第8話―ヴァーレリーでの出来事

 大智達が村に向かっていると村の戦士たちが此方に向かってくるのが見えた。

 戦士達は此方に気づいて駆け寄ってきて


「自分たちも戦います!村を!家族を!守らせて下さい!」


 戦士達は覚悟を決めて来ていたらしくそれぞれが武器を手に取り真剣な眼差しで訴えてきた。


 大智達はその真剣な眼差しを見て今までの村人の大変さを痛感した。

 幸希が村人に一匹残らず殲滅した事やその灰も残さなかった事、残った魔石は村に寄贈する事を告げると、戦士たちは緊張の糸が切れたようにその場にへたり込み泣きながら「ありがとうございます」を連呼していた。


 村に帰るなり村長が駆け寄ってきて事の端末を話すとリゼットと手を取り合い涙を流しながら喜んでいた。

 他の村人たちもお祭り騒ぎのようになりその流れで野外大宴会のようになり、

 幸希は色んな戦士たちの質問攻めに合っていてそれを少し離れた所で見守っていると村長が大智の所に来て話しだした。


「我々の村は長年オーガの被害に悩まされて来ました。食料や物資の強奪、隣町への野菜の調達中に連れ去られた者もおります。

 でも、この度の大智さん達の活躍によりやっとその悪夢から開放されました。

 今は大したお礼は出来ませんがここを拠点として活用されるのであれば

 村として精一杯のおもてなしをさせていただきます。ありがとうございました!」


 リゼットも大智の所に来て


「大智様先程の魔石は私共が頂いてもどうもできませんので、どうか大智様達の旅の足しにしてください」


 村長の話ではこの魔石は価値がそれなりにあるそうだが冒険者でもないエルフ族が魔石を町に持って行った所で換金など出来ないらしくこの村には魔石を使う様な魔道具も無いそうだ。

 大智は自分が町に行って換金できるのであれば換金してエクムントの村興しに投資する考えで、受け取った。

 幸希が質問攻めからやっと解放されてミネルバと一緒に大智の所に来ると、これからの事に付いて話しだした。


「ここの戦士達と話してて少し気になる事があるんだけど」


「気になる事?」


「うん……ここで取れた野菜や果物の事だけどね。野菜とかの流通で疑問に思うんだけど

 ここで野菜や果物を生産して出荷先が隣町のヴァーレリーって所なんだって」


 ヴァーレリーとはここエクムント村から徒歩で半日くらいの人口およそ19万人ほどの中都市である。そこでは主にそれぞれの産地から仕入れた食料、鉱物、木材、雑貨などを加工して王都や他の地域に製品として出荷している商業都市であり、ヴァーレリー自体に素材の生産能力はほとんど無い。ヴァーレリーはヴァイトリング王国の領土で領主の名はベルノルト・ヴァーレリー辺境伯である。


「そのヴァーレリーがどうしたの?」


「その出荷した時の対価の話しなんだけどね。普通は生産者から仕入れる時は出荷物に見合った対価を支払うよね? でもここの村は対価が物々交換のみらしいんだよ」


 この世界では物々交換で対価が支払われるのは良くある事でその地域の財政が悪化した時や国外との取引で外貨が不足している場合物々交換をし、後に差額が生じた場合はその都度差額を支払う仕組みでバーターの様だが、ヴァーレリー側は色々な理由を付けてその差額を支払った事が無いようだ。

 大智は少し考えた後


「それはちょっとおかしいな。そもそも農産物や畜産物は出荷量に応じて原価が上下するはずだから、差額は必ず発生するはずだぞ?それで差額が支払われないとすると出荷時の価格が非常に安いかわざと支払われていないかのどっちかだろうね」


