ベアトリス王国でハイエルフが国王のハイエルフの国だが獣人族や猫人族、ドワーフ族とその他の種族が混在している地域で、アンジェラの住んでいた村はその国の真ん中辺りに位置しているらしい。そして、オーガのアジトから近いため強奪や襲撃がたまにあって住人が怯えて暮らしているそうな。


「オーガ?」


「うん。腹が減ったりすると集団でオーガが村を襲いに来るんです。

 中でもキングオーガが来た時は3日間隠れて過ごしましたよ!」


 オーガの軍勢は一人残らず殲滅した気がするんだけどな……。違う集団かな?


「マップの位置関係からエクムントも近いみたいだけど、その辺はオーガのアジトっていっぱいあるの?」


「いえ、単体の低級なオーガはいるかもしれませんが

 キングオーガの集団は1つだけで200近く居るんじゃないかな?

 キングの側近でジェネラルが6体いますね」


 ほぼ確定だな。1体のキングに6体のジェネラル……もうアンジェラの村も襲われる事も無いな。


「ああ……。それね、もう襲いに来ないと思うよ……」


「え? どうしてですか?」


「その話しはここではマズイから一旦部屋に戻ろうか」


 大智達は部屋に戻ると大きめの麻袋をポーチから取り出し部屋の机の上に中身をザッと出した。


「これなんだけどね。アンジェラの村を襲ってたオーガの軍勢の魔石だよ」


「!」


 するとそれを見たアンジェラは一番大きな魔石を持ち上げ


「これがキングの魔石? そしてこの6個はジェネラル?」


 その眼差しは鋭く憎しみに満ちた目でジェネラルの魔石を振るえる程握り締めて、涙を流しだした。


「ざまーミロ!! バーカ! バーカ!……うわあああん」


 号泣だった。キングとジェネラルの魔石を握り締めたまま机に何度も叩きつけ手には血が滲んでいた。

 そのまま机に突っ伏すと幸希がそっと後ろからアンジェラを抱きしめて


「怖かったね。辛かったね。」


「うわああああん」


 と泣いた。大智とミネルバも二人に覆い被さるように抱きしめた。


 一頻り泣いた所で我に帰ったアンジェラは


「これだけの数をどうやって倒したんですか?」


 疑問は当然そこに行く。屈強な冒険者や騎士団の様な人ならそこまで疑問にはならないが、見た感じ耳が横長の普通のエルフがこれだけの軍勢を易々と倒せるはず無いと思うのが一般的だ。

 しかし正体を明かしてしまえば話しは変わって来る。やはりこうなったら正体を明かす以外方法は無いわけだが。


「大智……この子は大丈夫だと思う……」


「そうだな。俺もそう思う。アンジェラ今からの事は他言無用にしていてくれるかい?」


 少し怯えた瞳でアンジェラは頷く。

 そして大智達はエルフの変装を解いた。


「これが俺たちの本当の姿だよ」


 驚いていたアンジェラは瞬く間に羨望の目に変わり、大智と幸希とミネルバをじっくりと見て幸希の所に駆け寄った。はたから見たらどこかの国の聖騎士団にでも見えているのだろう。