「私が思うに多分だけどその両方な気がする。荷馬車にいっぱい積んだ野菜類が服5着とワイン1樽だとは到底思えないの」


「なんだそれ……足元見られてるのか? 村長に聞いてみるか」


 大智達は村長に取引の際の物々交換や差額の支払いについて聞いて見ると、

 以前の領主の時はそれなりの対価で取引を行なっていた様なのだが5年前に領主が代わってすぐ位に商人たちが村にやってきて大量に仕入れた後一方的に取引を停止。

 2ヶ月位してお金が底を尽きた村側が折れる形で取引を再開したのだがその時の取り決めで物々交換を強いられたらしい。

 収穫した農産物や畜産物が無駄になるくらいならと村側も1年の期限付きで承諾したのだけど、その期限も色々な理由を付けて先延ばしされているようだ。

 野菜や果物、その他の畜産物はエルフ族の大樹の加護により尽きる事は無く育ちも早い。ここで取れた物は品質と味が良く王都でも人気があるらしいが仲介を通さないと王都や他の地域に直接販売は出来ない仕組みになっているようだ。

 大智はこの問題を解消する事によりエクムントの村興しに繋がる気がするので調査することにした。


「どう聞いても納得がいかないので、直接ヴァーレリーに行って調べて見ようと思う。村長!ここからヴァーレリーまで誰か道案内をしてくれると助かるんだけど」


「今から出荷物をヴァーレリーに届けるので、その荷馬車に乗って行ってはいかがでしょうか? 徒歩よりは早く到着出来ると思います」


 荷馬車での移動が決まったので早速向かう事にした大智達はどうみても普通の冒険者や村人には見えないので、『隠蔽』のスキルを使って3人の外見をエルフ族に見えるように隠蔽した。

 ミネルバは大智達と隣町に行ける事を凄く喜んでいて、荷馬車の中でも終始落着きがなく幸希の隣でずっと、色々な食べ物の話しをしている。

 大智達は結婚して15年になるが大智の方の問題により子供を授かる事はなかったので、この光景は新鮮であり結婚当初に思い描いた家族の情景の様で幸希もまた、授かれなかった子供が居る 《家族》 の団欒のようでとてもうれしそうにしている。


 山を超えた辺りでヴァーレリーの町が見えてきたので荷馬車から顔を覗かせて見ると、広大な敷地にそれなりの高さの石作りの町並みがあり、ここからでも活気溢れる町というのがわかる。町の中心部分には大きな噴水公園がありその噴水に何か石像が立っていて、その周りを囲む様な形の町並みだ。町の玄関口には城壁の様な立派な門があり門番が荷馬車の検問を行なっているようだ。


 御者のエルフの提案で大智達は荷卸しの手伝いでやってきた親子という設定になった。


 大智達の荷馬車の検問になり門番にその事を伝えると町に入って直ぐの商業ギルドで通行証を発行してもらうように言われた。通行証の発行には大人も子供も一人100ジールでジールと言うのはこの世界の通貨だ。

 大体100ジールが現世の日本円で100円位なので、高くも安くも無い妥当なラインに思えた。

 早速3人とも商業ギルドで通行証を発行して貰い、荷馬車の荷下ろし場に向かったのだが荷下ろし場では各地から荷馬車が来ており荷下ろしと買取業者で賑わっていた。


 エルフ族の荷馬車が到着すると、一人の恰幅の言い50台くらいの貴族風の男が従業員らしき男たちを引き連れてこちらに歩いてきた。この男はヴァーレリー最大の商会 エーベルト商会のマルクス・エーベルト会長でエクムントの荷馬車の荷物を検品した後、従業員に荷下ろし場所の指示をした。


 その後エルフの御者に買取価格の掲示をして来たのだが、それが何とも酷い。

 他の荷馬車は荷をいっぱいに積んできて大体30万から40万ジールなのだが、エクムントの荷馬車は現物で農具のスコップ、桑、収穫用の鎌がそれぞれ5丁と樽に入ったワインが1樽だった。

 農具はこの町でそれぞれ2000ジール位で販売されており現金換算すると3万ジール程度、ワインは安価なワインらしく1樽2万ジール位だそうだ。

 大智は全く理解出来ない買取価格に苛立ちを覚えたのだが、ミネルバとコソコソ話しをしていた幸希が


「この取引は商品と価格が釣り合っていないので不成立になります!」


 と声を上げた。

 するとエーベルト会長は鼻でフンッと笑いながら


「契約は守ってもらわんとな。お宅らの荷物はウチが物々交換で買い取る契約なんだが、気に入らないんだったら持って帰ってもいいぞ!」


 と捲くし立てて来た。

 御者のエルフは慌てていたが大智が横から


「おい!本当に持って帰っていいんだな?大体から契約ってそっちが自分たちの都合で先延ばしにしてるだけで期限なんてとっくに過ぎてる筈なんだがな!」


 するとエーベルト会長は顔を真っ赤にして怒っているようだったが、騒ぎを聞きつけた憲兵隊が近寄ってくると


「おい! 憲兵隊! このエルフどもを逮捕しろ!我がエーベルト商会に集りを掛けてきやがった!」


 と大声で怒鳴りつけた。

 大智達は憲兵隊に囲まれて事情を聴くと言う名目で憲兵隊の本部に連行された。

 憲兵隊の本部に着くと、事情聴取などは無くそのまま牢屋に4人とも入れられ

 どうやら憲兵隊もエーベルト商会の肩を持っているようだ。

 4人はこれからの行動について話す。


「こんな所に私達を閉じ込めるとは罰当たりな事なのです!」


「そうね、でも正体が分かってない人たちだから仕方がないのよ」


 幸希とミネルバはそんな会話をしていたが大智は自分が憤りを感じているので、過激な発言は控えようと黙っていたがミネルバの一言がそれを覆した。


「もう正体を明かすのです! あの者たちが罰当たりな事を分からせるなのです」


「確かにそれも一つの手ね。でもこの先何処に行っても騒がれる原因になるし色々とめんどくさくならないかな? どう思う大智?」


 自分たちの正体を明かせば事は簡単に済むかもしれないけどそれはエクムントにも危機を齎す事に繋がりかねない様な気もする。ここはもう少し慎重にならないと他に迷惑の掛かるやり方ではダメだ。


「顔だけ隠蔽で変装するのです。そうすれば問題ないのです」


 御者のエルフの提案で、ここの領主のベルノルト・ヴァーレリー辺境伯に直談判してみる事と辺境伯は熱狂的なアポロン教の信者である事からアポロン様に扮して行くと効果的なのではということだった。

 確かに自身が熱狂的に崇拝する神が直談判してきたら断る事は絶対に出来ないだろうし誰も傷つけなくて済むだろう。早速大智はミネルバに特徴を聞いてアポロン様に変身した。

 ミネルバの提案で、スキル

     『通過』と『広範囲詳細図』と『転移魔法』

 を作り出した。『通過』はどんな所でも難なく通過できるスキルで例え結界であっても通過でき、『広範囲詳細図』は始めて来た場所であっても目的地がマップ上に映し出される便利なスキルだ。『転移魔法』は一度訪れた事のある場所に瞬時に移動できる。

 準備も整ったので早速スキルを発動して牢屋を抜け出した。

 牢屋にはミネルバのヒトガタと呼ばれる魔道具で大智を反映して設置しておいたので見回りの憲兵隊が来ても騒がれる事は無い。


 辺境伯の邸宅までは隠蔽スキルをさらに掛けて他人から見えなくしているので騒がれる事は無く中間地点の噴水公園に指しかかった時に石像をみてみるとやはりアポロン様の石像だった。