 特に幸希の鎧は見た事も無い白地に金で大きな両手剣だから普通の反応だ。


「すごい! 聖騎士団の人だった!」


「この事は内緒ね」


 大智達はまたエルフに変装した後アンジェラと話しをする為御者のエルフを先に村へ帰らせエーベルトからの1億ジールの受け取りにエーベルト商会に向かった。


 向かう途中にアンジェラが冒険者になる為の冒険者ギルドがあったので帰りに寄る約束と5000ジールを渡してそこで一旦別れた。

 エーベルト商会はこの辺りでは一際大きな建物で建物の前にエーベルトの執事が待ち構えていた。


「お待ちしておりました。大智様、幸希様、どうぞこちらへ」


 促されて応接室に入りソファに座ると従業員らしき男が飲み物を持ってきた。

 続けて執事も高級そうな袋を持ってきてソファの対面に座った。


「この度はお越しいただきありがとうございます。

 本日エーベルト様は不在でして、執事の私が承っております。

 では、此方をどうぞ」


 テーブルに置かれた袋から取り出したのは直径5センチの分厚い金貨で

 説明によるとそれは100万ジール金貨だそうだ。

 それが2百枚ある。

 要は2億ジールある計算になるのだがこっちが要求したのは1億ジールでその倍額を差し出してきた事に疑問を覚え


「いや……多くないですか?」


「エーベルト様からお預かりしたのは2億ジールです。これは1億ジールでは少ないとエーベルト様が判断されての事です。

 どうかそのままお納め下さい」


 お金は無いよりあるほうが良いし何よりエーベルトのこれまでの事の謝罪の意味なのだろう。大智達はありがたく受け取る事にして全てポーチの中に保管した。


「エーベルトさんは忙しい方なんですね」


 執事は申し訳なさそうに


「申し訳ありません。今大事な仕事に取り掛かる為の視察に行っておりまして……この場に同席しない事は一商人としてあるまじき行為ではありますがどうかご容赦願います」


 商人として商売の話しがあればこのくらいの事はすっぽかして当たり前なのだろう。もう罰もきちんと与えたのでよしとする事にして大智達はエーベルト商会を後にした。


 少し時が遡って

 大智達と別れたアンジェラは早速冒険者ギルドの門を叩いていた。

 冒険者ギルドに入るとかなり広い所で休憩スペースのように椅子とテーブルが多数並べられたスペースと壁に無数に貼られたクエスト掲示板があり、多数の冒険者がクエストを選んでいる。その隣にはPT募集掲示板が並び正面には3つに仕切られたカウンターがあり右から新規登録、中央はクエスト承認、左は換金とある。

 アンジェラは戸惑いながらも右側の新規登録カウンターの人に声を掛けた。


「あのー……すみませーん」


 するとカウンターの奥から受付のメガネを掛けた女性が顔を出した。


「はーい」


「冒険者登録をしたいのですが……」


「はいはーい……って猫人族!!きゃーーモフモフさせてー!」


 どうやらこの受付嬢は猫好きな方らしい。


「ええ……(引くわこの人)ど、どうぞ」


 カウンターから身を乗り出した受付嬢は頭や耳の辺りをしばらくワッシャワッシャして我に返り、改まって咳払いをし


「ようこそヴァーレリー冒険者ギルドへ! まずはこの用紙に必要事項を書いて下さいね」


 アンジェラは用紙に必要事項を書き込んでいたのだが刺さる様な視線を感じて受付嬢をチラッと見ると何とも高揚した表情に手は今にも襲わんばかりにグーパーしている。


「ええ……(ちょ、絶対ヤバイ人やん。引くわ)ここ、邪魔になるかもなので向こうで書いてきますね!」


「ああん!逃げられたー!」


 どうするこの危機的状況!このままでは催眠の魔法でも掛けられて連れ去られるんじゃないだろうか?

 書き終わったアンジェラは恐る恐るカウンターに用紙を提出した。


「次は生体登録と適性ランク検査ですのでこの水晶の上に手を置いてくださいねーデヘヘ……ジュルッ」


「はい……(うわキモっ!こいつ涎たらした)」


 アンジェラが水晶に手を置くと水晶が適正ランク等を読み取る仕組みで読み取るのに10秒くらいかかる。

 突然アンジェラの手の上に受付嬢が手を重ねてきて


「もうちょっと押さえ付けてくださいねー……ハアハア」


 突然の事でビックリして受付嬢の顔を見るとさらに高揚して興奮した表情になっていた。

「ええ……(発情か?発情なのか?それ以上やったらぶん殴る!)」


 10秒経って水晶のアラームが鳴ったので勢い良く手を引っ込めると受付嬢はそのまま水晶に手を置いたまま果てたあとの余韻のような表情になっていた。


「カ……カード……発行しま……す……」


「あ……(キモッ!キモッ!)はい」


 アンジェラはその場からそそくさと離れて休憩スペースで憂鬱になっていた。

 今度はカード渡す時に何かある!絶対に!


「アンジェラさーん!」


 きた!


 恐る恐る様子を伺いながらカウンターに行くとさっきとは打って変わって

 真面目な表情になっていた。


「あ……はい」


「これが冒険者カードです。再発行は5000ジールかかりますので無くさないように。今回は新規の登録ですので5000ジールです」


「はい……(なんだ?どうした?さては賢者タイムか?)これ」


 アンジェラは大地に借りた5000ジールを渡すと一目散に出口に走った。


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