 この町ではアポロン教が大部分を占めておりアポロン様が崇拝されているのは一目瞭然であった。

 大智の考えでは、邸宅に進入後辺境伯の部屋へ行った所で部屋に結界を貼りいきなり姿を現せて脅かす計画だが相手を先に少し観察してからにする事にした。


 辺境伯の邸宅はこれでもかと言うほど豪邸で流石貴族のお屋敷だなと言う印象。

 邸宅の前には大きな噴水がありそこにも大きなアポロン様の石像があって熱狂的な信者であることが伺える。

 閉ざされた門をすり抜けて入っていくと庭でメイド達が草毟りをしていたり、洗濯物を干していたりと忙しそうに働いていた。

 玄関をすり抜けると直ぐに螺旋階段があり壁や柱は白く床は大理石で出来ており

 玄関ホールでも小規模なパーティーが出来るくらいの広さがある。

『捜索』スキルを使って探すと二階の少し広い部屋に居る事が分かったので、螺旋階段を上って部屋の前まで来ると話し声が聞こえてきた。

 ドアをすり抜けて部屋に入ると60台くらいの体格の良い貴族風な男性が部屋の窓を背に置いてある高級そうなプレジデントデスクの向こうに踏ん反り返って座っていて、デスクの手前に置かれた高級そうな応接ソファには例のエーベルト会長が座っていた。


「エーベルト君。荷下ろし場での騒ぎは収まったのかね?」


「はい!お騒がせしたみたいで。無事に収まりました」


 辺境伯はこの男と話すのが少し嫌そうな感じであったが、エーベルト会長は辺境伯に胡麻をすって居る様な物腰なので、これで上下関係は明らかになったがもう少し会話を聞いて見る事にした。


「それとエーベルト君。エルフの村の果物と野菜は国王への献上品の中でも特に喜ばれる品だから入手出来ないとなると大変な事になるよ?」


「はい!わかっております。もしもの時は村を分捕ってでも入手してきますので安心してください」


「ふんっ……期待しているよ。私は領地でもないあの村がどうなろうと関係ないのだが、果物と野菜は重要な品だから入手ができれば何の問題も無い」


 この会話は大智にとって怒りの引き金になった。

 そんなに重要な品物ならもうちょっとマシな取引の仕方があるだろう?

 エーベルト会長はただ同然で仕入れた物を己の地位のために利用しているただのクズだという事が露呈した所で大智が部屋に結界を貼り口を出す。


「汝ら我の信者でありながらこの様な事をしておったのか!」


 するとビクッとした辺境伯とエーベルト会長は


「誰だ! 何処に隠れている! 出て来い!」


 大智は隠蔽を解除し、アポロン様の姿を現すと辺境伯は目を見開いて立ち上がり

 エーベルト会長は驚いたのか後ろにひっくり返ってしまった。

 エーベルトの顔を見ると荷下ろし場での怒りが再燃して


「汝は跪きその場から動く事を許さん!」


 するとサッと跪いたエーベルトはその場で震えていたが大智は続けて


「エーベルトよ。汝は我が加護を与えた村と村民を滅ぼすと申したのか?」


「いえ! そうではありません! 村を滅ぼそうなどとは!」


 すると見かねた辺境伯が会話に割って入ってきた。


「ああ! アポロン様! どうかお許し……」


『黙れ!』


 辺境伯はその場で気をつけのポーズで固まってしまった。


「辺境伯! 汝は少し黙っておれ!」


 すると辺境伯はコクコクと頷いた


「さて汝。滅ぼすはずのない者が何故我の使いを拘束しておる?おかしいではないか!」


「それは……手違いがございまして……直ぐに開放しますのでお許し下さい!」


 恐怖から来る震えがピークに指しかかった様で、そのバイブレーション効果で移動が出来そうなほどになった。


「解放後、手厚くもてなした後、あの者たちの言葉を全て受け入れてこれまでの事を清算するのだ! 我の言葉に反旗を翻すなら神を冒涜する者として厳罰に処す!」


「わ、わかりましたー! 全てアポロン様のお言葉通りにします!」


 エーベルト会長は深く頭を下げた。


「辺境伯! 動いて良い」


 すると動けるようになった辺境伯はエーベルト会長の隣で跪いた。


「ああ! アポロン様! エーベルトの責務、私が責任を持って実行させますのでどうかお怒りをお沈め下さいませ!」


 そう言うと、辺境伯も深々と頭を下げたので


「良かろう。 二人にはこれまでの罰として一日3回の礼拝を義務として科す。次に我が姿を現し良いと言うまで毎日だ!」


 二人は頭を下げたまま「分かりました!」返事をしたので、結界と拘束を解除して『転移魔法』で牢屋に戻った。

 牢屋に戻ると幸希がミネルバに手遊びを教えていて、その隣で御者のエルフは寝ているようだった。


「ただいま!」


 幸希とミネルバはお待ちかねだったようで


「どうだった?」


「うん十分に分かってもらえたと思うしそれなりの罰も与えてきた」


 大智は辺境伯邸での出来事を事細かに説明して自分も途中で笑いそうになったがグッと我慢した事などを話し、少し罰を与えてきた事まで話すと


「どんな罰を与えたなのです?」


「うん。罰として1日3回の礼拝を良い渡してきた!」


 幸希とミネルバは顔を見合わせた後大笑いして


「大智様ナイスなのです!」


 と言って起きて話しを聞いていた御者のエルフと3人で大笑いした。


 しばらくすると憲兵隊数人と隊長、先程のエーベルト会長が慌てて牢屋の前に来て大智達は直ぐに開放された。

 憲兵隊本部を出ると豪華な馬車が止まっておりそれに促されるように乗せられた。

 車内でエーベルト会長がこれまでの非礼とこれからは全て現金で買い取る事や今までの差額を全て支払う旨を約束してくれた。


 馬車が止まるとさっきまで居た辺境伯邸で門前には総勢20人ほどのメイドがズラリと並び辺境伯も待ち構えていた。

 馬車の扉が開くと辺境伯が駆け寄ってきて


「ようこそいらっしゃいました! ささっ中でお寛ぎ下さい!」


 大智達はメイドに案内されると高級な調度品がズラッと並べるように飾られた応接室の様な所に通された。

 壁には巨大な絵画、応接ソファのセットは今まで見た事も無い様な猫足の高級品で正にロココ調の様な作りである。

 メイド達が紅茶の様な香りのする飲み物をとクッキーの様なお菓子を持ってきたので、一応『鑑定』スキルを急遽作成して鑑定しておいたが毒物は入って居ないようだ。


 4人で紅茶とクッキーを頂いていると、辺境伯とエーベルト会長が来てエーベルト会長が


「この度は色々と手違いがあった様で誠に申し訳ありません! これからはエクムント村と取引をする際は全て現金で取引をしますので今までの事は水に流していただけないでしょうか? あと、何かお望みがあれば言っていただけると助かります」


 と頭を下げて来た。

 ここは遠慮する所ではないなと思った大智は


「ではまず、未払いの差額分についてですが。5年も経っていて計算が困難なので今回の迷惑料込みで1億ジールを。これからの買取の際は必ず市場価格での取引を。それからエクムントの村を復興する際の完全なるバックアップをお願いします」


 するとエーベルト会長は


「分かりました!差額分の1億ジールは明日の朝直ぐに現金を用意します。買い取り価格も市場価格で買い取らせていただきます。

 復興についてはこの町の職人等を無償でエクムントに出向させる形で支援しようと思います!」


 大体の願いは通った様なので後は念押しと思っていたら、幸希が


「あ! それとこの町に居る犯罪奴隷以外の奴隷の即刻無償解放を!」


 すると辺境伯が少し難しい顔をして


「それは出来かねます。あまりにもこの件から逸脱しすぎている!」


「そうですか……分かりました。それについては自分たちの村でアポロン様にお祈りをする事にします!」


 すると辺境伯はドキッとした様な素振りを見せた後、額に大量の汗を流しながら


「いえいえ……そうではなくてですね……えっと……じ……時間が掛かるという事をお伝えしようかと!」

 その言葉に対して幸希も負けじと

「いえいえ……無理な話しだとこちらも思っていたのですからお気を使わずに。

 しかし村人は心配している方も居ますのでせめて 1日3回 のお祈りはしておこうと思います」


 それを聞いて顔が真っ青になった辺境伯が今にも死んでしまいそうな声で


「いえ……それは必ずやります……やらせてください!」


 どうやら大筋で話しは纏まったようだ。

 外を見ると夜も更けてきていたので今日はこの町で一泊して明日の朝村に帰る事にした。


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